Vol.12 安全で円滑な交通環境を作り出すため、意義のある路面標示を書いていく。
路面標示施工技能士 単一等級
(平成17年度取得)
力丸 直紀さん
1982年生まれ
信号器材株式会社所属
路面標示施工技能士とは
道路の路面上には車道中央線や横断歩道、停止線などのさまざまな路面標示が記されており、これによって円滑な交通や、運転者・歩行者の安全が保たれています。路面標示施工技能士は、そのような路面標示施工作業を行うための技能や知識を有する技能士です。
力丸 直紀さんのお仕事
力丸さんは、主に公共道路を担当されており、そのほかにも私道・高速道路・駐車場など数多くの現場を経験されています。新設の道路への施工作業と補修工事での施工作業があります。
路面標示施工のお仕事に興味を持ったきっかけを教えてください。
学生時代に原付バイクの免許を取るために教習所に通っていたのですが、そこで初めて標識や路面標示について勉強し、深く知れたことがきっかけです。それまでは見たことがあるだけだったものが、自身も運転する立場になったことでより身近に感じ、そして路面標示が果たしている役割の重要性に気づき、とても社会的意義のある仕事だなと感じました。
また、私の兄が同じく路面標示施工の仕事をしていたので、兄の仕事を見たり話を聞いたりすることもありました。学校の長期休暇の時などにアルバイトで手伝わせてもらったこともあり、身近で職人の技を見ることができて、この仕事により興味を惹かれました。
技能士資格の取得までの経緯を教えてください。
この職に就いてしばらくは標示を書く機械に触らせてもらえず、道具の準備や片付け、線を引く前段階の作図や下準備などで現場に関わることが多かったです。私はこの仕事をやるからには、自らの手で標示を書きたいという気持ちが強かったので、なるべく早く路面標示施工技能士の資格を取得したいと思っていました。
そのために、仕事の合間や会社に戻ってから一人で練習をする日々を積み重ねてきました。時には自分の書いた標示を職場の先輩に見てもらい、まだ足りない部分などを指導して頂くことで技能を磨いてきました。自分では出来が良いと思っていても、経験ある先輩から見るとまだまだであったりしたので、そのレベルの差を埋められるよう、繰り返し取り組んできました。
路面標示では「止まれ」という文字をよく見かけると思うのですが、慣れないとあのような曲線を引くのは非常に難しく、特に練習を重ねた部分になります。そういった努力の甲斐もあって、仕事を始めて5年目の時に技能士の資格を取得することができました。
単一等級の資格を取得して変化したこと、良かったと思うことを教えてください。
一番は自分の目標でもあった、自らの手で標示を書くということを実現できたことです。そのことを目標に下積みや練習を重ねてきたので、初めて現場で施工作業を任せてもらえた時は本当に嬉しく、今でも当時のことを覚えています。
初めて任せてもらった現場は新設の道路で、私たちの施工作業が完了したら開通されるという大事なお仕事でした。新設の道路となる何も無いところに、新たに標示を書くということで難しくもありましたが、それまでの練習のおかげで正確に書くことができました。
現場で施工機を扱って線を引くことは、資格があってこそ任せてもらえる仕事なので、取得して本当に良かったと思います。
お仕事の中で、特に心がけていること・気を配っていることを教えてください。
実際の交通がある中で仕事をすることがほとんどですので、常に気を抜くことはできません。警備やカラーコーンで守られているからといって完全に安心して仕事ができるわけではなく、最終的には自分の身は自分で守る必要があります。
そのためにも、目の前の作業に集中し過ぎないということを心がけています。常に周りの人や交通状況も気にしつつ作業をしているので、100%の集中力を使わなくても正確な標示が書けるまで技能レベルを高めることが重要です。そういった安全管理と円滑な作業進行のどちらも大事にして、仕事に取り組んでいます。
また、機械や施工材は場合によっては200度以上の温度になることもあるので、十分注意して扱っています。
お仕事の中で、大変なこと・苦労することがあれば教えてください。
路面の状況や気候に作業内容が左右されることもあり、時に苦労することもあります。基本的には同じ施工機で作業を行いますが、あまりにも路面の割れなどが酷いと施工材が流れていってしまうこともあるので、そういった場合は特殊な機械を使って対応しています。
また、接地面の温度が5度以下だと、通常の施工材で正確に施工することができないので、そのようなときは施工材の代わりにペンキを使用することで対応しています。私が現在担当している関東圏だとそういったケースは稀ですが、冬場の北海道や東北などでは状況によって材料を使い分けることが多いです。
そして一度施工すると引き直すことは難しく一発勝負の仕事でもあるので、大変である分やりがいにも感じています。引く前に必ず作図や寸法の確認を入念にしてから引くことで、ミスをなくすよう努めています。
力丸さんがお仕事の中で「輝いている」と感じる瞬間を教えてください。
これからの交通安全のために機能する重要な標示を、自らの手で書けている瞬間が一番輝いていると思います。
特に私はこの仕事に憧れを持って仕事を始め、そしてその瞬間にたどり着くまでに多くの下積み経験を重ねてきましたので、より一層思い入れがあります。
路面標示施工の技能向上のために大切なことを教えてください。
仕事内容を見て聞いて理解しても、自らやらないことには身に付かないので、目的意識を持って練習を積み重ねることが大事だと思います。
そして現場で活躍していく上では、視野を広く持つことが大切です。私は現場で作業指示を出す前には必ず「まず、周りに注意すること」と言ってから、指示内容を伝えるようにしています。どうしても慣れないうちは、指示の内容でいっぱいになって周りが見えなくなってしまうこともあるので、そうならないように注意しています。
また、技能と経験がものを言う仕事であるがゆえに、経験の浅い人が現場に入るとどうしても進行がスムーズにいかないこともあります。そういったときに、私たちが上手くサポートをして全体が円滑に進むよう努めています。
力丸さんの今後の夢や目標を教えてください。
現在所属している会社は各地方に営業所があるため、活動できる地域が多いです。そのため、これまでに行ったことがない地域を担当することがあるかもしれませんが、それぞれの場所の安全・円滑な交通環境を作り出すためにさらなる貢献をしていきたいと思います。そして、難しい現場でも頼られる人間になっていきたいです。
最後に、これから路面標示施工技能士を目指す人へのメッセージやアドバイスをお願いします。
路面施工技能士は、交通事故を未然に防ぎ円滑な交通環境を作り出す、社会的意義のある仕事です。今、道路には当たり前のように停止線や中央線が引いてありますが、それが無ければ自動車社会も成り立っていきません。
今後、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックや自動車の自動運転化に向けて、私たちの仕事はますます重要になっていきます。私はそういった重要な役割を担っている仕事ができていることを誇りに思います。
これから技能士を目指す方は、資格を取ることをゴールにするのではなく、仕事に活かすことや技能向上のための一環として資格取得をしてほしいと思います。自ら取り組んだ努力は必ず力になり、試験にも仕事にも活きてきますので、志を高く持って頑張ってください。
プロの道具~路面標示施工技能士編
スリッター式路面標示施工機
横断歩道や停止線、導流帯(ゼブラ)などの線を引くために使用します。現場でこの機械を扱うために、路面標示施工技能士の資格が必要になります。
力丸 直紀さんのある日のスケジュール
- 7:00
- 出社・準備
- 9:00
- 現場到着・作業開始
- 10:30
- 小休憩
- 10:45
- 作業再開
- 12:00
- 昼休憩
- 13:00
- 作業再開
- 16:00
- 作業終了・片付けが終わり次第現場撤収
- 17:00
- 帰社・解散