婦人子供服製造

指導先:明石被服興業株式会社(岡山県)

ものづくりマイスター:岡本 敏枝さん

明石被服興業株式会社

明石被服興業株式会社は、学生服を中心に企画から製造、販売までを一貫して手掛けています。学生服の他にも、オフィスユニフォームやスクールスポーツウェア、メディカルウェアなども製造しています。自社工場を所有しているため、企画から製造までをスピーディに行える生産性の高さを強みとしています。

実技指導を依頼した背景

服作りに関する個々の技能を磨くきっかけが欲しい

弊社が手掛けている製品の大部分は学校制服です。そのため、既存の製造フローに則った服作りがベースであるため、これまでの技能継承は社内のみで行われてきました。このことから、業界内における自社社員の技能や知識のレベル感が掴めていませんでした。また、社内だけの技量で新人育成を継続するだけでは、企業としての成長はもちろん、競合との差別化に繋がらないと考え、外部のプロフェッショナルから協力を得ることとしました。そこで、婦人子供服製造職種のものづくりマイスターに、実技指導をお願いしました。

実技指導を受けたことによる効果

一から服を完成させる指導が個々の意識を高めチームワークにも好影響を与えた

今回のプログラムは、ワンピースを一から作り上げるという内容でした。これまで、社員たちは与えられた分担作業が中心だったため、一から服を縫い上げること自体が初めてという者も少なくありません。そのため、ワンピースが完成するまでのプロセスは、とても苦労があったと思います。そのような中でも、自主的に練習する姿や、作業が遅れてしまっている社員を周囲がサポートする様子を見ることができ、この実技指導で個々の社員が新たな技能を学べただけではなく、組織全体のチームワークや連携などの強化にも繋がっていると感じました。今後は、岡本マイスターに教えていただいたことを活かして、社内の働き方や業務フローにおける改善等も行っていきたいと考えています。

明石被服興業株式会社
生産本部
商品開発部 部長

中塚 なかつか 裕之 ひろゆき さん

平面のパターンから立体の服を完成させるプログラムで
自己成長へと繋がる実技指導

注文服を通しで製作するチャレンジが達成感と自信を生み出す

今回は学生服をメインに製造している企業への指導でしたが、事前に行った準備やプログラムで工夫された点はありますか。また社員の方は今回受講したきっかけを教えてください。

岡本 これまで学校などで学生を対象に服作りの基礎を教えた経験はありましたが、同業の企業で働く方を対象にした実技指導は初めての経験でした。服作りがまったくの未経験ではない方たちに対して、どのように指導するかを入念に考えながら準備を進める中で、既製服ではない注文服の製造にフォーカスしてプログラムを組みました。

向平 私は、これまで1人で1着の服を縫い上げた経験はなく、パーツごとの分担作業をしていました。そのため、プログラム内容がワンピースを一から完成させることだと知った時は、これまでに経験のない自分にできるかどうか、正直不安な気持ちがありました。しかし、新しい知識や技能を得るチャンスだと思い、実技指導の受講を決めました。

課題作品の完成で様々な苦労は大きな喜びへ

ワンピースを1着縫い上げるプログラムを進めるうえで、特に気を付けた点や工夫された点があったら教えてください。また受講者の方は指導を受けてみて、どのようなことを感じましたか。

岡本 実技指導では、パターンから1着のワンピースを仕上げることをゴールとして実施しました。実際に始めてみて分かったことは、受講者のレベルがそれぞれ異なることです。そのため、できるだけ個々に合わせた指導を心がけました。苦手なところを克服しながら、正しい裁縫の仕方や寸法、外観の検査など、自分が手掛けた作品の評価をし合うなどして完成度を高めていきます。実技指導プログラムの後半では、全員の作品が良い仕上がりとなり手応えが感じられました。

向平 実技指導の初日から、分からないことばかりで戸惑いましたが、岡本マイスターが細かく丁寧に教えてくださり、具体的にアドバイスをいただけたことで苦手なところも克服できました。また、受講のたびにミリ単位の差でも出来栄えが変わってしまうことや、細かく注意することで自分の縫い方の癖に気付くことが出来ました。受講期間中は、岡本マイスターのやさしい人柄もあり、質問だけでなく何でも話せる雰囲気にしていただいたことで安心して取り組めました。

将来は服を作る楽しさや技能を伝えていきたい

ファッション業界の中でも服の作り手への想いや、将来への期待などをそれぞれの視点でお聞かせください。

岡本 近年、ものづくりを仕事にする若手が減少傾向にあります。ファッション業界は、幅広い世代に人気ですが、作る側の人材確保が難しく、大きな危機を迎えています。ミシンを踏んだことがない方やボタン付けができない方が多い現代社会において、少しでも多くの方が服作りの面白さや技能を身に付けたいと思えるような活動を今後も続けていきたいと考えています。

向平 岡本マイスターの実技指導を受講したことによって、服を一から縫い上げることの大変さや面白さ、細部までこだわることの大切さを知ることができました。教えていただいたことを活かし、今後は縫製の技能をさらに高めていろいろなアイテムを縫えるようになりたいです。そして、後輩への指導にも役立てながら技能の継承に努めていきたいと思っています。

明石被服興業株式会社
商品開発部

向平 むかひら 早紀 さき さん

ものづくりマイスター
岡本 おかもと 敏枝 としえ さん

平成25年度 厚生労働省「ものづくりマイスター(婦人子供服製造職種)」認定

技能指導の実績
企業及び学校向けの婦人子供既製服縫製作業の実技指導

昨今のものづくりをする若年者の減少に危機感を覚えたことをきっかけに、ものづくりマイスターとして認定を受け、現在は自身で経営するアトリエでオーダー仕立ての洋服製造を行いながら、培ってきた技能を多くの人々に継承しています。
プログラム内容
実施課題 婦人子供服製造(ワンピースの製作)
目  的 既製服縫製作業の実技指導
受講対象 社員 9名
  • 第1回
  • ベルトの作り方、裏地の縫い方、衿のくせ取り、衿の縫い方、袖のカフスの作り方、袖口のカフス付け
  • 第2回
  • 表身頃のダーツ縫い、前後身頃の縫い、表身頃に裏衿付け、 見返しに表衿を付け、表身頃に見返しを縫い合わせ、 衿の中とじの仕方、ベルト通しの縫い方
  • 第3回
  • 袖のいせ込みの仕方、身頃への袖の付け方、身頃への裏地の付け方、見返し袖の縫い方
    袖の手縫いの仕方、ボタン付け及びボタンホールの手縫いの仕方、
    仕上げアイロンの仕方、ボディーの着せ付けの(ベルト結び)仕方
明石被服興業株式会社

〒711-8611 岡山県倉敷市児島田の口1丁目3-44

設 立 年 昭和19(1944)年
代表取締役 河合秀文
事業内容 グループ経営の事業統括、グループ各社の財務・管理
スクール・オフィス・ファクトリーユニフォームの管理・生産・物流
スクールスポーツ・メディカルウェアの管理・生産・物流
従業員数 610人