Vol.09 繊細さを研ぎ澄ました内装工事が、壁や天井の土台を造り上げていく。
内装仕上げ施工技能士 1級
鋼製下地工事作業
(平成13年度取得)
森本 喬さん
1967年生まれ
恒和工業(株)所属 (有)森本建装 代表
内装仕上げ施工技能士とは
鋼製下地工事とは、あらゆる建物の天井や壁の形を造り上げていく工事です。天井は鋼製野縁、野縁受け、つりボルト等を使用し、壁はスタッド、ランナ、スペーサ等を使用して仕上げていきます。内装仕上げ施工(鋼製下地工事作業)技能士は、そのような工事を行うための技能や知識を有する技能士です。
森本 喬さんのお仕事
森本さんは、大型複合施設や商業施設、オフィス、マンション、公共施設など数多くの現場を担当されています。現在は職長を務めることが多く、ご自身でも作業を進めながら、現場全体を取り仕切る役目も担っています。
鋼製下地工事の仕事に興味を持ったきっかけを教えてください。
父親が鋼製下地工事の親方を務めており、私が22歳のころに「仕事が忙しいから手伝ってほしい」と声をかけてもらったことがきっかけです。父を手伝う気持ちから始めた仕事でしたが、次第にやりがいを感じることが多くなり、約1年後の23歳の時に独立を決意して、自らが親方として事業を持つようになりました。
技能士資格の取得までの経緯を教えてください。
所属している会社から、鋼製下地工事の資格を紹介してもらったことがきっかけで、仕事の幅を増やすため、自身のステップアップにもつながるとの想いから資格取得を目指しました。会社から「森本さんなら大丈夫!」と推薦をしてもらえたことも励みとなりました。
私は「普段の仕事でできていない技能は、受検会場でも発揮することはできない」と思っていたので、とにかく普段の仕事の精度とスピードを向上させることを意識して取り組んでいきました。
また、実技の中には、普段は使用しない工具を扱う内容の試験もあったので、そのために仕事以外の時間も使って練習を重ねていきました。
そういった努力の甲斐もあり、平成13年に1級の資格を取得することができました。学科試験で勉強した法令などは、のちに知識として役立っていることが多いです。
1級の資格を取得して、何か変化したことはありますか?
大きく変わったことは、1級技能士を取得することによって、公共事業の受注ができるようになった点です。会社の代表として仕事を作っていかなくてはならない立場なので、公共事業を受注できるようになった点は、会社としても大きな一歩になったと思います。
また、現場の監督に今まで以上に信頼して仕事を任せてもらえるようなり、自身の中でも、「1級の名に恥じない仕事をしよう」と、より一層引き締まる気持ちで仕事に臨めています。そういったことから、1級技能士は周りからの信頼感にも、自身の成長にもつながる資格であると感じています。
お仕事の中で、特に心がけていること・気を配っていることを教えてください。
現場を取り仕切る立場としては、工期を守って仕事を進めていくことももちろんですが、私はそれ以外にもエンドユーザーの気持ちを考えて仕事をしています。
実際に自分が建物を購入する立場で見ると、たとえ1ミリのズレであったとしても、良い気持ちはしませんよね。それと同じように、建装者の立場ではなく、お客様の立場で考えて仕事をすると、間違った仕事は見逃せなくなります。
よく若手にも「自分が住みたいと思えるような内装にしよう」と声をかけていますが、その気持ちはいつまでも忘れずに、これからも良い内装を行っていきたいです。
お仕事の中で、大変なこと・苦労することがあれば教えてください。
似たような作りの現場はあったとしても、全く同じ現場はないということは、繊細な作業がゆえに大変に感じることもあります。作業的には同じことを繰り返しているように思いがちですが、それぞれの現場に合わせた細かい応用を利かせていくことが大事になってきます。
森本さんがお仕事の中で「輝いている」と感じる瞬間を教えてください。
工期や納まりの難しい現場をしっかりと予定通りに収められたときです。天井といっても真っすぐなものだけではなく、例えば結婚式場などの凝った形のものもあり、そういった難しい形の天井をうまく仕上げることができたときは、「輝いている」と感じることができます。
また、自分たちが仕上げた内装を現場の監督やお客様に褒めて頂けたときも、「良いものを造ることができた」と、達成感と喜びを感じる瞬間です。
鋼製下地工事の技能向上のために、日々努力されていることを教えてください。
発注元のお客様や現場の監督が求める理想をよく聞いて、コミュニケーションをとることを大事にしています。一人で現場を収めることはできないので、コミュニケーションや仲間との連携を向上させることが、必然的に良いものを仕上げられることにつながっています。
また、よく若手に伝えていることで、私自身にも言えることなのですが、「80%の力の継続で一日の仕事に取り組む」ということを大事にしています。80%と聞くと、若干余力を残しているように感じますが、その力を継続して一日を乗り切ることは非常に大変なことです。
80%の力で毎日こなせるようになってくると、ここ一番での100%が110%になってくれるなど、着実に力が付いてきますので、こういった日々の継続・積み重ねを大切にしています。
森本さんの今後の夢や目標を教えてください。
今後は、自分の会社を大きくしていくことが目標です。そのためには、今いる若い人にもさらに力をつけてもらって、私を超えるくらいの技能士になっていってほしいと思います。私もまだまだ歩みを止めるつもりはないので、若手と刺激し合いながら、お互いに成長していければ良いなと思います。
最後に、これから内装仕上げ施工(鋼製下地工事作業)技能士を目指す人へのメッセージやアドバイスをお願いします。
実務経験が10年以上必要な資格なので、受検するまでも大変だと思いますが、その間の仕事を真剣にこなしていれば、必ず資格取得につながってきます。これから若い人にも頑張ってもらって、もっと盛り上げていきたい業界ですので、日々の積み重ねを大事にして、ぜひ頑張ってください。
そして資格取得で満足して終わるのでなく、ステップアップの一つだと思って、その後の仕事に活かしてほしいですね。
プロの道具~内装仕上げ施工技能士編
バイスグリップ(写真左上)
材料を挟み込んで、固定するために使います。人の手だけでは押さえきれないものをしっかりと固定できるので、作業中は力強い手の一つとして活躍してくれます。
森本 喬さんのある日のスケジュール
- 8:00
- 朝礼・作業開始
- 10:00
- 小休憩
- 10:20
- 作業再開
- 12:00
- 昼休憩
- 13:00
- 作業再開
- 15:00
- 小休憩
- 15:20
- 作業再開
- 16:45
- 作業終了後、片付け
- 17:15
- 片付けが終わり次第解散