機械検査

指導先:滋賀バルブ協同組合(滋賀県)

ものづくりマイスター:北川 久補さん

滋賀バルブ協同組合

国内屈指のバルブ産地を形成する「琵琶湖」の東部に位置する彦根市を中心とした地域にある滋賀バルブ協同組合は、正会員と賛助会員を合わせて約50社の企業が入会しています。バルブ製造業に特化した組合であるため、技能研修など、多種多様なサポートを実施しています。

実技指導を依頼した背景

組合に入会する企業を対象に技能を磨く講習を実現したい

滋賀バルブ協同組合に入会されている企業が「ものづくりマイスター等事業」を独自に利用しており、「技能習得に有益な指導でとても良かった」という話を伺ったことをきっかけに、当組合から、会員企業の社員を対象に団体としての受講が可能か滋賀県技能振興コーナーに相談したところ、団体向けに実技指導を実施できるという回答をいただきました。平成26年に機械検査の実技指導を開始して、今年で7年目を迎え、多くの会員企業からこれまでに約90名が受講しています。

実技指導を受けたことによる効果

機械検査の基礎を習得したことで会社全体の技能向上に繋がった

バルブ製造業は、JIS規格や ISO規格に適合した検査精度が要求されます。中でも、機械検査は品質管理の精度を高めるためにも重要な工程であるといえます。そこで、私たちが北川マイスターに依頼したことは、機械検査の基礎から指導してほしいということでした。なぜなら、測定工具「ノギス」の正しい使い方すらも教わったことのない社員が多いという各企業の実情があったためです。機械検査の基礎からご指導いただいたことで、受講者からは初めて理論が分かったという声が数多く寄せられています。また、習得した技能や知識を自社に持ち帰り、所属部署に共有することで組織全体の技能向上に繋がったとの報告も得られています。

滋賀バルブ協同組合
専務理事

阿部 あべ 弘幸 ひろゆき さん

機械検査に必要な各種測定器の使い方や検査法など
基礎から学び本物の技能を習得する

受講者のニーズを把握し、プログラムを組み立てる

滋賀バルブ協同組合会員の複数企業から受講者が集まるため、プログラムを組むのは大変だったと思いますが、どのようにして組み立てたのでしょうか。また、受講者の方は今回参加したきっかけを教えてください。

北川 私は、実技指導を行う前に受講者が「何を学びたいか」確認を行うようにしています。特に、滋賀バルブ協同組合が、対象となる企業に対して「何を教えて欲しいのか」を問うアンケートを事前に実施されており、その結果を踏まえたうえでプログラム内容を考えて指導しています。加えて、バルブ製造の精度に関することや品質管理、製品検査など、技術革新の進展に伴って、時代ごとに変わるニーズに対して常にアンテナを立てることを大切にしています。

山口 私は、滋賀県彦根市にある昭和バルブ製作所の製造課で機械加工を担当しています。主にNC旋盤やマシニングセンタという機械を使い、高い精度が求められる部品の加工を行っています。今回、北川マイスターの実技指導に参加したのは、普段の業務では学べない高度な知識や技能を学び、さらに精度の高いバルブ製造に繋げたいと考えたからです。

受講者の向上心を育む指導者の姿勢

実技指導を開始する際、受講者の方たちに伝えたことや配慮したことなどはありましたか。また、指導中のこだわりや大切にしていたこと、受講者の方は指導を受けた感想について教えてください。

北川 基本的な知識や技能が身に付いていない受講者が多いため、指導を行う前に必ず目的と指導カリキュラムを伝えるようにしました。そして具体的な指導内容を示し、他にも習得したい技能があるかをヒアリングしました。その際に、他の受講者にも確認をしたうえで全員の意見が一致することを大切にしました。また、私がものづくりの指導を行う際に大事にしていることは、山本五十六語録「やってみせ 言って聞かせてさせてみて ほめてやらねば人は動かじ」という教える側の姿勢です。これまで培ってきた技能を披露し、現場でどのように役立つのかを明確にお伝えしています。そこからさらに興味をもっていただき、参加することへの向上心を育むことを意識しました。

山口 北川マイスターの指導は、各種測定器や検査機器を使用した実技に加えて、映像を使って現場の作業シーンを細かく解説してくださったため、とても理解しやすい内容でした。中でも、普段の業務でよく使用するノギスという測定器は、先輩たちが使っているところを見よう見まねで覚えていたため、正しい使用方法を知って衝撃を受けました。改めてノギスの原理を一から教えていただき、測定の精度が向上したことで正確な測定が出来るようになったことは、私にとって大きな収穫です。

機械検査の基本を徹底し、自ら考えて動く「考動力」を磨く

今回の実技指導では、様々な「基本」をベースに指導されたと思いますが、特に注力した内容は何ですか。また、受講者の方は今後の抱負をお聞かせください。

北川 機械検査や測定作業などはすべて、「安全」のもとに行われることが大前提ですので、常に安全を基本に指導しています。ものづくりに関わる仕事全般にいえることですが、事故や怪我をしてしまえば、すべて無駄になってしまうからです。安全をベースに、各種測定器や検査機器の正しい構造や取り扱い方法を理解することで、知識と技能が今まで以上に磨かれます。これからも実技指導を通じて、自ら「考えて」そして明確な意志と目的に基づいて「動く」という「考動」を実践する若手技能者を増やしていけたらと考えています。

山口 今までは、機械加工の際にノギスを使用して寸法を調整しながら、心のどこかで本当に数値が合っているのか不安を感じることもありました。しかし、今回北川マイスターにご指導いただき、測定器の原理や正しい使用方法を知ることができ、自分が出した測定結果に自信を持つことができました。これからも、機械検査のプログラムで学んだことを活かし、職場の後輩たちにも技能を継承していきたいと考えています。

株式会社昭和バルブ製作所
製造課

山口 やまぐち 博矢 ひろや さん

ものづくりマイスター
北川 きたがわ 久補 きゅうほ さん

平成25年度 厚生労働省「ものづくりマイスター(機械検査職種)(金属材料試験職種)」認定
平成26年度 厚生労働省「ものづくりマイスター(機械加工職種)(機械・プラント製図職種)」認定
平成28年度 厚生労働省「ものづくりマイスター(機械保全職種)(空気圧装置組立て職種)」認定

技能指導の実績
企業及び団体向けの機械検査、機械保全などの実技指導

滋賀職業能力開発短期大学校で生産技術科を担当。また、地域の中小企業に勤める方を対象に専門知識や技能などに関する能力開発セミナーを実施しています。平成25年に若年技能者人材育成支援等事業の開始後、新規に認定されたものづくりマイスター向けの指導技法講習の講師も務めながら、自らもマイスターとして活動しています。
プログラム内容
実施課題 機械検査
目  的 品質管理、品質保証について品質管理技能やその実践能力を身に付ける
各種測定器の原理、構造を学び、正しい測定器の扱い方、測り方、保管などの技能を身に付ける
各種工作機械による複雑な加工物の精密測定技能を身に付ける
精密測定機器の性能検査、校正及び工作機械の静的精度検査の知識や技能を身に付ける
受講対象 組合加入企業 社員 4名
  • 第1回
  • 品質管理、品質保証等についての指導
  • 第2~6回
  • 測定法についての指導
  • 第7~10回
  • 検査法についての指導
滋賀バルブ協同組合

〒522-0037 滋賀県彦根市岡町52番地

設 立 年 昭和62(1987)年
理 事 長 濵口浩一
会 員 数 約50社