合格者の声 機械加工技能士(特級取得)中村 ひろしさん
機械加工技能士(特級取得)中村 ひろしさん(テルモ株式会社 富士宮工場)
受検するきっかけ
私は、約32年前に大学の機械工学科を卒業後、現在の会社に就職しました。当時は、金型製作チームに配属され、その約1年前に設置されたばかりのNC旋盤を担当しました。その後、NC旋盤のプログラム制作担当になって以来、金型/成形関連に携わっています。大学を出るまで、現場での経験がほとんどなかった私にとって、金型/成形加工の作業は、極めて興味深いものがあり、先輩の啓発もあって、入社6年後くらいに機械加工・数値制御旋盤作業の2級を取り、それから約4年後に1級の検定試験を受け、合格しました。
機械加工特級技能士に挑戦するきっかけとなったのは、次なるステップへの挑戦として自らが学んだ技術と経験を試してみたいと思ったことと、同僚が異職種で特級技能士となったのを知り、機械加工特級技能士に挑戦してみようと思いました。
合格に向けて取り組んだこと
機械加工・数値制御旋盤における1級までの技能検定の大まかな流れは、「図面を読む」「加工手順を決定」「工具選定・レイアウト決定」「プログラム作成」「ツール・工具設置」「切削開始」「測定・補正」となっています。ところが、特級の技能検定試験となると、様相は全く違っており、正直言ってかなり戸惑いました。
1級までは、加工技術そのもので試されましたが、特級は全くちがって工程管理や品質管理、さらには生産管理、安全衛生管理といったまさに製造現場における管理上の問題点や改善点等について、早期に見つけ出して対応することが要求されます。また、試験においては不具合対策の準備と安全作業の徹底も必須です。これらの学習には、適当な講習もなく、過去の設問をベースに独学せざるを得ませんでした。
一方、学科についても、これまでの技術一辺倒と違ってかなり戸惑いもありましたが、過去の試験問題集を繰り返し勉強したおかげで、何とかクリアできました。
技能検定受検を通して得たこと
技術習得には仕事を通じて得られるもの(OJT)と外部から得られるもの(OffJT)、そして自ら会得していくものがあります。私の場合、入社以来、先輩諸氏から一応の事は教わったものの、現実には技術習得は先輩の技を見ながら、自己研鑽で高めていくというのが現実でした。しかし、一連の技能検定受検を通して、改めて「基本の重要性」を学ぶ事ができました。また課題を設定時間内にやりきり、合格基準内の製品を作るために必要な「工夫」「作業効率」「改善」「安全」等を自ら考え、実践することができました。これまでの仕事を通じて得た技術、慣例作業に改善・改良を見つけ出す機会を得ることができ、仕事の幅が広がったと感じています。受検後は、後輩に教えていく上でも、これまでと違い基本操作の流れを説き、系統だった教え方ができるようになりました。今後は、こうした成果を踏まえて、後輩たちにできるだけ早い時期に、そしてできるだけ多くの職種検定にチャレンジしてもらいたいと思っています。
今後の目標
今後の目標として、まず第1が後輩の指導・育成です。OJTを通して基本・応用を伝え、将来を担う人材を育成することです。それぞれがさらなる高みを目指すステップの一つとして技能検定受検を推奨し、挑戦・合格の喜びを共に分かち合いたいと思います。そしてこの受検が、関連異職種等への視野を広げるきっかけになってくれればと思っています。
また、かつて仕事でフィリピンに約10年間出向き、現地で金型制作等を教えた経験がありますが、あの技術に飢えた現地の青年たちの顔が忘れられません。もし機会があれば、東南アジア等での技術の教授を願う若者たちに自分の培った技術を教えていければとも考えています。
自らは、金型/成形加工を極めるという意味で、まずプラスチック成形の特級技能士を目指していますが、最終的には技術士の資格取得も視野に入れております。そういう意味では、いくつになっても挑戦し続けていきたいと思っています。
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