理論と実践の相乗効果で
最大最速の成長を実現する
理論の理解と実践の両立で、効率的な技能習得を目指す
今回の実技指導では金型製作の基礎・基本から、論理的に指導することが求められていたと聞きましたが、実際にどのようなことを意識していたのでしょうか。また、受講者の方は指導を受けて感じたことを教えてください。
鑓水 私自身、就職して間もない頃、先輩からは理論をベースとして教えてもらえなかったことを記憶しています。「見よう見まね」で覚えろ、という指導方法では技能習得までに時間がかかってしまうため、まず、理論を理解して自身の頭で考えながら作業をする必要があることを、働き始めた当時から感じていました。しかしもちろん、金型製作の技能を習得するためには手本を見ることと、手本を真似て自ら試してみることも欠かせません。そのため今回は「理論を覚えてもらうこと」と、「身体で覚えてもらうこと」の両立を第一と考え指導にあたりました。
井上 私は金型課という部署で設計を担当しており、先輩がやっていることを真似て設計を行っていました。しかし実際に金型の加工がどのように行われるのかということを深く理解していたわけではありません。そのため鑓水マイスターの講義を通して求められている金型を作るためにはどのような加工を行うべきかを理論立てて学べたことは、とても有意義だったと感じています。
金型製作の基礎となる手作業での技能を理論的に指導
金型加工の技能について、鑓水マイスターが企業で働いていた頃と現在では、使用する機器類をはじめ、多くの変化があったのではないかと思います。そのような中で具体的にどのような指導を行ったのでしょうか。また、受講者の方は指導の中で特に印象に残っていることを教えてください。
鑓水 私が驚いたことは、今では多くの企業が最新の機器類を多く採用していることです。中でも金型加工機械は、自動管理システムにより最適化が可能となっています。従来の加工機械では機械の状態の最適化は、手作業で行う必要がありました。社員の方々がどのような機械を前にしても、安定した品質で金型製作ができること、それが「基礎・基本の指導」であると私は考え、あえて社員の方々が普段は使わないであろう技能を通じて金型製作の指導を理論的に行いました。
井上 鑓水マイスターには「加工は測定だ」と教えていただいたことが特に印象に残っています。これまで、素材となる鋼材や金型加工で使用する機械のコンディションに気を遣うということはあまりありませんでした。しかし鋼材を使用するサイズに削り出すことや、普段は使っていない機械を加工のできる状態に設定することを学び、「加工」の難しさを改めて実感できました。特に難しかったのは、フライス盤(切削工具を回転させ、平面・溝・歯車などの加工を行う工作機械)という加工機を使って2つの部品がピッタリ重なるように作るということでした。普段私が担当している設計では経験できない「1ミクロン単位で実際の寸法を測る」ことの緊張感と共に、今後の設計にも活きる学びができたと感じています。
金型加工を通じて製作過程全体を俯瞰する視点が身につく
今回の実技指導で、金型製作の理論を指導したマイスター、また学んだ社員の方、それぞれ感想を教えてください。
鑓水 今回は十分な時間がとれず、そのため知識と技能の定着がはかれたか、というところには不安が残っています。しかしこれが社員の方々の金型加工に興味を持つきっかけとなり、興味が学びへ、学びが知識へ、そして知識が深まりさらなる興味が湧くという循環を生み出せれば嬉しく思います。金型加工は多くの機械を使う、大変な作業です。しかし大変である一方で、その苦労を通じて完成した「金型が社会を支える」という大きな喜びに繋がることを、是非実感していただきたいと思っています。
井上 金型の設計の際にどのような形状にすれば、加工をする側にとってやりやすいのか、またどのような指示を出すことで自分の思い描く加工が実現できるのかを、具体的にイメージできるようになりました。加工の理論を学べたことは、今回の実技指導を経て大きく変化した点であると実感しています。加工という実際の作業を知ることで、全体の工程を先読みした設計ができるようになり、現場においても加工を行う方々から「指示が分かりやすくなった」と評価してもらえるようになりました。今後もさらに、後工程のことや、製品のことまでを意識した設計を追求していきたいと思います。
株式会社サン精密化工研究所
金型課 設計係
井上
祐輔
さん