平成29年度
製造業
めっき
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日用品から、ハイテク機器まで
あらゆる物がめっきをまとっている
サビ止めや装飾品だけでなく、スマートフォンやパソコン、半導体などに不可欠なめっき加工。機械部品の硬度、潤滑性、耐熱性の向上、食器の抗菌性の向上など、あらゆる用途で使われています。さらに、めっきの技術は地質・海洋分野といった新産業にも活用されるなど、新たな可能性が期待されています。
技能者の紹介
技能者の紹介
ジャスト株式会社
開発部ダイヤ電着課
鈴木 卓さん
(29歳)入社4年目
入社したきっかけ
入社した
きっかけ
その意志は
ダイヤモンドのようにカタかった。
私は学生時代、工学部で金属の表面処理を学んでいました。この分野が好きだったので、志望していたのは、表面処理技術を扱う会社。就職氷河期で苦戦しながらも、なんとか念願どおりの仕事に就くことができました。
しかし、順調に働いていた矢先、突然、ニッケル・アレルギーを発症してしまったんです。そしてニッケルを使用しているその会社では、働くことができなくなりました。やむなく転職活動を始めたのですが、やはりこれまで学んだことを活かしたいという思いは変わらず、表面処理の分野しか考えられないままでいました。
そんなある日、たまたまテレビで目にした番組が「ほこ・たて対決」(金属VSドリル)で、「タングステン」という金属と、表面にダイヤモンドの加工をしたドリルではどちらが強いかを検証するものでした。結果は「ドリル」の勝利。ドリルに「ダイヤモンド電着」という表面加工を施したのが今の会社でした。その時の印象が頭から離れずにいました。しばらくして、ジャストがこの技術の研究開発の社員を募集しているのを見つけたときには、迷わず応募しましたね。
わたしの仕事
わたしの
仕事
より質の高い研究開発のために
知識を吸収していきたい。
ダイヤモンド電着は、めっきを使って、ダイヤモンドを金属に固着させる技術です。私は現在、R&Dセンターという施設で、その技術を応用した医療用器具の研究開発に携わっています。製造する器具に応じて、使用するダイヤモンドの大きさや形状が異なるのが、この仕事の難しいところ。毎回、実験を繰り返し、最適な固着の方法を模索しながら開発を進めています。また、ダイヤモンドの加工過程で機械を使用する際には、私の専門分野ではない機械系の知識や、物理学の知識が必要になります。開発した製品を生産ラインにのせるところまで考えれば、生産管理の知識も疎かにはできません。私は入社して4年目になりますが、まだまだ、知識不足を痛感しています。
知識や技術は、人に伝えることを通して、自分自身でも客観的に見えてくるように思います。現在はまだ後輩がいませんが、まず、自分の知識・技術を客観視して把握するよう努め、成長につなげていきたいです。
今後の目標
今後の目標
めっきの新たな可能性に
挑戦したい。
ひと口にダイヤモンド電着と言っても、応用方法によって、発揮する機能は様々です。例えば、ピンセットにその技術を使用すれば、高い力(つかむ力)を実現できます。きっと、まだまだ見つかっていない用途や機能がたくさんあるはず。その可能性を探求し、新たな用途や製品を産み出すことも、研究開発者の仕事です。しかし、職場でただ机に向かって考えれば、いいアイデアが出てくるというものでもありません。私はお客様や製造現場の人との会話や日々の生活の中で、無意識に「こんなことにも使えるかも」というようなヒントを探しています。
当社での仕事は私にとっては、いわゆる“仕事”とは異なるものなのかもしれません。高校時代に物理の実験にのめり込み、工学部に進学。大学では研究ばかりしていましたが、今でもその延長線上にいるような感覚で、毎日が充実しています。大げさな話ですが、ニッケル・アレルギーを発症したことも、当社にたどりつくためのプロセスだったんじゃないかと思っています。
先輩からの
メッセージ
めっきの世界には「勘どころ」という言葉がある。
当社には、20年間の経験知の蓄積によって実現された、高い技術力があります。しかし、めっきのでき具合は、季節や天候に左右される面もあり、マニュアルどおりにはいかない不安定さがあります。不具合が生じた時に、原因を瞬時に判断し、対応できるようになるには、知識や理論はもちろんのこと、失敗を乗り越え、経験を積み重ねることが大切になってきます。
一見、化学的な公式に基づいた仕事のように見えますが、職人の世界と同じように、蓄積されためっきの技術も言葉で継承していくのは難しいのです。結局はOJT※の中で試行錯誤を繰り返し、体に染み込ませ、勘どころを磨いていくしかないのかもしれません。その大変さが、同時に、この仕事の面白さでもありますね。
※OJT:「On-The-Job Training」の略称。「職場内訓練」と訳され、現場で実際に仕事を進めながら、上司や先輩が部下に必要な知識やスキルを教え、身につけさせるものです。
ジャスト株式会社
めっきは多様な分野・製品に応用されるもの。お客様から相談があれば、その方が、どんな製品のためにめっきの技術を使おうとしているのかを推測し、ニーズに的確な対応をしてこそプロフェッショナルだと考えます。だからこそ、日ごろからできる限り知見を深め、世界を広げておかなければいけません。
また、めっき技術を深化させ、その用途を拡張するためには、若い技術者が、医療、海洋、航空、半導体など幅広い分野への関心を持つこと。そして、研究開発では、自らの発想を刺激して、企画力を高めることが大切です。その発想と企画が実現したときの感動を、ぜひ味わってほしいですね。
〒999-3103 山形県上山市金谷字下河原1360
TEL 023-673-5125
http://www.yamagata-just.co.jp
http://www.udc-plating.com
ジャスト株式会社は、昭和25年の創業以来、優れためっき技術により高い評価を得てきました。特にダイヤモンド電着の分野では、常に先駆的な取り組みを行っており、今では、めっき液にカーボンナノチューブを独自配合することにより、製品の強度、熱排出性、耐摩耗性を飛躍的に向上させた「ウルティメイト・ダイヤモンド・カーボンナノチューブ(UDC)」と呼ばれる技術を開発。医療機器や、地質海洋分野といった新産業分野にも進出しています。
※ 所属・役職・年齢・入社年数は取材当時のものです。