Vol.16 誰もが情報の受・発信できる社会、インフラ、光ファイバ網を整備する
情報配線施工技能士 1級
情報配線施工作業
(平成17年度取得)
中山 拓也さん
1976年生まれ
株式会社 協和エクシオ株式会社
情報配線施工技能士とは
インターネットも含め通信全般を、水や電気がそうであるように、誰もが当り前のように利用できる状態を整備する仕事です。情報のインフラを支える技能です。
中山 拓也さんのお仕事
時には電柱で、時には地中で、光ファイバを整備することを通して、現代の情報通信インフラを支えています。
中山さんが情報配線施工に興味を持ったきっかけはどのようなものですか
私は、子どもの頃から手で物を作るのが好きでした。学校では情報通信系の学科に通い、就職したのが今の会社です。就職の時に配属された職場が、情報インフラを整備する職場だったのです。
就職した1995年は、まさにWindows95が発売された年でした。メインの仕事は光ファイバ網の整備で、これからは光ファイバの時代と言われていた頃です。業務は多忙の極みでしたが、将来を期待される情報インフラの整備に関わる仕事はやりがいがありました。忙しくても、知識の吸収と技能の向上に努めていました。
情報配線施工技能士の資格を取得するきっかけは何ですか
私の場合、就職して約10年間、現場で配線施工の仕事に携わっていましたが、その後、現在の中央技術研修センタに異動し、技能五輪選手や新入社員などを指導することになりました。
ちょうどその年、情報配線施工技能士1級の資格制度ができました。技能五輪の選手を教えるからには、やはり自分もそれにふさわしい資格を取ろうと考え、第1回目の技能士試験に挑戦したのです。
私の会社は、社員の技術向上を図るため、技能五輪への参加にも積極的なので、資格を目指す時には会社も応援してくれました。
資格取得に向けて苦労したことはありますか
あえて言えば、時間の確保でしょうか。日中は技能五輪選手の指導などに追われていますから、残された時間は、指導が終わった夜間か、土曜日、日曜日ということになりました。
でも、苦労とは感じませんでした。
仕事というのは、知識なしでもマニュアルさえあれば、何とかなってしまうところがありますが、知識があれば、もっと良い仕事ができるものだと思います。そういう知識を得つつ、技能を向上させる時間を集中的に持てるというのは、貴重な経験だったと思います。何といっても、仕事への取組姿勢が変わります。太さ7~8ミクロンの光ファイバの中心を情報が走っていくと考えながら施工するとなれば、自ずと仕事の細部へのこだわりが出てきます。
とは言っても、試験の直前はかなり根を詰めていますから、精神的にリラックスすることも心掛けました。受検の頃は、子どもがバスケットボールに熱中していたので、日曜日に付き合うことで息抜きをしたりもしていました。
仕事でここが面白いというところを教えてください
現場の仕事でいえば、やはり、一つひとつ完成していく達成感ですね。一口に情報配線といっても、現場はどれも違うものです。状況に応じて培った技能の全てを尽くして仕上げていくことに喜びを感じます。
一つひとつの現場を完成していくことは、情報通信インフラの整備をすることです。誰もが当り前のように情報をやり取りできる社会を守り、育てるということです。離れた現場が一つに結び付き合っていくところに大きな満足感を感じています。
自動車で道路を走っているときなどに、自分が電柱に取り付けた光接続箱を見かける時があるのですが、そういうのを見ると嬉しいものです。
研修センタでは、単に目の前にあるものを教えるのではなく、社員が、「ものの考え方」を学び、身に付けていくことを目指しています。どんな仕事でも、考え方一つでできの良し悪しが決まることもありますので、こうした技術だけではなく技能を取得する姿勢を後輩たちにつないでいくのは遣り甲斐があります。
仕事で心掛けているのはどんなことですか
やはり向上心なくしては始まりません。そのためには、自分で目標を作ることが必要だと考えています。そういう目標があれば、ガンバリの源になります。自分で目標を立てて、達成に向って追求する気持ちが出てくれば、楽しみも生まれるような気がします。私自身、ルーチン化されたような仕事でも、自分なりに工夫をこらしてみれば楽しくなるものだと教えられてきました。こういう心の持ち方は、後輩にきちんと伝えていきたいです。そうすれば、ものごとの見方も違ってくると思います。
私は、いま、技能五輪の選手を指導していますが、「五輪」というように、まさにスポーツなのです。そうすると、たとえば、テレビでスポーツの試合を見ていても、選手の攻める姿勢、攻めなければ勝てないという気持ちの強さが、自分なりに見えてくるのです。こういうことは、技能五輪の選手指導に携わったから出てきたのですが、やはり、もっと強い選手になってもらおうという、一つの向上心から生まれてきたものだと思います。
中山さんが輝いていると感じるのは、どんな瞬間ですか
そうですね。技能五輪の選手を指導している以上は、選手が結果を出してくれたときですね。
人を指導するということは、実は自分自身の成長が求められていることでもあるのです。人間は、やはり心のウエイトが大きいです。若い人は、特に揺れ幅が大きいですね。選手には、プレッシャーがあったりしますから相当に苦しい。選手はそうだけれど、これを指導する側もやはり同じように苦しいのです。自分の変えるべきところを見つめ、自分を変えていくわけです。それに加えて、指導者としての責任があります。
それだけに、選手が勝った時は、本当に素直に嬉しいです。
技能士の資格を取って良かったと思うことはなんですか
私は、技能士の資格試験の準備をしながら、知識と技術はセットであって、これが技能なのだと、改めて確認しました。知識だけでも、技術だけでも駄目です。二つの兼ね合い、バランスをしっかり取っておくことが、ワンランク上の技術者に成長するためのポイントだと思います。
それは、自分の指導の仕方の根幹になっています。なんとなく教えて、ただ覚えさせるのでは効果はないですね。人は付いてきません。
知識と技術をセットで教え、指導を受ける人たちが自分で物を考えられるようにすることが、人を育てるポイントだと思います。こういうことを再確認できたのは、技能士の資格に挑んでいたときでした。私が受検したのは、中央技術研修センタの指導員の時でしたから、資格を取って、と言うよりも、資格を取るプロセスの意味が大きいです。
中山さんの夢はなんですか
私たちが指導した技能五輪の選手が、全国各地の情報インフラ整備のコアになってくれることです。
私自身は、いま、五輪選手を指導していますが、大切なことは、こうした選手が選ばれるまでの過程です。私の会社は、人財第一主義をモットーにして、社員の育成に力を入れています。そのため、社員の技術力向上の一環として、社員同士が、技術と知識を互いに競い合う場面があります。これによって、社員一人ひとりの技術力やそれを裏付ける知識の向上を目指しているわけです。
こうした過程を経て技能五輪の選手となった社員が、全国で中心的な活躍をしてくれるのが夢ですね。フィリピンにグループ会社がありますが、ここで現地採用の人たちを指導しているのも、技能五輪の経験者です。
最後に、これから情報配線施工技能士の資格を目指す人達にアドバイスをお願いします
何といっても、知識と技術をセットにして成長してほしいです。技術は、知識あってこその技術です。
こうした取組みをしていけば、自ら「ものの考え方」が身に付いていきます。やはり、みな、貴重な時間を費やすのですから、その時間が自分の仕事をランクアップさせるのに役立つように使ってほしいと思います。
プロの道具~情報配線施工技能士編
光ファイバを繋ぐ道具です
(1)2個で一組になっているファイバフォルダ①に、光ファイバ4本が束になった心線を固定し、ストリッパとも呼ばれるホットジャケットリムーバ②で被覆を剥がします。剥がした後は必ず、光ファイバ表面に付着する汚れを綺麗なガーゼで清掃する。
(2)ファイバカッタ③で光ファイバを一定の長さに切断します。2個のファイバフォルダを融着接続機④に装着し、放電によって4本の光ファイバを同時に繋ぐ。
(3)融着部をファイバ保護スリーブ⑤で補強する。
(4)光ファイバパルス試験器⑥で、融着が正しく行われていることを確認する。
中山 拓也さんのある日のスケジュール
- 8:00
- 出社 点検・スケジュール
- 8:30
- 休憩 現場に出発(1日5~6ヶ所)
- 12:00
- 昼食 休憩
- 13:00
- 作業開始
- 17:30
- 作業終了
- 18:00
- 帰宅