機械加工

指導先:大分県立佐伯豊南高等学校(大分県)

ものづくりマイスター:田原 光夫さん

大分県立佐伯豊南高等学校

佐伯鶴岡高校と佐伯豊南高校が発展的に統合し、平成26年4月に開校した学校です。食農ビジネス科・工業技術科・福祉科・総合学科の4学科で構成されており、高い専門知識や技能を身に付けることができます。進学・就職の両面に強い教育システムの充実などを目標に、生徒一人ひとりの進路実現を目指します。

実技指導を依頼した背景

座学では教えられない技能習得の方策として「ものづくりマイスター等事業」を活用

これまでは、私たち工業技術科職員が生徒たちの指導を行っていましたが、座学では教えきれない技能面の育成が困難でした。その課題の解決策として私の前任校(工業高校)でも「ものづくりマイスター等事業」を活用し、技能習得において良い成果をあげられた経験があったことから、本校でもものづくりマイスターによる実技指導を行い、生徒たちに機械加工の面白さを体験させてあげたいと考え依頼させていただきました。

実技指導を受けたことによる効果

安全第一という基本スタンスを徹底

機械加工の指導を行うにあたり、まず田原マイスターが重要視したことは“安全第一の徹底”です。怪我をしてしまえば元も子もないですから、知識や技能を磨く前に最も大切なものづくりのスタンス(姿勢)をしっかりと教えていただきました。実技指導では、生徒たちがトライ&エラーを繰り返しながら、自らの力で課題を解決できる力を養うという教え方が特徴的でした。また、生徒たちとも積極的にコミュニケーションを図ることを大切にされ、生徒たちとの関係作りも早々に出来ていました。

大分県立佐伯豊南高等学校
工業技術科 実習教諭

石田 いしだ 義徳 よしのり さん

テクノロジーが進化しても必要とされ続ける
機械を駆使した技能の継承

危険な機械を使用しているという、自覚をもつことが大切

機械加工では、様々な工作機械を扱うと思いますが、経験のない生徒たちに指導を行うにあたり心掛けたことはありますか。また今回受講しようと考えたきっかけを教えてください。

田原 実技指導で私がまず意識したことは、生徒たちに怪我をさせないことです。工作機械には、今回指導で使用した「旋盤」といわれる円柱状の工作物を回転させて加工する機械をはじめ、危険な機械がたくさんあります。時には、作業中に加工で削ったものが飛んでくる可能性もあるため、技能を習得する以前に、作業する時の位置や姿勢などをしっかりと生徒たちに教えるよう心がけました。

百田 一般的な工業高校とは異なり、本校の工業技術科では1年生で土木・機械・電気の勉強をひと通り行い、2年生から土木・機械・電気の各コースに分かれます。2年生になった私は、機械コースに進みました。機械加工については初めての挑戦でしたが、1年生の時に各分野の基礎知識を学んだことを土台に、専門知識や技能をより深く学びたいという思いで、田原マイスターの実技指導を受講しました。

まずやって見せることで、生徒たちの理解度を高める

実技指導の中では、どのようなプログラムを組みましたか。また、受講された生徒の方はその中で得られたことなどの感想をお聞かせください。

田原 実技指導では、旋盤を使用した「ねじ切り加工」を行いました。まず私が実演しながら説明を行うなど、初めて実技を行う生徒たちが理解しやすいように作業手順を含めたプログラムを組みました。社会に出れば、図面を見ながら作業を行うため、作業手順を追って機械加工を施すことは実践に近いといえます。時間が限られていましたが、受講した生徒たちは素直に聞いてくれたため、誰も怪我などすることなく、スムーズにプログラムを進めることができました。

百田 私は、これまで機械加工を行ったことがなかったため、新しいことに挑戦するという思いで受講しました。田原マイスターが優しく指導してくださったことで、安心して作業に集中することができたと感じています。指導内容は、旋盤の基本作業から実演を交えて教わりながら、分からない箇所があれば、その都度確認するというものです。マイスターは私たちが常に質問しやすい雰囲気を作ってくださったので、疑問をすぐに解消しながら進めることができました。

機械にも勝る技能の継承を途切れさせないために

機械加工の分野もコンピュータ化が進んでいますが、人の手によって磨かれてきた技能の将来について、どのような想いを持たれていますか。それぞれお聞かせください。

田原 今は、コンピュータによる制御など、テクノロジーがどんどん発達しています。ボタンを押せば加工ができてしまう時代、熟練の技が途絶えてしまうという懸念もあります。長きに亘り培われてきた技能は日本の誇りでもあり、途絶えさせてはいけないと感じています。そのためこれからも実技指導を通じて、生徒たちの喜びと、自信に繋がるものづくりを大切にしていきたいと思います。機械にはできない人の手による繊細な技能を継承していくためにも、若手の育成に尽力していきたいです。

百田 田原マイスターの機械加工を実際に見ることができて、その加工精度の高さに感動しました。また、常にメモを取ることの大切さなど実技以外の学びも多くあり、学校の勉強だけでは得られない、社会を生きる力も田原マイスターに教えていただきました。今後は、これまでの実技指導で学んだ知識と技能を活かし、旋盤の加工に磨きをかけていくことを目標に練習を重ねていきます。卒業後は、田原マイスターのように機械加工の仕事に就き、将来社会で自分が活躍することで、本校の後輩たちの道標になりたいと思っています。

大分県立佐伯豊南高等学校
工業技術科2年生

百田 ももた 大紀 だいき さん

ものづくりマイスター
田原 たはら 光夫 みつお さん

平成25年度厚生労働省「ものづくりマイスター(機械加工職種)」認定

技能指導の実績
学校向けの機械加工(普通旋盤)の実技指導

平成15年頃より工業系の学校から依頼を受け実技指導を実施。「ものづくりマイスター等事業」が始まったのを機に、平成25年にマイスターの認定を受け、活動されています。
プログラム内容
実施課題 機械加工
目  的 機械加工(普通旋盤)の実技指導
受講対象 工業技術科2年生12名
  • 第1回
  • 技能検定3級レベルの旋盤の取扱い方とバイトの説明
  • 第2回
  • 技能検定3級レベルの荒加工の切込みと測定具について
  • 第3回
  • 技能検定3級レベルの仕上げ加工の切込みについて
  • 第4回
  • 技能検定3級レベルの材料コーナー部の仕上げ方について
  • 第5回
  • 技能検定3級レベルの工程図の読み方と回転速度について
  • 第6〜7回
  • 高校生ものづくりコンテスト旋盤作業部門の課題について
大分県立佐伯豊南高等学校

〒876-0012 大分県佐伯市大字鶴望2851-1

設 立 年 平成26(2014)年
学 校 長 半田 智哉
学  科 食農ビジネス科、工業技術科、福祉科、総合学科
在校生数 516名(令和2年4月現在)