現代の名工Navi
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陶磁器製造工
井上 幸次(いのうえ こうじ)
73歳
就業地: 京都府

受賞年度
2023年
所属
井上 春峰
プロフィール
煎茶道具で知られる雅号「春峰」。初代の祖父は愛知県瀬戸市で作陶をする家系に生まれ、京都で開窯した。平成9年に自身が3代目を襲名し、2代目である母の後を継いだ。幼少期から祖父や母、高い技能を持つ職人たちの技を目にして育つ。煎茶の各流家元との交流や裏千家業躰に師事するほか、近年ではガラスとやきものの密接な関係を研究すべくガラス工学博士と交流を持つなど、常に「学ぶこと」を欠かさず創作に打ち込んでいる。
※年齢・所属はいずれも表彰時のものです。
技能の紹介
三代、100年にわたり煎茶道具の作陶をする家の当代である。煎茶愛好家で、氏の雅号「春峰」を知らない人はいないと言っても過言ではない。氏は、絵付け作業は専門職にゆだねるが、その絵のデザイン、成形に関するすべての作業、焼成までの一貫した工程で伝統的技法を駆使し、現在の陶芸界で使用されるほぼすべての技法で、作品を作り出すことが出来る数少ない職人である。さらに、ガラス工学を作陶に応用する勉強会を開催するなど、自身の研究を後進へ伝える活動も行っている。

仕事に対する思い
お茶の世界では流派により注文は様々で、オリジナルな一品ものもたくさん作りました。ろくろを使ったり、ひねりで作ったり、石膏の型物だったりと多様な注文のおかげで作陶における殆どの技法が身に付きました。実際には事業所内で専門の職人たちと分業しながら製作していきますが、それぞれの技能に精通していなければ統括としての役目を果たせません。絶え間なく学ぶことは苦労ではありますが、身に付いたら嬉しいです。苦労と喜びは裏表の関係ですが、苦労より喜びのほうが大きかったと思います。古い伝統技能を継ぎつつ新しい工夫を入れていく、「今日作るものが明日の伝統になる」ということを胸に、日々の仕事に取り組んでいます。

名工からのメッセージ
これから始める方は2つに分かれると思います。伝統を守っていく方と自分の感性を表現していく方です。いずれも魅力ではありますが、今は修行する場がなかなかありません。美術系学校卒業直後から仕事を始める人もいますが、勉強の場がないと聞きます。ただ、この世界では「見る場」は豊富にあります。一流の作家が作ったものを見て感動し、作ってみたいと好奇心を抱き、挑戦してみるというのは大切なことです。「うつしもの」は単なる模倣ではなく、その作品がどうやって作られたのかを想像しながら自分のなかで咀嚼し自らの力で再現していくということです。それは、このうえない修行になると思います。

この技能を学ぶために役立つ訓練機関や習得法など
京都府立陶工技術専門校がおすすめです。また、美術館や工芸館、陶器市、デパートなどでいろいろな作品を見て作り方を想像するのもいい勉強法だと思います。
これまでの主な表彰歴
・京都府伝統産業優秀技術者表彰 (令和2年11月)
・近畿経済産業局長表彰 (令和元年11月)