Vol.05 チャレンジ精神と探究心を忘れず、難しい加工も楽しんで挑戦する。
機械加工技能士 1級
普通旋盤作業/フライス盤作業
(平成12年/平成25年度取得)
谷口 敦さん
1972年生まれ
株式会社タンケンシールセーコウ製造部製造課係長
機械加工技能士とは
機械加工とは、旋盤、フライス盤、ボール盤などの各種工作機械や切削工具を用いて、金属材料を加工する作業。切削加工、研削加工などのさまざまな手法があります。機械加工技能士は、そのような工作機械による金属加工を行うための技能・知識を対象としています。
谷口 敦さんのお仕事
谷口さんは「メカニカルシール」という工業製品の加工・製造に携わっています。主に「普通旋盤」「フライス盤」といった工作機械を使用して製品の加工を行います。これらの工作機械はコンピューター制御のものに比べて、手作業に頼る部分が大きいため、高度な技能と経験が求められます。
谷口さんが技能士の資格を取得されたきっかけを教えてください。
「自分の技能を試す"腕試し"をしてみよう」と考えたのが受検のきっかけです。入社後しばらくしてから普通旋盤作業2級を取得し、その後数年を経て、普通旋盤とフライス盤、2つの作業で1級を取得しました。
私は職業訓練校で機械加工の技能を学びました。学校では「この道具を使って作業してください」とあらかじめ指定されますが、技能検定では「どの道具を使うのか」「なぜその道具を選んだのか」など、自分の頭で考えて課題に取り組む必要があります。これまでの意識が切り替わる、いいきっかけにもなりました。
合格に向けてどのような努力をされましたか?
作業工程を徹底的に分析し、一番効率の良いやり方を見つけ、それをマニュアル化しました。作業・練習の中で困ったことや発見したことがあれば、それを書き出しておき、改善策を考えるのです。この方法で無駄な作業がなくなって、余裕を持って仕事に取り組めるようになり、実技試験本番でも時間が余ったのを覚えています。
技能士の資格を取得して良かったことはありますか?
「1級技能士」というと客観的な実力の証明になるので、社内外からの信用につながりました。また技能士という称号を手に入れたことで、「その名に恥じない仕事をしなければいけない」という強い自覚と責任感も生まれました。
お仕事でやりがいを感じるのはどんなときですか?
技術的に難しい製品や、緊急対応が必要な製品を加工しているときです。そのような作業は、納期が迫っている中で行われることが多く、失敗するとそれまでの工程が台無しになってしまうので、プレッシャーも非常に大きくなります。しかし、そんな責任が大きい仕事を任されるということは、周囲からの信頼の証でもある。「頼りにされている」と思うと"職人魂"に火がつき、期待に応えたくなります。
お仕事の中で谷口さんが心がけていることを教えてください。
探究心を忘れないことです。企業で働く職人や技術者にとっては非常に大切なことだと思います。
例えば企業の中で働く以上、利益追求は欠かせないことなので、製造工程においても「いかにコストダウンできるか?」は常に考えなければいけません。そこでの無駄を省くためにも「このやり方はどうかな?」「こっちの道具を使ってみるとどうだろう?」と、探究心を持って試行錯誤する姿勢が必要になるのです。
谷口さんが仕事の中で「輝いている」と感じる瞬間を教えてください。
難しい仕事や新しい課題に挑戦するときは、輝いていると思います。今までやったことがないチャレンジをするときは、いつも本当にワクワクするんです。初めて食べるものを目の前にして、「どんな味がするんだろう?早く食べてみたい!」と思うのと同じです。
技能というものは、自分が今まで積み重ねてきた全ての経験から生まれるもの。さらなる技能向上を目指し続ける上でも、日々新しいチャレンジを重ねていくことが大切なのだと思います。
これから技能検定を受ける人たちへのメッセージをお願いします。
技能検定は「自分が今どれくらいの技能に達しているのか」を客観的に知ることができる良いきっかけになります。
今まで触れてこなかった分野や、知識が薄かった分野についても勉強することになるので、自分の技能の枠を広げるチャンスにもなります。受検する上で培ったことは、絶対に将来の仕事にも役立つので、みなさんもぜひ、チャレンジ精神を持って受検してみてください。
プロの道具~機械加工技能士編
バイト
旋盤を用いた金属加工の際には、バイトの刃先を接触させて素材を削る。谷口さんの愛用しているバイトは、工作機械を用いて自作したもの。
谷口 敦さんのある日のスケジュール
- 8:00
- 出社・作業の準備
- 8:30
- 始業・作業開始 (工程表を確認し、仕事の段取りをイメージしてからその日の作業を行う)
- 12:00
- 昼休み
- 12:50
- 作業再開
- 15:00
- 休憩
- 15:10
- 作業再開
- 17:00
- 作業終了