家具製作

指導先:石川家具工業協同組合(石川県)

ものづくりマイスター:木村 斉さん

石川家具工業協同組合

石川家具工業協同組合は、昭和28年に発足した家具を扱う県内の企業から成る組織です。今年で68年という歴史を誇り、家具製作の技能継承に貢献してきました。近年では、「木」が生み出す温かさが見直されており、減少傾向にあった組合員数も増加しています。

実技指導を依頼した背景

機械加工に慣れてしまった職人に伝統技能の楽しさを伝えたい

現在の家具製作は、ほとんどの工程で機械を使用します。石川家具工業協同組合に加入している企業の多くも機械による加工が一般的であり、手加工はほとんどありません。一方で、各企業で働く若手社員の入社の動機は、“ものづくりが好き”というものが大半を占めており、家具製作に対して大きな期待と向上心をもって入社するケースが多い傾向にあります。しかし、実際は家具製作の工程は機械操作がメインであるため、作業がルーティン化しがちです。そこで、ものづくりの原点である手加工の楽しさを再確認してもらえる機会を作りたいと考えました。そんな時に、「ものづくりマイスター等事業」があることを知り、実技指導を依頼することとなりました。

実技指導を受けたことによる効果

手加工の魅力・精巧さに夢中になった受講者たち

機械を使用すれば、いとも簡単に木材の穴あけや加工ができますが、手加工ともなると一つひとつの作業に神経を集中させ、時間をかけて作り上げていくという手間が発生します。これこそ、ものづくりの醍醐味です。良い意味で苦戦や大変さを味わうことができるため、実技指導に参加した若手社員たちは大変と言いながらも笑顔を見せていました。木村マイスターによる実技指導をお願いしてから、まだ1年も経っていませんが、早くも、手加工によるミリ単位の調整を要する精巧な技能に夢中になる参加者が増えています。現在では、実技指導の受講を始めた当初と比べて2倍近い方が各指導に参加するようになりました。また、実技指導が受けられるという口コミが広がり、組合員の増加や技能検定受検希望者の増加など好影響を与えています。

石川家具工業協同組合
理事長

ひがし 直樹 なおき さん

手加工を通じて家具製作の技能を見つめ直し
業界全体の技能向上に貢献する

道具の使い方などの基本を学ぶことで応用を可能にする

機械による加工が中心になりつつある家具製作を手加工で行うという実技指導ですが、まず注力したポイントはどこですか。また、受講者の方は今回のプログラムに参加しようと思ったきっかけを教えてください。

木村 まずは、手加工の家具製作に使用する道具について覚えてもらうことをプログラムには盛り込んでいきました。ものづくりの基本である道具の使い方や調整の仕方、手入れ方法までをすべて教えて、受講者一人ひとりが納得するまで諦めないことを掲げて臨みました。また、分からないことを質問しやすい関係を築くため、受講者とのフランクなコミュニケーションも重視したポイントです。

岩﨑 私は、石川県内で行われた「技能まつり」を見学した際、数ある職種の中でも家具製作が目に留まり、この業界に入るきっかけとなりました。 専門学校に通っていた時は建築大工を専攻していたため、家具作りに関してはまったくの未経験です。それまで先輩の補助しかできていなかったため、技能を身に付けて社内で認めてもらえるよう、木村マイスターの実技指導を受講しました。

受講者とのフラットな関係作りが効果的な実技指導に

実技指導の中で特に大切にしていたことや、教え方の部分でこだわっていたことがあれば教えてください。また受講されて印象に残っていることはどのようなことでしょうか。

木村 指導する際に大切にしていることは、上から目線にならないことです。なぜなら、教わる側の目線に立って話をしなければ、単なる押し付けになってしまい技能向上に繋がらないからです。私が考える職人の世界というものは、経験を積んだ人間が偉そうに上から指示するのではなく、まずはやって見せながら説明することで、初めて受け手の向上心やチャレンジ精神が育まれるものです。

岩﨑 木村マイスターは、話しやすくとても気さくな方です。未経験である私の目線に立って指導してくださったので、施工方法が分からない時なども安心して質問することができました。特に、手加工で行う家具製作は機械と違って角度を合わせることが大変だったのですが、「まずは大きめに加工して徐々に削ればよい」というアドバイスをいただき、そのことは実際の仕事でもとても役に立っています。

後輩たちにも伝えてほしい「手加工の奥深さ、家具作りの醍醐味」

今回の実技指導を受講した方たちに期待することや将来の展望についてお聞かせください。また、実技指導を受けての感想を教えてください。

木村 私の実技指導を受けた若手の受講者たちが、それぞれの会社に戻ってフィードバックを行い、今後は後輩たちに技能を継承してくれたらとても嬉しく思います。そして、家具製作をメインとした日々の仕事やプライベートにおいても、ものづくりの楽しさや手加工の奥深さを感じながら、この業界でさらに活躍してくれることを願っています。

岩﨑 今回の実技指導には、石川家具工業協同組合の組合員が各企業から参加しているため、普段では接点のない他社の方たちの存在にも刺激を受けました。中でも、私と同じ年の女性と繋がりをもつことができ、お互い切磋琢磨し合いながら技能を習得できたことも大きな収穫でした。今後は、受講して得た知識や経験を糧に、社会に貢献できるような存在になっていきたいと考えています。

岩﨑 いわさき 菜々子 ななこ さん

ものづくりマイスター
木村 きむら ひとし さん

技能指導の実績
企業及び団体向けの家具手加工作業、実技指導

これまでに49年もの長きに亘り家具製作の事業に携わっており、培ってきた技能を若い世代へと継承するためにものづくりマイスターの認定を受けた木村マイスター。長年の経験に基づいた幅広い知識と技能を活かして、家具製作の技能の指導に努めています。
プログラム内容
実施課題 家具製作
目  的 家具手加工作業の実技指導
受講対象 組合加入企業 社員 9名
  • 第1回
  • 道具の種類と正しい使い方
  • 第2回
  • 原寸図や墨付けの書き方
  • 第3回
  • 加工の順位・仕方
  • 第4回
  • 加工の方法・仕方
  • 第5〜8回
  • 加工方法
  • 第9〜10回
  • 組立て
石川家具工業協同組合

〒920-0226 石川県金沢市粟崎町5丁目31

設 立 年 昭和28(1953)年
理 事 長 東 直樹
会 員 数 31社