金型製作

指導先:株式会社サン精密化工研究所(埼玉県)

ものづくりマイスター:鑓水昌寛さん

株式会社サン精密化工研究所

精密金型製作と精密成形をワンストップで対応することができる専門メーカーです。精密部品に特化しており、1ミクロン単位の細かいレベルで部品を製造しています。精密部品には高い寸法精度を必要としますが、製造した部品は取引先企業から高い評価を得ています。

実技指導を依頼した背景

自動化の時代でも引き継ぐべき人の技

ものづくりを行う中で、人の手を介して行う仕事は避けて通ることができません。現在ファクトリー・オートメーション(FA)というものが日本全国で進められていますが、これは工場内での一連の作業工程を情報システムやセンサーなどのロボットを使って自動化するものです。機械による自動化が進む一方で、人の手で行わなければならない仕事もあります。しかし弊社では、金型製作といった人の手でしか行うことができない仕事の技能継承が進んでいきませんでした。技能の継承に問題を抱えているという現状を見つめたときに、金型製作の基礎や基本を学びなおすことが必須だと感じたため、ものづくりマイスターの実技指導を依頼しました。

実技指導を受けたことによる効果

「論理的理解」を促す指導によって技能習得が実現された

鑓水マイスターには初心者に教えるつもりで金型製作の基礎と基本を指導していただけるように依頼しました。これまで技能の継承がうまくいかなかった理由の1つとして、熟練者が若手社員に対しての指導を行う際に、明確に指示できなかったことがあると感じていたためです。このことから、若手社員の多くは基礎と基本に不安を抱えている状態でした。指導は1日3~4時間ほど、座学の中でも鑓水マイスターによる技能の実演を交えながら教えていただきました。座学でまずは理屈を理解し、その後実習を行うといった流れで実技指導を行ったことで、受講者たちは論理的に考えて作業にあたることができるようになったと話しています。受講した社員は学んだことを業務に活かし、高いモチベーションで働けるようになっています。これもマイスターのご指導により、基礎と基本を理解し業務全体の理解が促されたことで、自身の担当する業務の重要性を実感できたからこそと感じています。

株式会社サン精密化工研究所
金型部 部長

大堀 おおほり 利信 としのぶ さん

理論と実践の相乗効果で
最大最速の成長を実現する

理論の理解と実践の両立で、効率的な技能習得を目指す

今回の実技指導では金型製作の基礎・基本から、論理的に指導することが求められていたと聞きましたが、実際にどのようなことを意識していたのでしょうか。また、受講者の方は指導を受けて感じたことを教えてください。

鑓水 私自身、就職して間もない頃、先輩からは理論をベースとして教えてもらえなかったことを記憶しています。「見よう見まね」で覚えろ、という指導方法では技能習得までに時間がかかってしまうため、まず、理論を理解して自身の頭で考えながら作業をする必要があることを、働き始めた当時から感じていました。しかしもちろん、金型製作の技能を習得するためには手本を見ることと、手本を真似て自ら試してみることも欠かせません。そのため今回は「理論を覚えてもらうこと」と、「身体で覚えてもらうこと」の両立を第一と考え指導にあたりました。

井上 私は金型課という部署で設計を担当しており、先輩がやっていることを真似て設計を行っていました。しかし実際に金型の加工がどのように行われるのかということを深く理解していたわけではありません。そのため鑓水マイスターの講義を通して求められている金型を作るためにはどのような加工を行うべきかを理論立てて学べたことは、とても有意義だったと感じています。

金型製作の基礎となる手作業での技能を理論的に指導

金型加工の技能について、鑓水マイスターが企業で働いていた頃と現在では、使用する機器類をはじめ、多くの変化があったのではないかと思います。そのような中で具体的にどのような指導を行ったのでしょうか。また、受講者の方は指導の中で特に印象に残っていることを教えてください。

鑓水 私が驚いたことは、今では多くの企業が最新の機器類を多く採用していることです。中でも金型加工機械は、自動管理システムにより最適化が可能となっています。従来の加工機械では機械の状態の最適化は、手作業で行う必要がありました。社員の方々がどのような機械を前にしても、安定した品質で金型製作ができること、それが「基礎・基本の指導」であると私は考え、あえて社員の方々が普段は使わないであろう技能を通じて金型製作の指導を理論的に行いました。

井上 鑓水マイスターには「加工は測定だ」と教えていただいたことが特に印象に残っています。これまで、素材となる鋼材や金型加工で使用する機械のコンディションに気を遣うということはあまりありませんでした。しかし鋼材を使用するサイズに削り出すことや、普段は使っていない機械を加工のできる状態に設定することを学び、「加工」の難しさを改めて実感できました。特に難しかったのは、フライス盤(切削工具を回転させ、平面・溝・歯車などの加工を行う工作機械)という加工機を使って2つの部品がピッタリ重なるように作るということでした。普段私が担当している設計では経験できない「1ミクロン単位で実際の寸法を測る」ことの緊張感と共に、今後の設計にも活きる学びができたと感じています。

金型加工を通じて製作過程全体を俯瞰する視点が身につく

今回の実技指導で、金型製作の理論を指導したマイスター、また学んだ社員の方、それぞれ感想を教えてください。

鑓水 今回は十分な時間がとれず、そのため知識と技能の定着がはかれたか、というところには不安が残っています。しかしこれが社員の方々の金型加工に興味を持つきっかけとなり、興味が学びへ、学びが知識へ、そして知識が深まりさらなる興味が湧くという循環を生み出せれば嬉しく思います。金型加工は多くの機械を使う、大変な作業です。しかし大変である一方で、その苦労を通じて完成した「金型が社会を支える」という大きな喜びに繋がることを、是非実感していただきたいと思っています。

井上 金型の設計の際にどのような形状にすれば、加工をする側にとってやりやすいのか、またどのような指示を出すことで自分の思い描く加工が実現できるのかを、具体的にイメージできるようになりました。加工の理論を学べたことは、今回の実技指導を経て大きく変化した点であると実感しています。加工という実際の作業を知ることで、全体の工程を先読みした設計ができるようになり、現場においても加工を行う方々から「指示が分かりやすくなった」と評価してもらえるようになりました。今後もさらに、後工程のことや、製品のことまでを意識した設計を追求していきたいと思います。

株式会社サン精密化工研究所
金型課 設計係

井上 いのうえ 祐輔 ゆうすけ さん

ものづくりマイスター
鑓水 やりみず 昌寛 まさあき さん

平成28年度 厚生労働省「ものづくりマイスター(金型製作職種)(仕上げ職種)(機械加工職種)」認定

技能指導の実績
企業向けの機械加工、金型製作の実技指導

職業訓練校で技能習得に取り組んだことをきっかけに、当時指導者の少なかった金型製作の専門学校で非常勤講師として7年間勤務。会社に勤めながらも高い向上心で、講師としての指導と自身の新たな技能習得を両立していました。
プログラム内容
実施課題 機械加工、金型製作など
目  的 金型製作・機械加工の基礎習得
受講対象 社員 23名
  • 第1回
  • ドリル・加工物の位置決め、
    穴加工の精度についての基礎事項
    フライス盤の切削条件の講義と実技
  • 第2回
  • ケガキ線・やすりかけ、スプールの加工、みがき、
    リーマ加工など金属製品を加工する基礎テクニック及び
    旋盤の保守・加工
  • 第3回
  • 旋盤のバイトの研ぎ方、加工条件、面粗さのテスト加工と
    平面研削盤による加工、技能検定機械加工職種
    (フライス盤作業)の課題を参考とした指導
  • 第4回
  • フライス盤、旋盤、ボール盤の指導と
    技能検定機械加工職種(フライス盤作業)の
    実技課題を参考とした指導
株式会社サン精密化工研究所

本社工場 〒346-0034 埼玉県久喜市所久喜707-4

設 立 年 昭和38(1963)年
代表取締役 村上 守
事業内容 精密プラスチック機械部品の成形加工及び販売、
精密プラスチック機械部品成形用金型の設計製作および販売など
従業員数 99名