「ラズベリーパイ等を
使用したIoTの基礎指導」と
「自社製品ホームページ制作
の技能指導」

令和3年度 
中小企業・団体編
ロボットソフト組込/ウェブデザイン

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以下に示す事例は、I県の中小企業における2回分のITマスターの実技指導を基に、一つにまとめたものです。

  • 指導先
  • ITマスター

S社

非接触ICタグ・ICカード、マイクロモーター、リサイクルに関する環境製品等の設計・開発・製造。

Sさん

中学生からプログラミングに興味を持ち、ソフトウェア会社に就職。その後、多くの人たちに広く使用されるソフトウェアを開発したいという思いから独立。平成29年にITマスターの認定を受け現在に至る。

ITマスターの実技指導が
実施されるまで

S社からは2年続けて、ITマスターによる技能指導の依頼がありました。初年度はロボットソフト組込職種における「ラズベリーパイ等を使用したIoTの基礎指導」を、2年目にはウェブデザイン職種における「自社製品ホームページ制作に係る技能指導」が実施されました。

S社からITマスターの実技指導の依頼があった経緯には、製品の納品後のサポートを行う際、顧客から現地納入機器の稼働情報を的確に得るのが難しく、これを改善する手段として安価なマイコンボード等を活用し、現地機器からネットワーク等で稼働データの収集を効率的に行いたいという背景がありました。社内には、ベテラン社員が多く、製造においては高い技能を有しているものの、ITについては社内を一貫して指導できるような従業員がいないという実情があったこと、また、まずは若手社員には社内の課題を社員自らの力で解決する力をつけて欲しいと考えていたところ、ちょうど地域技能振興コーナーから「ものづくりマイスター等事業」の案内があり、初年度はロボットソフト組込職種における「ラズベリーパイ等を使用したIoTの基礎指導」への依頼に結びつきました。1年目に社員教育としての十分な効果を感じていただいたことから、翌年は、ウェブデザイン職種における「自社製品ホームページ制作に係る技能指導」の依頼へと繋がりました。

①ラズベリーパイ等を
使用したIoTの基礎指導

プログラムと目的

実技指導のプログラムについては、S社の担当者とITマスターが相談した上で、小型サイズで開発のためのハードウェアやソフトウェアが充実しており、自作での様々な電子機器や装置などの開発が可能である「ラズベリーパイ」を使った指導を全20回、業務時間内の毎週木曜日に実施しました。

S社の担当者よりITマスターへ製品の機能や現地から収集したい稼働情報等の業務内容を説明。また、受講者の技能レベルについても伝え、指導プログラムの内容を一緒に考えて、作成していただきました。受講した社員は1名で、他の開発に携わる中で、C言語の基本的な文法を理解しているものの、マイコンボードを使ったプログラミングは初めてでした。そこで、最終目標に、「ラズベリーパイや他のマイコンの知識・使用方法を学びながら社内の課題を検討、プログラミングの基礎を理解しながら、学んだ知識を基にプログラミングで課題を解決できる」という実践的な指導プログラムをITマスターに組んでいただきました。

具体的な内容

最初はラズベリーパイの概要を理解し、セットアップできるようになることから開始。ラズベリーパイ以外のマイコンボードでは、ESP32、M5Stackについて学び、実際に自社環境製品とのインターフェースやデータを収集するタイミング、データ量等の課題を検討しました。プログラムを作成し、それらを組み合わせることで、S社の工場での活用が可能な「顧客へ製品納入後の稼働状況の監視ができるシステムのプロトタイプ作成」をゴールに、全20回の中でマイコンボードに関するプログラミングの基礎を無理なく段階的に身につけられるよう、指導いただきました。

実技指導を受けた効果

実技指導を通して更に知識が深まり、社員の技能が向上したと感じました。具体的には、マイコンボードの選択肢やセンサーの種類、データ収集のタイミングやデータ量を理解できるなど、知見が広がり、また、今後の業務に活かせる社内の課題の捉え方と解決手段を体験できました。

プログラム

①ラズベリーパイ等を使用した
IoTの基礎指導

1回目
・言語スキルの確認
・今後の進め方などの相談
・業務内容のヒアリング
2〜6回目
・ラズベリーパイOSのセットアップ方法の指導
・SSHやVNCを使ったリモート接続の指導
・クラウド上のPythonの実行方法の指導
・IoTリモートモニタリングの仕様検討の支援
7〜9回目
・温湿度センサーをラズベリーパイで使ってみる(温度計測、センサーの使い方)
・ラズベリーパイ以外のマイコンの選択肢について
・実際に社内の課題検討(異常停止の監視)
・WebAPIのアクセスをcURLで行う
10〜13回目
・ESP32を使った光センサーを使用するプログラミング
・ESP32でのWiFi接続
・ESP32からHTTPリクエスト(POST)の送信
・ラズベリーパイに簡単なAPIを作成してリクエストの処理
・ESP32をM5Stackに置き換える
14〜17回目
・M5Stackでのセンサー(CdS)を読み取るプログラミング
・M5StackでのHTTP POSTリクエストのプログラミング  
・ラズベリーパイでのHTTP POST処理プログラミング
・M5StackでのHTTP GETリクエストのプログラミング
18〜20回目
・M5Stackでの操作機能のプログラミングを行う

②自社製品ホームページ
制作の技能指導

プログラムと目的

S社にはホームページ制作に詳しい社員がおらず、外部に制作を依頼していたこと、また、見やすく利用しやすいお客様目線でのホームページを社内で制作・運用し、自社製品をタイムリーに掲載したいという希望があり、ウェブデザインが学べる指導の依頼がありました。
前回の指導に続いて、ホームページ制作についてもITマスターと相談し、指導は全20回としました。期間は7月から12月までの半年間で、月に3回前後、木曜日の就業時間内と決めて実施。受講者は2名のうち、1名は昨年度も受講した社員で、10月と11月は新型コロナウイルス感染対策のため、オンラインを活用。それ以外の回は、S社内で直接指導を行いました。

実技指導を受けた効果

昨年度からITマスターには別の分野で指導をいただいていたこともあり、今回は、分からない点なども受講者から進んで質問して、アドバイスや指導を受けるなど、前向きな姿勢で臨むことができました。全20回の指導プログラムを学び、現在は実際にホームページを立ち上げ、製品の案内ページを公開、社内で運用を行っています。
全ての回が終了し、ITマスターからは、「今後は本番環境のメンテナンスと運用を継続的に行える必要があります。また、PHP言語のスキルアップは欠かせません。ホームページは作って終わりではなく、継続的な運用スキルを身につけていかなければならないため、社員の方々には今後も勉強を続けていただきたいと思います」とアドバイスいただきました。

具体的な内容

今回は、ホームページ制作(立ち上げ)の基礎からWordPressの使用方法、CSSを使ったカスタマイズの方法などで、最終的には本番環境へのアップロード作業まで行い、自社製品の紹介ページの作成までを行いました。ホームページ立ち上げにあたり、レンタルサーバでのサブドメイン設定を行う方法からデータベースの作成方法等を学び、PHP言語を使用したプログラミング方法へと徐々に知識を深めていき、ウェブデザインに必要な基礎知識を丁寧に指導いただきました。

実技指導を受けて

S社には若手社員へのIoTに関する教育環境を整えたいと検討したときに、日常業務の中でIT分野の人材育成をどう並行して進めるのか等、課題がありました。今回の異なる二分野の指導にあたっても、S社の実情に合った方法でそれぞれコーディネートし、有用に活用いただけたと感じています。

プログラム

②自社製品ホームページ制作の
技能指導

1〜2回目
・レンタルサーバでのサブドメイン設定方法
・WordPressをシェルコマンド操作でセットアップする方法
・データベースの作成方法
・WordPressのテーマとプラグインの仕組みの概要説明
・テーマの役割についての説明
3〜4回目
・テーマの設定について
5〜6回目
・テーマの設定について
・複数のサイトの立ち上げ方・運用方法
・プラグインの設定について
・問い合わせフォームの作り方
7〜8回目
・テーマの設定について
・プラグインの設定について
・問い合わせフォームの作り方
・CSSを使ったカスタマイズ方法
・ウィジェットの使い方
9〜10回目
・テーマの設定について
・プラグインの設定について
・問い合わせフォームの作り方
・CSSを使ったカスタマイズ方法
・ウィジェットの使い方
・本番環境移行への作業手順
11〜12回目
・WordPress全般の操作方法
・本番環境移行への作業手順
・本番環境の設定変更について
・SSL証明書の更新方法について