配管

指導先:沖縄県立南部工業高等学校(沖縄県)

ものづくりマイスター:比嘉 良美津さん

沖縄県立南部工業高等学校

沖縄県南部地域にある工業高校で、機械科、電気科、建築設備科の3学科で構成されています。校訓は「和衷協力 自主自立 創意工夫」、また校章にある歯車は工業高校の生徒・職員の融和した集合体を表しています。技能向上はもちろん、勉学や部活動にも力を入れています。

実技指導を依頼した背景

校内の配管の設備を活かし、学校だけでは学べない社会に出てから役に立つ技能を習得させたい

沖縄県内で建築配管に関する設備を整えた工業高校は、当校と沖縄県立美里工業高等学校の2校しかありません。当校の生徒たちの多くは、卒業後、進学ではなく就職を希望する生徒が多いため、生徒たちには当校の恵まれた環境で社会に出てからも役立つ将来を見据えた技能を習得させたいと考えていました。そこで、教員の指導だけでなく、新たに熟練のものづくりマイスターに現場に即した技能指導や技能の情報等について指導していただくよう依頼しました。

実技指導を受けたことによる効果

実践的な技能を習得する環境をつくることができた

比嘉マイスターは依頼どおり、現場で役立つ技能が学べるよう、指導をしてくださいました。これまで本校の生徒たちは技能検定をはじめとする各種資格試験に挑戦してきましたが、資格を取得しても、技能・技術を現場でどう活かすことができるのかが分からないということがありました。しかし比嘉マイスターにご指導をいただき、現在では、現場で働く際にきちんと活かせる実践的な技能が身に付いたのではないかと感じています。また、比嘉マイスターは美里工業高校でも指導を行っておられることから交流が始まり現在では、美里工業高校と技術交流会を定期的に開催しています。比嘉マイスターの実技指導は、生徒たちの技能の向上という成果はもちろんのこと、美里工業高校とのつながりを作ってくださったことなど、想定していなかった効果が生まれ、大変感謝しています。

沖縄県立南部工業高等学校
建築設備科
(設備工学コース)教諭

友利 ともり 輝則 あきのり さん

作品を自ら評価させる指導が
生徒たちの「自分の頭で考える力」を養う

評価を通じて原因を探り、生徒に自信をつけさせる実技指導

今回の生徒への指導に際して、特に何か大切にされていたことはありますか。また、比嘉マイスターからの指導を受けての感想を教えてください。

比嘉 南部工業高校での指導を始めて一番気になったことは、生徒の皆さんの自己肯定感の低さです。そのため、私は生徒が自分の頭で考え、行動した結果、他者から評価されるというサイクルを作ることに着手しました。したがって、採点表も「自分の頭で考える力」と「自己肯定感」の両方に重きを置き、受講者が自らの作品を評価する、また自分の努力や技能を他者に認められる場を作るということを大切にしました。物事には必ず原因があります。採点表による自分の作品への評価を通じて、失敗や成功がどのような原因から起きたのかということを考え、自分の自信に繋げていければよいと思います。

池間 学校の先生からも授業で建築配管について教えてもらうことがありましたが、比嘉マイスターの指導では、実際の現場での作業が目に浮かぶようでした。マイスターは、僕たちが学校での学びでは得られないことを、現場の目線で教えてくださいました。そのようなこともあって、僕を含め、クラスメイトたちも普段の授業より集中していたように思います。

実際の業務をイメージしやすくする工夫、学年毎の段階を踏んだ指導

実際にどのような指導をされたのでしょうか。具体的に教えてください。また、生徒の方はどのようなことが印象に残っていますか。

比嘉 南部工業高校での実技指導は、今年で7年目になります。建築設備科の1年生から3年生まで全学年の指導を行っていますので、学年ごとに1年時には技能検定3級レベルの技能を習得してもらい、その次には2級レベルの技能をといった具合に、段階的な指導を行っています。技能についての指導は、言葉で教えたり紙面上で見せたりしても、中々イメージが湧くものではありません。そこで、カット模型を作り、実技指導以外の講義でも実際の作業がイメージしやすくなるようにし、自らがどのように作業すればよいかを考えられるようにしました。

池間 「練習のときにも本番のように緊張感を持って取り組むことが大切だ」と教えていただいたのが特に印象に残っています。これは僕たちが安全に怪我なく実習に取り組むためということに加え、技能向上のためであると伺いました。僕は将来、ここで学んだことを活かして就職したいと考えているので、技能を磨くことは将来に直結する大切なことです。比嘉マイスターの言葉で、これまで以上に、社会人になることへの意識が芽生え、実技指導においてはもちろんのこと、普段の授業にも真剣に取り組めるようになったと感じています。

人と社会を支える建築配管の技能に誇りを持って欲しい

比嘉マイスターの考える「配管」の魅力を教えてください。また、生徒の方は、今回マイスターの指導を受けて将来どのようなことをしたいとお考えですか。

比嘉 日本は災害が多い国です。ここ数年を振り返るだけでも、何度も大きな震災に見舞われ、マスメディアでは「インフラの確保」ということがいつも報じられていました。このインフラの整備に必要となるのが建築配管の技能です。人が生きていくために必要な水の運搬を、建築配管は司っているからです。このように、建築配管の技能が人と社会を直接支えているという誇りを持って、生徒の皆さんには是非この技能を活かした進路を選んで欲しいです。そのためにも、指導先の先生方と情報や教材について密に話し合いを行いながら、今後も沢山の若い方々の技能と「自分の頭で考える力」の向上を手助けしたいと考えています。

池間 僕は入学した頃、建築配管について一切知識がありませんでした。そのような僕が、ここまで技能の習得に真剣に取り組むことができたのは、比嘉マイスターや先生方が、1つ課題を乗り越えればまた次の課題と、達成感を味わえるよう段階的にご指導くださったからだと思います。高校卒業後は、大学で建築配管やその他の技能について学ぶつもりですが、最終的には学んだ技能を沖縄県内で活かしていきたいです。

沖縄県立南部工業高等学校
建築設備科3年

池間 いけま 周太 しゅうた さん

ものづくりマイスター
比嘉 ひが 良美津 よしみつ さん

平成25年度 厚生労働省「ものづくりマイスター(配管職種)」認定
平成26年度 厚生労働省「ものづくりマイスター(冷凍空気調和機器施工職種)」認定 

技能指導の実績
企業、組合及び学校向けの建築配管の実技指導
学校向けの冷凍空調配管作業の実技指導

職業訓練指導員として34年間、また、沖縄県の技能検定委員を20年間務め、海外職業訓練プロジェクトへの参加経験もある比嘉マイスター。定年退職時に、建築配管をはじめとする建設技能者の人手不足を解決したいと考えていたところ、沖縄県技能振興コーナーからの案内で、平成25年にものづくりマイスターの認定を受け、現在まで指導を続けています。
プログラム内容
実施課題 建築配管
目  的 建築配管の基礎知識や技能向上のための実技指導
受講対象 建築設備科3年生9名
  • 第1回
  • 原寸図の作成、管加工基本作業の確認
  • 第2回
  • 鋼管基本課題に対応した鋼管の作成
  • 第3回
  • 塩ビ管基本課題に対応した塩ビ管の作成
  • 第4回
  • 銅管基本課題に対応した銅管の作成
  • 第5回
  • 技能検定(2級)レベルの課題に対応した製作物の作成
沖縄県立南部工業高等学校

〒901-0402 沖縄県島尻郡八重瀬町字富盛1338番地

設 立 年 昭和45(1970)年
学 校 長 宮里 哲
学  科 建築設備科、機械科、電気科
在校生数 231名(令和2年5月現在)