電気機器組立て

指導先:オリオン機械株式会社(長野県)

ものづくりマイスター:清水忠男さん

オリオン機械株式会社

昭和21年の創業から長野県須坂市に根差した歴史と伝統のある企業です。創業当初は酪農の搾乳機を開発し、畜産分野において全国に販売網を構築しました。そこから業績を伸ばし、畜産で培った冷凍や真空の技能を産業機械に活かすことで、現在ではエアードライヤーや真空ポンプなどの製造で業界トップシェアを誇っています。

実技指導を依頼した背景

人物本位の採用のため早期に新入社員の基礎教育を行う必要があった

当社は採用時に、経験や技能を持っている方ではなく、人柄などの人物本位の基準で選考を進めてきました。そのため、技能職の募集であっても、ものづくりにおける基本的な技能や基礎知識を習得していない者が多い傾向があります。過去には、入社後に職業訓練校に通ってもらい、技能の習得を行っていたこともありましたが、その社内制度も廃止となったため、新たに新入社員が学べる機会を模索していました。しばらくして「ものづくりマイスター等事業」のことを知り、長野県の地域技能振興コーナーへ相談し、実技指導を依頼することになりました。これまでは「製図」「配線」「検査」「仕上げ」の技能について、4名のものづくりマイスターから実技指導を受けており、今年で7年目を迎えます。

実技指導を受けたことによる効果

新人の成長が会社全体の成長に繋がっている

マイスターの講義を経て、新人社員の技能や知識が向上しただけではなく、仕事に向き合う表情も変わったように感じています。今回、電気機器組立ての実技指導を担当してくださった清水マイスターには、配線などの業務に関わるプログラムを中心にお願いしました。さらに受講者のほとんどが電気機器組立てについてまったくの新人ということもあり、安全を重視する感覚を身に付けられる指導もお願いしました。丁寧かつ親身にご指導いただいたことで、受講者が電気や配線の奥深さに興味を持ち、自らの技能向上に積極的に取り組むようになったため、その姿に頼もしさを感じています。また、すべてのプログラムを終えた受講者が現場に配属されると、他の社員も刺激を受けることが多くあり、組織全体の成長にも繋がっています。

オリオン機械株式会社
管理本部 取締役 総務部長

伊藤 いとう ただし さん

経験ゼロからものづくりの面白さを体感し
働くモチベーションを高める指導

基礎からしっかりと指導することで、技能習得の土台を作る

ものづくりマイスターの実技指導「電気機器組立て」について、受講者の方は皆さん未経験だと伺いました。清水マイスターはどのようなことを意識して指導にあたりましたか。また受講者である宮坂さんはどのような気持ちで臨まれましたか。

清水 今回受講された社員の方は、今まで電気に関連する技能を学んだこともなければ、工業系の学校ではなく商業系の学校を卒業された方など、電気に関して未経験で入社された方がほとんどです。工具に触れること自体が初めてという方も少なくありませんでした。そのため、ペンチの持ち方から電気配線などの被覆を剥がすワイヤーストリッパーの使い方まで、基礎的なことを理解できるまで丁寧に教えることを心がけました。

宮坂 私はものづくりに興味があり入社しましたが、商業高校の出身だったため、工業系の知識はゼロからのスタートでした。そのため、今回の電気機器組立ての技能を学ぶにあたり、例えば配線が何のために存在していて、配線と配線を繋ぐと何が起こるのかもさっぱり分からない状態でした。受講するまでは技能が習得できるのか、とても不安でした。

発信するだけの指導ではなく、受講者の声を聴くことで学ぶ意欲を育む

清水マイスターが指導の中で特に大事にしたことは何ですか。また、宮坂さんはどのようなことを学びましたか。

清水 実技指導を行う際に注力したことは、なるべく受講者の意見に耳を傾けるということです。限られた時間の中での指導は、どうしても教える側が一方的に話してしまうことや、何でも押し付けるような教え方になってしまいがちですが、受講者から質問があれば即座に答えることや、私からも声をかけるなど、気軽にコミュニケーションが図れる関係作りを大切にしていました。すると、受講者の学ぶ姿勢もどんどん積極的になり、配線を組んで制御盤が作れるようになり、モーターが動くと心から喜んでくれました。その笑顔を見るたびに、私自身も嬉しい気持ちになりました。

宮坂 清水マイスターの指導は本当に丁寧で分かりやすく、学ぶことが沢山ありました。知らないことだらけの私が「この配線コードの被膜は何ミリ剥いたらいいですか」など、ことあるたびに質問をしても丁寧に教えてくださり、質問しにくいということもありませんでした。また、技能や知識だけではなく、配線の奥深さや面白さについても教えていただいたため、私自身、いつの間にか電気機器組立てへの興味と関心が高まり、受講を終えた今は現場でも配線を組むことを楽しめています。

テクノロジーが進化しても、世に必要とされる技能を継承していく

今回の実技指導のプログラムを経て、これからどのような目標をもって未来図を描いていくのでしょうか。マイスターと宮坂さんそれぞれの視点でお聞かせください。

清水 受講された方々が、自分でひとつの装置を最後まで完成できるような技能者になって欲しいと思っています。そのためには、設計図を見ながら様々なことを検討する応用力も必要です。与えられたことだけではなく、自ら考えて改善できる技能者がこれからの時代に求められています。電気機器組立ても自動化が進んでいますが、コンピュータと負荷装置を繋ぐ部分はロボットによる大量生産ができません。したがって、最終的な仕上げは手作業が必要となるため、手に入れた技能という価値あるものをこれからも大切に育んでいただきたいです。

宮坂 今は、配属先の試作開発部では清水マイスターのご指導から学んだことを活かして、装置の配線作業を行っています。これまでは読むことができなかった図面も読めるようになり、今では配電盤の中で何がどんな役割を持っているのかを説明することもできます。配線の組み方でコストを削減できることも分かってきました。今私が配属されている部署の上司は配線業務における膨大な知識と技能をもった方で、社内でも頼られている存在です。今後は、私も上司のように社内の人から頼られるような技能者になることが目標です。そして、将来は自分の成長した姿を清水マイスターに見ていただきたいと思っています。

オリオン機械株式会社
生産技術本部 試作開発部
試作技術グループ

宮坂 みやさか めぐみ さん

ものづくりマイスター
清水 しみず 忠男 ただお さん

平成26年度 厚生労働省「ものづくりマイスター(電気機器組立て職種)」認定

技能指導の実績
企業及び学校向けの電気機器組立て実技指導

民間企業にて電気設備、工作機械のメンテナンスや修理を担当。その後、職業訓練校に電気科指導員として28年勤務。訓練課長に就任し、定年退職後にものづくりマイスターの認定を受けました。
プログラム内容
実施課題 電気機器組立て
目  的 配電盤・制御盤作業に必要な基礎知識/配線方法、回路チェックなどの習得や技能の向上
受講対象 社員4名
  • 第1回
  • 電気の基礎知識(電気回路、オームの法則、電力)
  • 第2回
  • 交流回路の計算、電気機器
  • 第3回
  • シーケンス基本回路、配電盤・制御盤製作の基礎知識
  • 第4回
  • 電線の取り扱いと接続法、配線方法
  • 第5回
  • 直入れ始動回路制御盤製作、主回路配線
  • 第6回
  • 制御回路配線、回路チェック、動作確認
  • 第7回
  • 正転逆転始動回路制御盤製作、主回路配線
  • 第8回
  • 制御回路配線、回路チェック、動作確認
オリオン機械株式会社

〒382-8502 長野県須坂市大字幸高246

設 立 年 昭和21(1946)年
代表取締役 太田 哲郎
事業内容 精密空調機など各種産業機械、
酪農機械の開発・製造・販売
従業員数 720名