作品を自ら評価させる指導が
生徒たちの「自分の頭で考える力」を養う
評価を通じて原因を探り、生徒に自信をつけさせる実技指導
今回の生徒への指導に際して、特に何か大切にされていたことはありますか。また、比嘉マイスターからの指導を受けての感想を教えてください。
比嘉 南部工業高校での指導を始めて一番気になったことは、生徒の皆さんの自己肯定感の低さです。そのため、私は生徒が自分の頭で考え、行動した結果、他者から評価されるというサイクルを作ることに着手しました。したがって、採点表も「自分の頭で考える力」と「自己肯定感」の両方に重きを置き、受講者が自らの作品を評価する、また自分の努力や技能を他者に認められる場を作るということを大切にしました。物事には必ず原因があります。採点表による自分の作品への評価を通じて、失敗や成功がどのような原因から起きたのかということを考え、自分の自信に繋げていければよいと思います。
池間 学校の先生からも授業で建築配管について教えてもらうことがありましたが、比嘉マイスターの指導では、実際の現場での作業が目に浮かぶようでした。マイスターは、僕たちが学校での学びでは得られないことを、現場の目線で教えてくださいました。そのようなこともあって、僕を含め、クラスメイトたちも普段の授業より集中していたように思います。
実際の業務をイメージしやすくする工夫、学年毎の段階を踏んだ指導
実際にどのような指導をされたのでしょうか。具体的に教えてください。また、生徒の方はどのようなことが印象に残っていますか。
比嘉 南部工業高校での実技指導は、今年で7年目になります。建築設備科の1年生から3年生まで全学年の指導を行っていますので、学年ごとに1年時には技能検定3級レベルの技能を習得してもらい、その次には2級レベルの技能をといった具合に、段階的な指導を行っています。技能についての指導は、言葉で教えたり紙面上で見せたりしても、中々イメージが湧くものではありません。そこで、カット模型を作り、実技指導以外の講義でも実際の作業がイメージしやすくなるようにし、自らがどのように作業すればよいかを考えられるようにしました。
池間 「練習のときにも本番のように緊張感を持って取り組むことが大切だ」と教えていただいたのが特に印象に残っています。これは僕たちが安全に怪我なく実習に取り組むためということに加え、技能向上のためであると伺いました。僕は将来、ここで学んだことを活かして就職したいと考えているので、技能を磨くことは将来に直結する大切なことです。比嘉マイスターの言葉で、これまで以上に、社会人になることへの意識が芽生え、実技指導においてはもちろんのこと、普段の授業にも真剣に取り組めるようになったと感じています。
人と社会を支える建築配管の技能に誇りを持って欲しい
比嘉マイスターの考える「配管」の魅力を教えてください。また、生徒の方は、今回マイスターの指導を受けて将来どのようなことをしたいとお考えですか。
比嘉 日本は災害が多い国です。ここ数年を振り返るだけでも、何度も大きな震災に見舞われ、マスメディアでは「インフラの確保」ということがいつも報じられていました。このインフラの整備に必要となるのが建築配管の技能です。人が生きていくために必要な水の運搬を、建築配管は司っているからです。このように、建築配管の技能が人と社会を直接支えているという誇りを持って、生徒の皆さんには是非この技能を活かした進路を選んで欲しいです。そのためにも、指導先の先生方と情報や教材について密に話し合いを行いながら、今後も沢山の若い方々の技能と「自分の頭で考える力」の向上を手助けしたいと考えています。
池間 僕は入学した頃、建築配管について一切知識がありませんでした。そのような僕が、ここまで技能の習得に真剣に取り組むことができたのは、比嘉マイスターや先生方が、1つ課題を乗り越えればまた次の課題と、達成感を味わえるよう段階的にご指導くださったからだと思います。高校卒業後は、大学で建築配管やその他の技能について学ぶつもりですが、最終的には学んだ技能を沖縄県内で活かしていきたいです。
沖縄県立南部工業高等学校
建築設備科3年
池間
周太
さん