準備から完成までを通して造園に取り組む実技指導が
経験のなかった若者に造園業の魅力を伝える
造園の良し悪しを決める、「準備」の大切さを伝える
造園の知識がない生徒たちへ、どのような想いで講義に臨んだのでしょうか。また生徒の皆さんはどのような想いで受講されましたか。
武田 造園の知識のない生徒たちへの指導として、全10回のプログラムを作成しました。基本的な造園技能の習得を目指すためには、まずは準備が大切です。それを生徒のみなさんにも分かってもらえるように前半の5回では、何もない土地から敷地や区画を割って、両面スコップなどで穴を掘り、土の中に含まれた石などを取り除く作業を継続的に行いました。
池野 私は造園に関する知識がまったくなかったため講義を受ける前は不安でしたが、武田マイスターはそんな私にも分かるように優しく指導してくださいました。また、造園には不要な石を取り除くなどの「準備」がとても大切で、また大変な作業だということも講義を通して初めて知りました。水糸を引くときも距離感が掴めずにマイスターに質問をすると、ただ言葉で教えてくれるだけではなく、実際にやって見せて教えてくださり、理解しながら作業を進めることができました。
井上 私は、祖父が趣味で農業をしていて、その手伝いを通じて農作物を育てることが楽しいと感じて農業科を選びました。特に、日本庭園などの和を象徴する空間やものづくりに興味を抱いていたため3年生になって課題研究に造園を選択しました。また、武田マイスターから、細かい手仕事について伝統の技能を教わりたいと思い実技指導を受講しました。
造園業に必要な想像力と、技能を育むプログラム
造園の基本的な知識や技能を指導するにあたって、重視したポイントは何ですか。また、生徒の皆さんは、実技指導を通してどのようなことを学びましたか。
武田 造園業の魅力は、何もないところからお客様の希望を伺った上で、頭の中でイメージを描きながら造り上げられることです。自然相手のことであるため、造園の良し悪しが分かるのに1年や2年という年月が必要であり、非常に奥の深い仕事です。また、植物の中には経年の変化によって形が変わるものもあるため、例えば山形の土地に合う植物などの知識も当然必要になります。こういった複雑さや面白さを包み隠さず伝えることで、生徒のみなさんにも造園の魅力が伝わるよう配慮しました。
池野 竹垣を造った講義が、特に心に残っています。竹垣を組んでシュロ縄を結ぶ際に欠かせない「男結び」を学びましたが、竹垣が緩まないようきつく締めなければならず、非常に難しく覚えるのにとても時間がかかりました。その時も、武田マイスターが辛抱強く親身に教えてくださり、最後には1人でも、きつくしっかりと結べるようになりました。
井上 造園の完成図を見た時はすごくシンプルで簡単そうに見えましたが、実際に作業を始めてみると、10回の講義のうち、準備だけで半分の時間を使うことに驚きました。しかし、位置出しや水平をとる作業などが、どれだけ重要であるかを武田マイスターから教わり、準備の大切さを実感することができました。講義の後半では、造園が完成図に近づいていく姿にみんなでワクワクしながら取り組めたことも良かったです。
高齢化が進む造園業の未来を担う若手の育成に繋げたい
造園業の大変さや面白さを体感できるプログラムだったと思いますが、それぞれの感想と将来への展望を教えてください。
武田 今回の講義を機に、「造園」に興味を持ってもらえたらと思っています。山形県内だけではなく、全国的に造園業の高齢化が進んでおり、ニーズはあるものの対応できていないケースが増加しているのも事実です。「植物を愛でる心」を育み、造園という仕事に興味や関心をもつ若手技能者が増えるよう、今後も尽力していきたいと考えています。
池野 私は将来花屋をやりたくて農業科を選択しましたが、武田マイスターから造園の奥深さや難しさ、そして面白さを教わってからは毎回の講義が楽しくて仕方ありませんでした。正直なところ、まだ将来の進路などははっきりと決まっているわけではありませんが、講義で教わった技能と知識を活かして、まずは自宅の庭造りを自分ひとりで手掛けてみようと思っています。
井上 私は土木の短期大学に進学して、造園の技能や知識を高めていきたいと考えています。これらの目標が明確になってきたのも、武田マイスターに技能だけではなく造園の醍醐味なども教えていただいたからです。ゆくゆくは現場監督の仕事に就きたいと考えているため、ここで得た経験を将来の夢に必ず繋げていきたいと思います。
山形県立村山産業高等学校
農業環境科 2年
池野
未優
さん
山形県立村山産業高等学校
農業環境科 3年
井上
莉々花
さん