テクノロジーが進化しても必要とされ続ける
機械を駆使した技能の継承
危険な機械を使用しているという、自覚をもつことが大切
機械加工では、様々な工作機械を扱うと思いますが、経験のない生徒たちに指導を行うにあたり心掛けたことはありますか。また今回受講しようと考えたきっかけを教えてください。
田原 実技指導で私がまず意識したことは、生徒たちに怪我をさせないことです。工作機械には、今回指導で使用した「旋盤」といわれる円柱状の工作物を回転させて加工する機械をはじめ、危険な機械がたくさんあります。時には、作業中に加工で削ったものが飛んでくる可能性もあるため、技能を習得する以前に、作業する時の位置や姿勢などをしっかりと生徒たちに教えるよう心がけました。
百田 一般的な工業高校とは異なり、本校の工業技術科では1年生で土木・機械・電気の勉強をひと通り行い、2年生から土木・機械・電気の各コースに分かれます。2年生になった私は、機械コースに進みました。機械加工については初めての挑戦でしたが、1年生の時に各分野の基礎知識を学んだことを土台に、専門知識や技能をより深く学びたいという思いで、田原マイスターの実技指導を受講しました。
まずやって見せることで、生徒たちの理解度を高める
実技指導の中では、どのようなプログラムを組みましたか。また、受講された生徒の方はその中で得られたことなどの感想をお聞かせください。
田原 実技指導では、旋盤を使用した「ねじ切り加工」を行いました。まず私が実演しながら説明を行うなど、初めて実技を行う生徒たちが理解しやすいように作業手順を含めたプログラムを組みました。社会に出れば、図面を見ながら作業を行うため、作業手順を追って機械加工を施すことは実践に近いといえます。時間が限られていましたが、受講した生徒たちは素直に聞いてくれたため、誰も怪我などすることなく、スムーズにプログラムを進めることができました。
百田 私は、これまで機械加工を行ったことがなかったため、新しいことに挑戦するという思いで受講しました。田原マイスターが優しく指導してくださったことで、安心して作業に集中することができたと感じています。指導内容は、旋盤の基本作業から実演を交えて教わりながら、分からない箇所があれば、その都度確認するというものです。マイスターは私たちが常に質問しやすい雰囲気を作ってくださったので、疑問をすぐに解消しながら進めることができました。
機械にも勝る技能の継承を途切れさせないために
機械加工の分野もコンピュータ化が進んでいますが、人の手によって磨かれてきた技能の将来について、どのような想いを持たれていますか。それぞれお聞かせください。
田原 今は、コンピュータによる制御など、テクノロジーがどんどん発達しています。ボタンを押せば加工ができてしまう時代、熟練の技が途絶えてしまうという懸念もあります。長きに亘り培われてきた技能は日本の誇りでもあり、途絶えさせてはいけないと感じています。そのためこれからも実技指導を通じて、生徒たちの喜びと、自信に繋がるものづくりを大切にしていきたいと思います。機械にはできない人の手による繊細な技能を継承していくためにも、若手の育成に尽力していきたいです。
百田 田原マイスターの機械加工を実際に見ることができて、その加工精度の高さに感動しました。また、常にメモを取ることの大切さなど実技以外の学びも多くあり、学校の勉強だけでは得られない、社会を生きる力も田原マイスターに教えていただきました。今後は、これまでの実技指導で学んだ知識と技能を活かし、旋盤の加工に磨きをかけていくことを目標に練習を重ねていきます。卒業後は、田原マイスターのように機械加工の仕事に就き、将来社会で自分が活躍することで、本校の後輩たちの道標になりたいと思っています。
大分県立佐伯豊南高等学校
工業技術科2年生
百田
大紀
さん