電子機器組立て

指導先:有限会社二色電子(三重県)

ものづくりマイスター:小澤二二雄さん

有限会社二色電子

小ロット多品種、短納期で電子機器の製造業を営む企業で、システム機器などに関するプリント基板を製造しています。「品質第一、わたしたちの心です」を経営理念として掲げており、現場での徹底した品質管理とその「ものづくり」によって、製品の不具合発生件数の低さを実現しています。

実技指導を依頼した背景

社員の技能の対応力・「現場力」を高め、取引先の期待に応えたい

弊社では理念として品質を重要視している他に、行動指針として“現場力を高めること”を定めています。現場力を高めるためには社員同士がお互いに思いやりを持ち、助け合うことや報連相の徹底などの基本的なことが含まれることはもちろん、各社員の技能への対応力向上が不可欠です。弊社では小ロット多品種、短納期での製造を行っていることもあり、新たな製品に取り組む際は、初めての技能を用いて製造する場面も少なくありません。取引先企業様の期待に応えるためには、社員たちが担当している製造ラインに固執せず、電子機器の組立て作業全体にチャレンジしてもらう必要がありました。

実技指導を受けたことによる効果

短いスパンでの納期の実現や難しい技能を使った製造にも対応できる実力がついた

弊社代表の親族がものづくりマイスターの講義を受けた際の話を聞いたのをきっかけに、マイスターへの実技指導を依頼しました。これまでは部品の配置や図面を読み取る技量など様々な不安がありましたが、受講した社員それぞれの成長に合わせた実技指導を小澤マイスターが行ってくださったことにより、これまでと比べ一人ひとりの社員が対応できる業務範囲が広がったように感じています。また技能習得を通じて自信を得た社員も多く、現場ではこれまでとは異なる作業に取り組もうとしている姿を目にするようになりました。社員が成長するにつれ、会社全体で仕事の幅も広がり、これまでよりも短いスパンでの納期の実現や、難しい技能を使った製造にも対応できる実力がついたように感じています。

有限会社二色電子
代表取締役社長

中谷 なかたに 恭平 きょうへい さん

有限会社二色電子
製造課·製造技術 課長

村田 むらた 好信 よしのぶ さん

徹底した基礎と品質へのこだわりが
受講者の新たなチャレンジを生み出す

高い精度と品質を生み出す、基礎を重視した指導

今回のプログラムでは、社員の皆さんが担当している製造ライン以外の業務にも対応できるようになることが1つの目的だと伺っています。その実現のために、どのような指導を行いましたか。また、山添さんは受講をしていかがでしたか。

小澤 ものづくりにおいては「基礎技能の鍛え方」と「製品の品質管理」が何よりも重要です。電子機器組立て作業で行うようなはんだ付けでは、製造ラインにかかわらず、共通して0.5ミリクラス以上の高い精度が求められます。とても細かく難しい技能であるため、指導の際にはプロジェクターを利用して、実際の映像を受講者の方々に見せながら指導を行いました。このことは自身の製造ラインとは異なる業務を知ることにも役立ったのではないでしょうか。また座学による指導を行った後は実際の作業に取り組んでもらい、「自分が教える立場になったらどのように教えるか」ということを考えてもらいながら良い製品を作るために不可欠な基礎構築を目指しました。

山添 私は主に基板修正業務や外観検査機OP業務、動作検査業務というものを行っています。これまでもそれらの業務を通じてはんだ付けを行っていましたが、小澤マイスターの厳しくも優しい指導を通して、改めて基本の技能や、その先にある製品の質をどう高めるかということまでも学ぶことができました。小澤マイスターの指導はとても丁寧で、細かなことについても教えていただけたため、受講後にはこれまでよりもスムーズに組立ての作業が行えるようになったと感じています。

技能に加え仕事の基礎の徹底が、品質の向上をもたらす

小澤マイスターが指導にあたって、特に大切にしていたことを教えてください。また山添さんが受講者として、特に印象に残っていることはどのようなことでしょうか。

小澤 受講者たちには「自分が作ったものを買いたいと思いますか」ということを何度も質問しました。お客様が質の高いものを求めることは当然のことですが、会社に勤めていると、ある程度の質で製造を行っていれば給料をもらうことができるわけです。本来であれば質の高さを追求することは製造に関わる者の責務だと考えていますので、これを伝えることを何よりも重視しました。具体的な指導としては、スマートフォンにも使用されているような身近な機器の製作を行いました。ものづくりの基本である「基礎と品質」の向上を目指し、図面の読み方や図面から実際の業務に繋げるための能力を鍛えました。ほとんどの社員にとって身近な電子機器を作ったことで、製品品質の重要性を自分のこととして実感してもらえたと思います。

山添 受講前は漠然と、テクニックを習う講義であると考えていました。しかし、実際にははんだ付けに関する小手先の技能ではなく、図面からどのようにして効率的な段取りを行うかなど、より仕事の質に関わる技能を指導していただけました。特に印象に残っていることは「5S」についてです。これは「整理」「整頓」「清潔」「清掃」「しつけ」という5つの言葉の頭文字から来ている言葉で、この5つのどれか1つでも疎かにしていると、業務が非効率的になってしまうということです。それを実際に体感できたのは、道具や材料の配置によって組立てが速くなったときです。小澤マイスターの指導に基づいた配置で組立てを行うと、格段に早く組立てを行うことができました。早く作業ができるようになったことで、これまでよりもコスト削減や品質管理の徹底をすることに注意を払えるようになりました。

学びを共有し、会社の技能を底上げする

電子機器組立て分野の今後についてや自分自身の将来について、今回の実技指導を通して考えたことを教えてください。

小澤 プリント基板の試作は、機械ではなく、必ず人の手で行われます。大手企業ではこの試作段階のはんだ付けができる人材を抱えている企業は少なく、それができることを強みとしている企業も増えてきました。設備機械による自動化は今後、電子機器組立ての分野でも進んでいくと思います。しかし、人の手によるはんだ付けの重要性は変わらずあり続けると考えています。そのようなことを考えた時、はんだ付けという技能を持つこと、電子機器組立てを自分の手で行えるということは、大きな長所になるのではないでしょうか。受講者の方々が今回のプログラムで学んだことを存分に活かしてくれることを期待しています。

山添 受講を通して自身の担当工程以外の全体の製造の流れを知ることができました。また自身の技量が上がったことで、これまでは対応できなかった新たな業務に挑戦できるようになったとも感じています。しかし、素早く高い品質の製品を作るまでにはまだまだ至っていません。そのため今後も作業効率と精度の向上を目指すとともに、学んだことをチーム全体で共有し、会社全体での技能の底上げを図りたいと考えています。

有限会社二色電子
LED調光製造ライン

山添 やまぞえ 麻里 まり さん

ものづくりマイスター
小澤 おざわ 二二雄 ふじお さん

平成25年度 厚生労働省「ものづくりマイスター(電子機器組立て職種)」認定

技能指導の実績
企業及び学校向けの電子機器組立て実技指導

45歳の頃から勤めていた企業で技能研修の責任者を経験しました。その後62歳で退職され、三重県の産業支援センターなどで「管理監督者育成基礎講座や改善アドバイザー業務」に取り組みました。平成25年にものづくりマイスターに認定され、マイスターとしての活動以外にも、行政からの依頼で講座などを行っています。
プログラム内容
実施課題 電子機器組立て
目  的 技能検定3級合格レベルの技能習得
受講対象 社員14名
  • 第1回
  • 実習の効果と必要性
  • 第2回
  • 電子機器組立て作業のポイント
  • 第3回
  • 国家技能検定資格の紹介
  • 第4回
  • 一流技能者の人格·品格·所作
  • 第5回
  • 5S・動作経済の4原則と無駄とり
  • 第6回
  • 電子機器組立て作業マニュアル
有限会社二色電子

〒519-2911 三重県度会郡大紀町錦695

設 立 年 平成元(1989)年
代表取締役 中谷 恭平
事業内容 電子機器製造業
従業員数 38名(2020年10月現在)