造園

指導先:山形県立村山産業高等学校(山形県)

ものづくりマイスター:武田 定修さん

山形県立村山産業高等学校

農業科(農業経営科・農業環境科)、工業科(機械科・電子情報科)、商業科(流通ビジネス科)で構成されている高校です。複数の学科が連携し、グローバルな視点に立った先進的な産業教育を展開する高校を目指しており、生徒一人ひとりの進路希望の実現や、専門性を活かした環境保全活動やボランティア活動にも積極的に取り組んでいます。

実技指導を依頼した背景

造園の実務に裏打ちされた深みのある基礎知識を生徒たちに教えたい

農業科(農業環境科)では、3年生の造園技能を学ぶ課題研究に続き、令和2年度から2年生の造園基礎の教育がスタートしました。しかし、山形県内で造園の知識をもつ教員がほとんどおらず、これまでは教員自らが造園関係の企業に訪問して研修を受けながら知識と技能を習得し、生徒たちに指導を行っていました。そのため、実務に裏打ちされた深い専門知識までは指導することができなかったため、造園を専門とされた方からの指導を求め、ものづくりマイスターに実技指導をお願いしました。武田マイスターには、3年生の課題研究の中で、造園の道に進みたい生徒に向けた指導も2年前から担当していただいています。

実技指導を受けたことによる効果

造園の面白さに触れ、より積極的に技能習得に取り組むようになった

「造園」という分野をほとんど知らない生徒たちに、個々の理解度も踏まえ細かく指導していただきました。実技指導では造園の実際の現場や仕事とはどういうものかも伝えていただき、表面的な知識だけではない、造園の醍醐味などにも触れられたところが非常に素晴らしいと思いました。その結果、今回参加した28名の生徒たち全員が基礎知識を習得でき、竹垣を造る際のシュロ縄の結び方など難しい作業も向上心を持って取り組むことができました。また、講義の回数を重ねるたびに生徒たちが積極的に動くことや、それぞれが役割をもって協力し合うことができるようになったと感じています。

山形県立村山産業高等学校
農業科 教諭

片桐 かたぎり あきら さん

準備から完成までを通して造園に取り組む実技指導が
経験のなかった若者に造園業の魅力を伝える

造園の良し悪しを決める、「準備」の大切さを伝える

造園の知識がない生徒たちへ、どのような想いで講義に臨んだのでしょうか。また生徒の皆さんはどのような想いで受講されましたか。

武田 造園の知識のない生徒たちへの指導として、全10回のプログラムを作成しました。基本的な造園技能の習得を目指すためには、まずは準備が大切です。それを生徒のみなさんにも分かってもらえるように前半の5回では、何もない土地から敷地や区画を割って、両面スコップなどで穴を掘り、土の中に含まれた石などを取り除く作業を継続的に行いました。

池野 私は造園に関する知識がまったくなかったため講義を受ける前は不安でしたが、武田マイスターはそんな私にも分かるように優しく指導してくださいました。また、造園には不要な石を取り除くなどの「準備」がとても大切で、また大変な作業だということも講義を通して初めて知りました。水糸を引くときも距離感が掴めずにマイスターに質問をすると、ただ言葉で教えてくれるだけではなく、実際にやって見せて教えてくださり、理解しながら作業を進めることができました。

井上 私は、祖父が趣味で農業をしていて、その手伝いを通じて農作物を育てることが楽しいと感じて農業科を選びました。特に、日本庭園などの和を象徴する空間やものづくりに興味を抱いていたため3年生になって課題研究に造園を選択しました。また、武田マイスターから、細かい手仕事について伝統の技能を教わりたいと思い実技指導を受講しました。

造園業に必要な想像力と、技能を育むプログラム

造園の基本的な知識や技能を指導するにあたって、重視したポイントは何ですか。また、生徒の皆さんは、実技指導を通してどのようなことを学びましたか。

武田 造園業の魅力は、何もないところからお客様の希望を伺った上で、頭の中でイメージを描きながら造り上げられることです。自然相手のことであるため、造園の良し悪しが分かるのに1年や2年という年月が必要であり、非常に奥の深い仕事です。また、植物の中には経年の変化によって形が変わるものもあるため、例えば山形の土地に合う植物などの知識も当然必要になります。こういった複雑さや面白さを包み隠さず伝えることで、生徒のみなさんにも造園の魅力が伝わるよう配慮しました。

池野 竹垣を造った講義が、特に心に残っています。竹垣を組んでシュロ縄を結ぶ際に欠かせない「男結び」を学びましたが、竹垣が緩まないようきつく締めなければならず、非常に難しく覚えるのにとても時間がかかりました。その時も、武田マイスターが辛抱強く親身に教えてくださり、最後には1人でも、きつくしっかりと結べるようになりました。

井上 造園の完成図を見た時はすごくシンプルで簡単そうに見えましたが、実際に作業を始めてみると、10回の講義のうち、準備だけで半分の時間を使うことに驚きました。しかし、位置出しや水平をとる作業などが、どれだけ重要であるかを武田マイスターから教わり、準備の大切さを実感することができました。講義の後半では、造園が完成図に近づいていく姿にみんなでワクワクしながら取り組めたことも良かったです。

高齢化が進む造園業の未来を担う若手の育成に繋げたい

造園業の大変さや面白さを体感できるプログラムだったと思いますが、それぞれの感想と将来への展望を教えてください。

武田 今回の講義を機に、「造園」に興味を持ってもらえたらと思っています。山形県内だけではなく、全国的に造園業の高齢化が進んでおり、ニーズはあるものの対応できていないケースが増加しているのも事実です。「植物を愛でる心」を育み、造園という仕事に興味や関心をもつ若手技能者が増えるよう、今後も尽力していきたいと考えています。

池野 私は将来花屋をやりたくて農業科を選択しましたが、武田マイスターから造園の奥深さや難しさ、そして面白さを教わってからは毎回の講義が楽しくて仕方ありませんでした。正直なところ、まだ将来の進路などははっきりと決まっているわけではありませんが、講義で教わった技能と知識を活かして、まずは自宅の庭造りを自分ひとりで手掛けてみようと思っています。

井上 私は土木の短期大学に進学して、造園の技能や知識を高めていきたいと考えています。これらの目標が明確になってきたのも、武田マイスターに技能だけではなく造園の醍醐味なども教えていただいたからです。ゆくゆくは現場監督の仕事に就きたいと考えているため、ここで得た経験を将来の夢に必ず繋げていきたいと思います。

山形県立村山産業高等学校
農業環境科 2年

池野 いけの 未優 みゆ さん

山形県立村山産業高等学校
農業環境科 3年

井上 いのうえ 莉々花 りりか さん

ものづくりマイスター
武田 たけだ 定修 さだのぶ さん

平成26年度 厚生労働省「ものづくりマイスター(造園職種)」認定

技能指導の実績
学校向けの造園の実技指導

旧上山農業高等学校(上山明新館高等学校)にて造園を学び、卒業後に造園関係の企業2社で経験を積み、現在に至ります。元々、父親が林業関係の仕事をしていたこともあり、植物にも興味を持っていたそうです。何もないところから植栽し、石積みや花により庭を造り上げていく工程に面白みが芽生え、技能を磨き続けています。その後、「ものづくりマイスター等事業」が始まった際に認定を受けました。
プログラム内容
実施課題 造園
目  的 造園の実技指導
受講対象 農業環境科2年生25名、造園研究メンバー3年生3名
  • 第1回
  • 技能検定3級の課題を用いた道具及び材料の説明
  • 第2回
  • 竹の切り方とイボ結びの練習
  • 第3〜4回
  • 造園圃場の整地及び整備
  • 第5回
  • 親柱の天端の切断練習及び柱立て
  • 第6〜7回
  • 立子と胴縁の設置、イボ結び(裏綾掛け、裏二の字)
  • 第8回
  • 縁石、敷石の設置
  • 第9回
  • 縁石、敷石の設置、竹垣の設置、立子と胴縁の設置、
    イボ結び(裏綾掛け、裏二の字)
  • 第10回
  • 竹垣の設置、親柱、立子と胴縁の設置、
    イボ結び(裏綾掛け、裏二の字)
山形県立村山産業高等学校

〒995-0011 山形県村山市楯岡北町1-3-1

設 立 年 平成26(2014)年
学 校 長 青柳晴雄
学  科 農業科(農業経営科・農業環境科)、工業科(機械科・電子情報科)、商業科(流通ビジネス科)
在校生数 420名(令和3年1月現在)