Vol.06 表には出ない塗装にも手を抜かず、10年先を見据えた仕事を心がける。
塗装技能士 1級
建築塗装作業/鋼橋塗装作業
(平成20年/平成21年度取得)
塚原 正幸さん
1980年生まれ
有限会社 石川建装 所属
塗装技能士とは
塗装とは、塗料を用いて建築物などの被塗装物を塗膜で覆う作業。その目的には主として、保護、美装、機能性の付与等があります。塗装技能士は、そのような塗装を行うための技能・知識を対象としています。
塚原 正幸さんのお仕事
塚原さんは、ビルや家屋といった建物の塗装はもちろん、鋼橋などさまざまな現場での塗装を担当しています。塗装を施す下地の素材や、環境によって求められる工程は変わってくるので、それぞれの現場に適した技能の使い分けが求められます。
塚原さんが技能士の資格を取得されたきっかけを教えてください。
高校を卒業してすぐ現在の会社に就職したのですが、社長や先輩が1級資格を率先して取得していたんです。
先輩たちのそんな姿を見て、「自分も職人としてこの世界でやっていくのなら、いつか必ず取得しなければならないものだ」という認識が自然と生まれていました。
弊社で働いている多くの職人が技能士資格を取得しているので、会社全体として自然とそのような意識を共有していたのだと思います。
1級の資格を取得して何か変化したことはありましたか?
自分の仕事に自信を持つようになりました。1級技能士の名に恥じない仕事をしようというプライドも出てきましたし、取得以前と以後では仕事に向き合うメンタルがかなり変化したと思います。そういう意味では技能士の資格は「人を育てる資格なのだな」と実感しました。
また、大きな現場や難しい現場に携わる際に、現場監督から「何かあったときはあいつに頼めばリカバリーしてくれる」と信頼を得ることも多くなりました。
技能検定に向けてどのような努力をされましたか?
仕事が終わって会社に戻ってから、試験と同じサイズのベニヤ板を使って塗装の練習をしていました。みっちりやるときは3時間くらい取り組みました。
しかし、試験は毎日の地道な積み重ねの延長線上にあると考えていたので、あくまでも日々の仕事に一生懸命取り組むことを大切にしていました。その上で、自分の苦手分野を補う練習を重ねていきました。
お仕事の中で特に気をつけていることを教えてください。
私たちの仕事の細かい部分は、仕上げの"上塗り"をした時点で見えなくなることが多いんです。適当にパッと塗ってしまっても、覆い隠されて分からなくなってしまう。しかしそのようなずさんな仕事は、年数を経ると必ず露呈します。何よりも職人の仕事として、とても恥ずかしい。
そこで私は、10年先を見据えた仕事をいつも心がけています。外壁ならばちょっと厚めに塗料を塗ったり、屋内の壁は家具などがぶつかった拍子に塗料が剥げないような塗装を施す。見えない部分の工程にも絶対に手を抜かず、良好な状態を長期間保てる仕事を目指しています。
塚原さんが目指す「理想の職人像」のようなものはありますか?
どんな現場、どんな道具にも柔軟に対応できる"万能な職人"になりたいです。暇を見つけては他の職人さんから、自分の知らない技能や道具の扱い方を教わっています。
印象に残っているのは、2015年に開催された第24回全国建築塗装技能競技大会に茨城県代表として出場したときのことです。本番で普段使わない技能・道具を用いた課題が出題されたのです。しかし、以前他の職人さんから教わってた技能が役に立ち、無事に乗り切ることができました。日頃の好奇心に助けられました。
塚原さんがお仕事の中で「輝いている」と感じる瞬間を教えてください。
常に輝いています! 下積みの10年間くらいは「ツライな」と感じることも結構ありました。けれども地道に仕事を積み重ねていけば、その辛さが楽しさに切り替わる瞬間がくるのです。
例えば、前は悩んでいた作業にパッとひらめきが生まれる。厳しかった先輩が自分の一言に動いてくれるようになり「少しは認めてもらえたかな?」と嬉しくなる。今は自分が指導する立場になり、若い人とのコミュニケーションも楽しいです。毎回の現場、毎日の仕事で輝いていますよ。
これから技能検定を受ける人たちへのメッセージをお願いします。
私たち職人にとっては毎日の現場が本番ですので、大会や試験を目的にするのではなく、あくまでも日々の仕事に全力で取り組むことが合格への近道です。
もう一つ大切なのは、"お客さまの目線を自分の中に持っておく"こと。「自分がお客さんだったらこれで満足かな?」という視点があれば、気をつけるべきポイントがたくさん見えてきて、仕事が自然と丁寧になります。結果的に技能向上にもつながるのです。
そのような実践を経て、自分の技能に自信がついたならば、そのときが試験を受ける最適な時期だと思います。
プロの道具~塗装技能士編
皮すき(写真上部の道具)
塗料の缶を切って開ける道具。使い込むほど刃先が鋭利になり、使いやすくなる。
壁に飛び跳ねた塗料を削るときなど、さまざまな用途にも用いられる塗装技能士の必需品のひとつ。
塚原 正幸さんのある日のスケジュール
- 6:00
- 出社(現場が遠い場合は混雑なども考え早めに出社)
- 8:00
- 現場での全体朝礼・作業開始
- 10:00
- 休憩
- 10:20
- 作業再開
- 12:00
- 昼休憩
- 13:00
- 作業再開
- 15:00
- 休憩
- 15:20
- 作業再開
- 17:00
- 片付け
- 17:30
- 現場から撤収
- 18:30
- 会社到着・解散