フランクなコミュニケーションで
信頼関係を育むことが技能習得の近道
次世代の技能者に現場経験に基づいた技能を継承する、マイスターオリジナルのプログラム
治工具仕上げの実技指導を実施するにあたって、どのような想いや目的をもって挑まれましたか。また、受講された社員の皆さんもどのような想いで受講されましたか。
常泉 私はこれまで長年培ってきた仕上げの技能を次代に継承するためにも、「ものづくりマイスター等事業」を通じて技能者の育成に取り組んできました。これまでに技能検定における検定委員の経験や実技審査の経験もあり、若手技能者がどのような点で苦労しているかということを知っています。それらの経験を活かし、若手技能者に現場経験をはじめとする経験に基づく技能を伝えるためのプログラムを組んでいます。
権平 私は自分の技能のレベルを明確な指標で測ることができていませんでした。そのため後輩に指導する立場にもなった今、自分に自信をつけるという意味でも治工具仕上げの技能を、熟練者の指導の下で学びたいと思いました。また、昨年実施されたものづくりマイスターのプログラムに参加していた後輩が、生き生きと課題に取り組んでいる姿を見て刺激を受けたことも、今回の受講に大きく影響しています。
土田 今回の受講のきっかけは昨年に受講していた先輩の姿を見て感動したこと、また、技能検定2級にも挑戦したいと思ったことです。普段の業務ではあまり意識していなかったヤスリがけですが、先輩たちの精度の高い寸法を導き出す技能を見て、心からカッコイイと思いました。今回のプログラムでは、自分もそのような高い精度の技能習得を目標にしていました。
真棟 前回行われたプログラムにも参加しており、今回の実技指導でも、自分自身のスキルをさらに高められると思い参加しました。前回も常泉マイスターだったため不安はありませんでしたが、実は初めてお会いした時は怖い方だという印象をもっていました。しかし、会話をするたびに親しみやすい方だということが分かり、今回も積極的にコミュニケーションを図るように心がけました。
手掛ける製品自体は違っても、「手仕上げ」という技能に違いはない
常泉マイスターは長年電機メーカーで仕上げ加工の技能を磨いてこられたという背景がありますが、今回は医療機器メーカーへの実技指導ということで、何か工夫されたことはありますか。また指導を通して、受講者の方はどのようなことを感じましたか。
常泉 手仕上げという分野で考えれば、電機メーカーも医療機器メーカーも、ほとんど違いはないと考えています。そのため、技能検定の課題を参考に、ヤスリのサイドカットや選定のポイント、ヤスリがけのフォームに至るまで実践ベースの指導を行いました。医療機器は小さいヤスリの「組みヤスリ」が主流であり、ヤスリがけのフォームなどはあまり仕事では意識しないことだと思いますが、ヤスリを大きいサイズからだんだんサイズを下げていくようにして理解が得られやすいようにしました。手仕上げによる加工では、機械加工とは異なり技能者の能力に100%依存するといっても過言ではなく、メンタル面が非常に大きく影響します。そこで受講者が実力を最大限発揮できるように、手仕上げの魅力を伝えられるように配慮しました。
権平 講義中は、ホワイトボードに1日の流れを書きながら説明をしていただけたことに加えて、常泉マイスターの実技を見ながら練習できたためとても分かりやすかったです。実際の仕事で弓鋸(ゆみのこ)などの工具を使用する際に、ヤスリのかけ方やフォームなどが、指導を受けたことによって身体に染み付いていることを実感でき、学んできた成果が表れていると感じます。
土田 私はこれまでヤスリがけなどに対する細かい知識や詳細部分に関する知識がなかったため、それらを深く知る機会になりました。常泉マイスターの方から声をかけていただき、分からないことをすぐに聞けるような雰囲気を作ってくださるなど、学ぶ側との関係作りにも配慮してくださったことで楽しく取り組めました。
真棟 常泉マイスターから、「無駄な動きをするな」と言われたことが印象に残っています。これは、ヤスリがけのフォームや一連の動作を指していて、すべてが効率よく連動してないと面の平坦度が損なわれるだけではなく、身体への負担が増してしまいます。しっかりと指摘してくださるため、すぐに改善することができました。仕事では小さなヤスリを使いますが、今回ご指導いただいて感覚が研ぎ澄まされたと思います。
機械加工では難しい、1ミクロンを削るメイドインジャパン
常泉マイスターの指導で手仕上げの難しさと醍醐味を感じられたことと思いますが、今後の展望や目標をそれぞれの視点でお聞かせください。
常泉 技能検定は国が定めた検定ですから、企業が認める資格の中で最高位であり、どこにいっても通用するライセンスです。そのため国から認められるレベルで錬磨された技能から生まれたメイドインジャパンに、もっと誇りをもってほしいと思っています。現在では単純に日本製と捉えている方が多いですが、私の中では世界一の製品である証だと考えています。ミズホさんは、このメイドインジャパンを体現している企業です。機械加工では難しい、1ミクロンを削ることができる手仕上げの技能は、年月が経ってもなくなることはありません。受講者の皆さんは今までにない量の削りを行って、手の皮がむけたりと大変だったと思いますが、その分、手の感覚として身についていくものです。若い皆さんが、仕上げ加工の魅力をさらに広げてくれることを願っています。
権平 今回受講したことで、仕事に取り組む際の姿勢が変わったと実感しています。工具の何気ない使い方も意識するように変わっていきました。また、ものづくりに対する意欲や向き合い方の変化も大きかったように思います。今後は、技能だけではなく「ものづくり」に対する姿勢も後輩に指導していきたいと考えています。
土田 「自分がした加工で精度が出せる」のが仕上げの魅力だと思います。苦戦しながらも自分の手で精度の高いヤスリがけができるようになった喜びを忘れずに、今回学んだことや姿勢をどの製品作りにも意識できるよう、これからも取り組みたいと思います。また、機会があればさらなる技能の向上を目指して技能検定「治工具仕上げ」1級にもチャレンジしたいです。
真棟 ヤスリ以外にも今まで私が知らなかった「定盤」(じょうばん)など道具の整備の仕方まで学ぶことができ、技能面だけではない豊富な知識を得られたことで、より作ることへのこだわりが増したように思います。また、常泉マイスターのご指導を経て、ものづくりの楽しさを感じながら作業することの大切さを改めて感じたため、後輩たちにものづくりの楽しさや達成感を伝えていきたいです。
ミズホ株式会社 五泉工場
製造部 製造三課二班
権平
隆一
さん
ミズホ株式会社 五泉工場
製造部 製造二課一班
土田
祐磨
さん
ミズホ株式会社 五泉工場
製造部 製造一課二班
真棟
恵多
さん