グッドスキルマーク

技 GOOD SKILL

事例

19

2021

100年を超える記録を現代に復元する表具師

令和元年度 認定
掛軸、屏風、ついたて、
巻子、画帖、額、襖

首藤内装
(文弘堂)

首藤しゅとう 弘一こういちさん(写真右)

首藤しゅとう 弘樹ひろきさん(写真中央)

首藤しゅとう 真典まさのりさん(写真左)

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首藤 弘一(しゅとう こういち)さん
昭和56年創業の首藤内装(文弘堂)で代表を務める。昭和59年度1級技能検定表装(表具作業)に合格。その他表装(壁装作業)にも合格、昭和58年職業訓練指導員(表具科)。

首藤 弘樹(しゅとう ひろき)さん
昭和56年創業の首藤内装(文弘堂)で副代表を務める。一般社団法人文化財保存修復学会会員。平成7年度1級技能検定表装(表具作業)に合格、その他表装(壁装作業)・内装仕上げ施工(プラスチック系床仕上げ工事作業)・内装仕上げ施工(カーペット系床仕上げ工事作業)に合格、平成7年・8年職業訓練指導員(表具科・インテリア科)、平成26年ものづくりマイスター、平成8年、平成11年技能グランプリ(表具)にて敢闘賞を受賞。技能検定委員。

首藤 真典(しゅとう まさのり)さん
平成28年入社。令和3年度1級技能検定表装(壁装作業)に合格。

劣化の進む表具を修繕する細かな手技

「首藤内装(文弘堂)」は、大分県佐伯市で内装仕上げを中心とした事業を行っています。「内装仕上げ」と聞くと、壁紙やクロスの施工・修繕を想像する方も多いと思いますが、私たちが携わる仕事は多岐に渡ります。最近、増えているのは、「表具」と呼ばれる布や紙を使用した仕立て品の修復です。表具とは、家屋で使われる襖や屏風、掛軸、額、衝立、そのほか画帖、和綴本、巻子などの古文書や歴史文献を指します。ご依頼品の中には文化財も含まれており、それらを任せられる「表具師」は県内そして全国的にも少なく、様々なご依頼をいただきます。掛軸の裂地補修、屏風のシミ抜き、和綴本の虫食い塞ぎ、など修復物やその状態も様々です。描かれた絵がほぼ消失しているものや、劣化により素地が弱くなったものもあります。修復する際は、水でじっくりほぐしたり、丸包丁(たち包丁)で薄さ数ミリに切り分けたり、目の細かい刷毛でゆっくり糊を塗ったり、と表具の状態にあわせた修復を行います。数百年以上前の表具は、非常に質の高い仕事が施されており、当時の職人の優れた技が伝わってきます。紙の継ぎ方など、現在ではなかなか再現できない方法を用いて制作されているため、私たちが復元する際にはなるべく現物回帰できるように、細かく見定めながら作業を行っています。

吟味した材料と道具で作品を未来に残す

修復作業で重要視しているのは、材料と道具です。材料は主に、糊、和紙、水などがあげられ、修復する文化財などに「どんな糊が使われていたか」、「和紙は誰が漉いたものか」、「水はどの水源のものか」、一つひとつ確認し、材料を吟味しなければ、作品に悪影響を及ぼすため、特にこだわっています。道具に関しては、刷毛、ヘラ、鋏、鋸、小刀、丸包丁(たち包丁)、針、糸を用途に合わせて使い分けができるように、多いものでは数十種類揃え、作品にストレスを与えないようにしています。ときには、使い勝手の良い道具が見つからないこともあるため、道具を自作することもあります。

表具作業、中でも修復に用いる器工具や糊などの接着剤の選定は、デリケートな表具品の状態に大きく影響を与えます。末永い保存を目指した高度な修復作業を行うための材料と道具を見極めることは、1級技能の中でも特に大切であると考えています。

文化財修復をしている中で危惧しているのは、地方自治体が所有する作品、県及び市町村の指定品など、未来に残すべき価値ある表具の劣化が進んでいることです。このままでは修復不可能な状況にもなりかねず、修復のご依頼をいただいた際は各自治体の学芸員さんと一緒に修復を進めています。私たち表具師の役割は、作品を後世へと引き継ぐ「パイプ役」だと考えています。作品は時代を切り取った「記録」であり、たくさんの情報を得られる貴重なものです。それらを次の時代に残していく役目こそが、私たちの仕事であり、いかに本来の姿に近づけられるか試行錯誤することが、大きなやりがいであると感じています。

こだわりの古糊

糊は、修復作業でも最も重要かつ、作品に影響を与えやすいため、1級技能の知識をさらに応用して工房で自作しています。一年で最も気温が低く空気中の雑菌が少ない「大寒の日」には、毎年、糊づくりを行います。小麦でんぶん粉を30分以上弱火でじっくり炊き上げ、艶のある半透明〜乳白色の状態まで煮込んだ糊は、その後10年以上、「古糊」の状態になるまで寝かせます。熟成することで、使用した際にふんわりとした仕上がりになり、また、作品自体が呼吸しやすく、劣化防止につながります。

技能検定

表装(表具作業)

表装(表具作業)は、絵や書などを裂(布)・紙など糊を使い仕上げる作業をいい、掛軸、額、屏風、襖などを表具品といいます。表具品の制作に必要な技能・知識と併せて表装一般、材料、意匠図案、色彩、建築概要、関係法規、安全衛生などに関する知識を対象としています。

首藤 弘一・弘樹・真典/首藤内装(文弘堂)

〒876-0807 大分県佐伯市田の浦町5-15
TEL 0972-22-5823
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