専門家に聞く建設業界の魅力
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専門家に聞く建設業界の魅力
君たちが、この業界に新時代を築いてゆく
2020年の東京オリンピックに向けて、建設ラッシュが続く昨今、建設業界では若い人材の確保が叫ばれています。そんな時代背景において、建設現場は大きく変わろうとしています。これまで力仕事のイメージの強かった業界ですが、最近では「ドボジョ」や「けんせつ小町」と言われるように、たくさんの女性が活躍中。そんな新時代を築こうとする建設業界のこれからについて、同業界をよく知る岡村氏にお話を伺いました。
業界分析
女性の活躍が、日本の未来を救う
下の図は、日本における女性の労働力率※をグラフで表したもの。結婚や出産の時期にあたる30代で就業率が低下し、子育てが落ち着いた時期に再び上昇する。この形がアルファベットのM字に似た曲線を描くことから、「M字カーブ」と呼ばれる。
人口の高齢化に伴い、労働力の確保に苦戦しているのが日本の現状。いかに女性が仕事を続けながら家庭と両立していける労働環境をつくるか。これは建設業界だけではなく、この国が抱える大きな政策のテーマである。
※労働力率とは15歳以上の人口に占める労働力人口(就業者+完全失業者)の割合
専門家プロフィール
岡村 美好さん
プロフィール
昭和52年に、はじめての女子学生として山梨大学工学部へ入学。卒業後は山梨大学大学院修了、同大学助手、助教を経て、准教授に就任。「誰もが好きなことを仕事にしてほしい」をモットーに、自身の経験から建設業界で女性が働きやすい環境をつくるために多彩な活動を続ける。
専門分野は、構造工学・デザイン科学・福祉工学・科学教育と多岐にわたる。土木分野における男女共同参画や、ユニバーサルデザイン、福祉のまちづくりなどを、若者たちへわかりやすく伝えている。
建設の現場は今、新たなイメージを構築中。
みなさんは建設業界と聞くと、どんなイメージを思い浮かべますか?
ひと昔前は、仕事一筋で生きる職人はカッコいい、という理由で選ばれることも多くありました。もちろん変わらずに、そのスタイルに憧れを抱いてくれる人もたくさんいるでしょう。けれども若い人たちが生きる現代社会では、働くことへの価値観も変わってきています。「仕事だけではなくプライベートで趣味も楽しみたい」とか、「子育てと仕事をバランスよく両立したい」など、どちらかといえば金銭面よりも時間的な余裕がほしいという時代になりました。
ニュースなどでも、「働き方改革」というキーワードをよく目にしますよね。このように建設業界においても、労働に対する考え方は大きく変化しています。現場では、安全管理への意識はより一層高まり、業務におけるマニュアル化を推進。若手の育成も、背中を見て仕事を覚えるという風土から、組織全体でサポートしていく姿勢が強くなってきています。労働時間に関しても、タイムマネジメントが徹底され、残業時間や休暇への配慮も業界全体として行き届いてきました。就職では学生有利な市況において、ただ単に“カッコいい仕事”というだけでは選んでもらえない。どうすれば若い人たちに振り向いてもらえるか、長く働いてもらえるのか、企業側もあらゆる工夫をしながら模索しているところです。
男性のパワーだけでなく、女性のチカラが必要になる。
私が学生だった頃は、そもそも理系に女子が少なかった時代です。純粋にものづくりがしたくて、「何を学んでいこうかな」と調べていくうちにたどり着いたのが建設。当時の土木業界がまだ、男性中心だったなんてことも知らずに飛び込みました。実際に通っていた土木工学科の女子学生は、私がはじめてだったほど。世界から見ても、当時の日本の建設業界はだいぶ遅れをとっていたのかもしれません。
けれども先にお伝えしたとおり、建設業界の働く環境はここ十数年の間に急速に改善されました。最近では「ドボジョ(土木系女子の略称)」や「けんせつ小町(建設業界で働く女性の愛称)」なんて言葉が話題にのぼるくらい、現場でいきいきと働く女性を目にする機会も多くなりました。やはり力仕事の部分もありますが、精度の高い建物や社会基盤施設をつくりあげるために必要なのは、それだけではありません。器用さを求められる技術、作業工程の進捗管理、安全面への配慮など、女性ならではの視点や細やかさが活きる場面がたくさんあります。もちろん性別で決まるものではありませんが、男女のバランスが取れてくることで、これまでよりも作業がスムーズになることを実感している企業も多いことでしょう。
それを受けて、産休・育休制度や時短制度など、徐々にワークライフバランスをとりやすい環境も整ってきました。いかに、結婚・出産をしたあとでも働き続けられる職場にできるかが、企業の繁栄にも直結するほどの経営課題になっています。
街のシンボルを生みだす、壮大なものづくり。
建設業は、人間の生活文化になくてはならない仕事。みなさんの住まいをはじめ、暮らしの中心となる学校や病院、余暇を彩るレジャー施設など、どこを見回しても、この仕事の影響力を感じていただけるはずです。
建造物は、何十年先までも地図の中に残り、街のシンボルとして人々の記憶に刻まれます。そんな建設業を支え、さまざまな技能を極めていく日々は、きっと大きな達成感が得られるはず。業界に長く携わっている私ですが、いまだに「こんな壮大でロマンのあるものづくりは、他になかなかないんじゃないかなぁ」と、つくづく感じています。
実際にはどのような仕事をするのか。また、働いている人たちが、どんなやりがいや魅力を感じているのかといったお話は、このあとのインタビューページでご覧になってみてください。みなさんが未来を考えるうえで、選択肢のひとつに建設業界を入れていただけたら幸いです。古くから歴史のある仕事ですが、お伝えしているとおり、業界はまさに再構築中の段階。みなさんのような若い世代が、この業界の新時代を築いていってください。
※ 所属・役職・年齢・入社年数は取材当時のものです。