- 指導先
- ものづくりマイスター
株式会社村上製作所
昭和23年にミシンの部品メーカーとして創業。その後、自動車エンジンなどの精密すべり軸受などの製造を開始。素材の加工から仕上げ、検査までを行う一貫体制を構築して、自動車産業とともに発展してきました。常に社会のニーズに応えられるように、創意工夫、品質管理、先進技術の活用に努め、より良い製品を製造できるように人材教育にも力を入れています。
牧野 公一(まきの こういち)さん
大手自動車メーカーのグループ会社で、主に自動車のパワーステアリング部品の機械加工に従事。旋盤や研削作業の実務に携わりながら、製造工程の業務改善、アメリカ工場の立ち上げなど、さまざまな業務に携わってきました。管理職になった後は、技能向上と生産性向上のために人材教育に注力。現在はそれら長年の経験を活かし、ものづくりマイスターとして若年者への技能指導に取り組んでいます。
ものづくりマイスターの
実技指導を依頼した理由
機械加工の基礎となる
普通旋盤加工の
技能を身につける
株式会社村上製作所
第1製造部 部長
小野田 清次(おのだ せいじ)さん
背景
機械加工の基礎を学び
技能の底上げを図りたい
当社は車両用の軸受部品の製造が主たる事業です。そのため、NC旋盤やマシニングセンタなどの機械を頻繁に使用しており、多数「技能士」の資格保有者が在籍しています。しかし、普通旋盤加工に関しては操作できるのはベテラン従業員に限られていて、若手に技能を継承できておらず、かつ指導できる者がいない状況でした。普通旋盤加工の技能はすべての機械加工の基礎にもなるので、当社の技能の底上げにつながると思い、基礎からしっかりとご指導いただける「ものづくりマイスター等事業」の実技指導を依頼しました。
効果
技能習得で
生産効率UP
今回、業務ではほとんど普通旋盤の加工に携わることのない社員2名が改めて基本から、技能検定2級レベルまでの技能が学べるようプログラムを組み、マイスターには普通旋盤加工について丁寧にわかりやすくご指導いただきました。プログラムの中では、受講者がモチベーションを高く保てるように達成度のグラフ化や、できなかった箇所の検証にじっくり取り組むなど、さまざまな工夫をしてくださいました。計11回の指導の後半には、受講者に自信がついてきた様子が見て取れました。また、製造業における大切な4Sといわれる「整理・整頓・清掃・清潔」を徹底的にご指導いただき、社内での教育だけでは成し得なかった若手社員の技能習得が叶いました。実務でも指導で学んだ内容を活かすことで技能の底上げだけに留まらず、生産性にも寄与するなど期待した以上の成果があり、牧野マイスターには大変感謝しております。今後も継続して実技指導をお願いしたいと思います。
実施したプログラムの内容
今回の指導は、受講者たちが日常業務で普通旋盤作業をほとんど行っていなかったので、まずは技能検定2級レベルの技能習得を目指し、技能検定の課題に沿って、各道具の説明や使い方から指導しました。受講者とのコミュニケーションを頻繁に図りながら、技能・知識の習得レベルを把握し、各々の進捗度合にあった指導を心がけました。
実施プログラム
- 実施内容
- 機械加工(普通旋盤作業)実習
- 目 的
- 技能検定2級レベルの技能の習得
- 受講対象
- 社員2名
- 1回目
- 旋盤について(安全、加工、刃具、材料、切削現象等)
普通旋盤作業2級課題の作業手順指導 - 2回目
- 部品①加工(芯だし、ねじ切り、テーパー加工指導)
- 3回目
- 部品①②荒加工(加工手順、溝入れ、偏芯指導)
- 4回目
- 部品①加工(溝入れ、仕上げ加工指導)
- 5回目
- 部品②加工(芯だし作業指導)
- 6回目
- 部品②通し加工(弱点指導)
- 7回目
- 部品①加工(荒削り、ねじ切り加工指導)
- 8回目
- 部品①②通し加工、採点評価(芯だし、荒加工指導)
- 9回目
- 部品①②通し加工、採点評価
- 10回目
- 部品①②通し加工、採点評価(ねじ切り指導)
- 11回目
- 部品①②通し加工、採点評価(テーパー加工指導)
Crosstalk Interview
企業の発展と
個人の成長を想い
優秀な「技能者」を育てる
Talk member
ものづくりマイスター(機械加工)
牧野 公一(まきの こういち)さん
株式会社村上製作所 第2工場製造部 主任
原田 秀士(はらだ ひでし)さん
成長が視覚化できるように
採点してグラフ化
若い世代を指導されるにあたり、牧野マイスターが工夫されていることをお聞かせいただけますでしょうか。
牧野マイスター今回は技能検定2級レベルの課題を用いて、受講者とのコミュニケーションを図りながら、都度、その理解度を確認する丁寧な指導を心がけました。プログラムの後半では、実際の技能検定の試験のように、制限時間を設けて課題製作に取り組んでもらいました。また、モチベーションを保つために実際に採点も行い、その結果を点数化して各回の結果をグラフにするなど、成長を「見える化」する工夫もしました。
受講者の原田さんは、牧野マイスターの指導を受けてみて、いかがでしたか。
原田入社してからは、NC旋盤とマシニングセンタの扱い方を会社で教わり、業務に携わってきました。これまで普通旋盤には触れる機会がなく、今回の指導を楽しみにしていました。実際に取り組んでみると、普通旋盤は手で加工を行うので、自分で作っている実感があり、面白さを感じています。ご指導の中で製作物のでき栄えを点数化し、その推移をグラフにしていただいたことなどは、自分の目でも成長を実感することができ、やりがいへとつながりました。普通旋盤を用いた加工の技能が身についたことで、普段の仕事に対する自信が持てるようになりました。
よい製品作りに活きる
「精度」と「安全」への姿勢
実技指導では、どのようなところに重点を置かれたのでしょうか。
牧野マイスター特に強調したのが、「寸法測定」と「安全」です。製造業においては、どれだけ高度な加工ができても寸法測定が雑だと商品になりません。どの企業でも寸法測定はされているものの、実は正確に測るのはかなり難しいものです。皆さんには「精度」にこだわってほしいと伝え、複数の測定器を用いて寸法を測る方法を指導しました。それから「安全」を守るようにと話しています。普通旋盤作業では直接刃物を扱うため、姿勢、手の位置、足の位置を正しく理解することで身の安全を守ります。取り組む姿勢は精度にも関わってくるので、大切にしてもらいたいと思います。
マイスターの指導で特に参考になったと感じるのはどのような点でしょうか。
原田加工作業で、刃物のセッティングの仕方、回転数、使い方など詳細にお教えいただき、とても勉強になりました。作業中に出る音に対して「この高さの音が出るときが良い状態だよ」とアドバイスをいただき、また、「切粉(きりこ)の量」や「作業速度」、「寸法測定」なども重要なポイントとして学ぶことができました。寸法も正確に測定できるようになり、自分でも精度が上がったと感じます。マイスターからは、「いい仕事をするには、整理整頓が一番の近道」と教わり、4S(整理・整頓・清掃・清潔)を実践しています。持ち場に戻った際に仲間に学んだことを伝えると、周りでも少しずつ改善されるようになってきました。
「優れた技能者」を目指してほしい
今回の指導を通して、感想をお聞かせいただけますでしょうか。
牧野マイスター以前、私が勤めていた会社は比較的、教育制度が整っていました。恵まれた環境下で基礎から学んできた技能を、マイスターとして他の会社へ伺い、技能の向上を目指す方々にお伝えすることで喜んでもらえる点に大きなやりがいを感じます。たくさんの受講者に出会えることは、私にとっても素晴らしい経験になっています。受講者たちが学んだことを持ち帰り、社内の方に伝えていただけるのも非常に喜ばしいことだと感じます。
原田さんはマイスターの指導を受けて、ご自身の業務に変化などはありましたか。
原田普通旋盤とNC旋盤の機械を使い分け、それぞれで適した加工を行えるようになったので、仕事の幅が広がりました。実際の製造現場で役立つノウハウもたくさん教えていただいたので、今後の仕事に活かしたいと考えています。また、ご指導いただいた内容は自分だけでなく会社全体の力にできるように、「加工方法・手順・注意点」などを書面に残し、後輩たちにも伝えていこうと思っています。
ものづくりマイスターとして機械加工の仕事に携わる、また機械加工を学ぶ若い方々へ伝えたいことはどのようなことでしょうか。
牧野マイスター若い職人にとっては、技能士になることが最初の大きな目標だと思います。しかし、資格の取得だけで満足することなく、ぜひ「優れた技能者」になってほしいと思います。優れた技能者とは、卓越した作業能力と豊富な知識を持つとともに、現場をマネジメントし、効率的な作業を取り仕切れる者だと思います。ぜひ多くのことにチャレンジしていただけると嬉しいです。私は優秀な技能者を育てることが、業界の発展と働く職人たちの幸せにつながると考えていますので、その一助となれるように今後も活動し続けたいと思います。