- 指導先
- テックマイスター
株式会社ミヤジマ
水道・船舶・産業用ゲートバルブの弁棒をはじめとした、さまざまなシャフト形状部品のアプセット鍛造を行っています。「ものづくり」をもって社会に貢献し、全社員の「生きがい」と「幸せ」を追求することを経営理念に掲げ、「宮嶋式弁棒鍛造」を基本とした事業経営を行っています。平均年齢36歳と若い社員が活躍しており、充実した福利厚生とメリハリある勤務体系で、社員の働きやすさにも配慮しています。
山本 俊彦(やまもと としひこ)さん
昨年度から株式会社ミヤジマの生産性向上を目指し、指導を実施。大手企業での製造業務や人材育成を担当していた経歴を活かした指導を行っています。企業の「困りごと」に耳を傾け、課題の把握から受講者と二人三脚での指導を行う山本マイスターは、現場とのコミュニケーションを大切にしながら活動しています。
テックマイスターの
実技指導を依頼した理由
個人のスキルだけでなく
管理能力を磨き
社内の「チーム力」を
高めたい
株式会社ミヤジマ
代表取締役会長
宮嶋 誠一郎(みやじま せいいちろう)さん
背景
「チーム力」の高い会社を目指して
当社には現在、48名の社員が在籍しています。しかし社員数の増加に対して各部門の責任者が足りておらず、必要な人員が揃っていないことが大手企業との取引においてネックになっていました。そこで悩んでいたところ、設備保全やメンテナンスの分野で以前からお世話になっている「ものづくりマイスター等事業」に、新たに「テックマイスター」の指導をお願いできることを窓口の滋賀県技能振興コーナーから教えていただきました。個人の技能を磨く指導をしてくださる「ものづくりマイスター」に対して、「テックマイスター」は、生産性向上に焦点を当てた指導をしていただけると聞き、まさに当社が求めているものだと思い、依頼しました。
効果
売上アップにつながり社員の意識も向上
山本マイスターには、まず設備稼働状況を把握し、管理上の課題を見つけていただきました。それを踏まえたご指導により、「日々の日報作成にタブレットを利用する」、「工具の整理や作業動線が気になるときは修正を行う」など、具体的な対策を実行。その結果、確実に生産効率が上がり、社員たちの意識も向上しています。一人ひとりが会社の課題に向き合い、「こうしてみたい」「ああしてみたい」と自発的に意見を出してくれるようになりました。そうした細かい改善を積み重ねた結果、残業をしないでも売上が伸びるなど効果が実感できるようになりました。今後は「どの作業の生産効率がどの程度上がり、売上にどう貢献したか」などが分かるように数値化により見える化し、さらに生産性を高めていこうと思っています。
実施したプログラムの内容
機械加工を行う株式会社ミヤジマの生産性を上げるため、まずは設備稼働状況の「見える化」を行いました。そのための各種改善についての指導を基に生産管理システムのバージョンアップを実施。稼働状況のデータを取ってグラフ化できるようにし、管理しやすい体制を整えました。また、紙ベースで提出をしていた日報を、タブレット入力に切り替えることで集計を簡略化。最終回ではペーパーレス化に向けて、今後の運用ルール作成や改善案を検討することにしました。
実施プログラム
- 実施内容
- 機械設備の改善検討および実施
- 目 的
- 機械加工分野の生産性向上
- 受講対象
- 社員7名
- 1回目
- 設備稼働状況の見える化に対する各種改善の指導
- 2回目
- 生産管理システムメーカーのバージョンアップに向けた提案書の検討と見積り依頼
- 3回目
- 紙日報からタブレットを活用した入力方法に変更した運用の調整
- 4回目
- タブレット運用のルール化と操作面の問題点、改善案について検討
Crosstalk Interview
課題分析からのIT・IoT活用で
これまでの業務を
新たに見直す
Talk member
テックマイスター
山本 俊彦(やまもと としひこ)さん
株式会社ミヤジマ 機械加工グループ リーダー
福田 史彦(ふくだ ふみひこ)さん
株式会社ミヤジマ 技術営業部 係長
石田 陽一(いしだ よういち)さん
課題分析から話し合い
ITやIoTを導入
実技指導を通じてミヤジマさんとは2年のお付き合いになる山本マイスター。今回の依頼内容を踏まえ、前回よりも視野を広げて指導プログラムを考えたそうです。
山本マイスターミヤジマさんには、実はテックマイスターとして伺う前に、ものづくりマイスターでの指導をさせていただきました。今回のテックマイスターとしての指導は、「会社全体の生産性や商品の品質を上げる」というものでしたので、宮嶋社長(取材当時)ともいろいろ話し合いながら、内容を決めました。ITやIoTをうまく取り入れたいとのお話でしたので、まずは会社の現状を把握して、どういう課題があるのか分析から始めました。
今回、福田さんと石田さんがテックマイスターの指導を受講しようと思った動機を教えてください。
福田私は機械加工グループのリーダーをしていて、宮嶋社長(取材当時)からの勧めもあって受講を決めました。IoTについて正直詳しくはなかったのですが、グループリーダーとして、社内の生産性を上げていく必要があると感じていたんです。メンバーにも問題点を聞いて回りながら、山本マイスターの指導を受けて、段取りの改善を行いました。
石田私は、会社全体の改善活動の担当をしていることから、他の受講者のサポートができればと思い受講しました。昨年に引き続き、山本マイスターから指導をいただいているのですが、受講していない社員は受講者が何をしているのか、どれくらい大変なのか、いまいち分からないんです。受講者だけに負担がかからないように、学びを横展開させたいと考え、前回に続いて今回も山本マイスターに指導をお願いしました。
日報作業がボタン1つで完了
社外からの視点が改革をもたらす
ITやIoTを取り入れた生産性の向上について、マイスターはどのように工夫して指導しようと考えていらっしゃいましたか。
山本マイスター「ITやIoTを活用してほしい」という依頼は実は初めてでしたので、まずは皆さんから業務上の困りごとをヒアリングするところから始めました。すると、「紙での日報処理」や「口頭での作業指示」など、うまくデータ化できそうな部分がいろいろと見えてきました。「設備の稼働状況の可視化」もITやIoTを活用できそうだということで、受講者とも話し合いながら、指導内容を決めました。今回は「工程管理の見える化」「設備の稼働状況の可視化」がテーマです。
今回の講義は何度も話し合いを重ねてテーマを決めたとお聞きしました。皆さんで相談したプログラムの成果はいかがでしたか。
福田業務の段取りが改善されて、日々の作業がとても楽になりました。例えば、これまでは紙に書いてもらっていた日報を現場のタブレットで入力できるようにしたことで、日報の管理がボタン一つで完了するようになったんです。またこの他にも作業の手順などをデジタル化していけば、情報共有もスムーズになり、ルーチンワークを簡略化することで社員の士気向上に役立てられると思いました。山本マイスターは大手企業に長年お勤めの経験をお持ちで、私たちとは違う視点があり、とてもいい刺激をもらえました。
石田受講者以外の社員も、課題意識を持つようになってくれた気がします。今回、私は福田さんのサポートという形で、受講しながらタブレットの導入や設定、現場の社員の要望への対応をしていました。次第に皆が自発的にタブレットを使いこなすようになり、社内から「もっとこうしたら。」と意見も出るようになってきたので、この雰囲気を維持したいです。やはり改善においても自社の方法に限定することなく、社外の方の目で見ていただくことは、大切なのだと思いました。
1グループの学びを会社全体へ
IoTの力で更なる効率化を目指す
実技指導を経て、お三方それぞれに感想と今後の目標をお伺いしました。
山本マイスター今回、結果として会社の売上が伸びたようで、とても嬉しく思っております。ミヤジマさんとして会社の方針を常に掲げて、それを社員にしっかり共有されているので、このような結果に繋がっているのだと思います。今回のシステム改善は、機械加工グループ内の活動でしたが、今後は他部門にも応用して、水平展開していっていただければと思います。
福田今回、IoTを取り入れたことで私の業務が楽になったので、学んだ内容を他の社員にも共有していきたいですね。人が無理をしないでいいように、仕組みを変えて結果を出していきたいと思います。今後は「稼働管理」ということで、機械の稼働状況をPCに取り込んで「見える化」し、問題を解決しながら生産性を上げていきたいです。
石田今回は機械加工グループの生産効率に効果が出たのですが、今後は会社全体に効果が出るようにマイスターのご指導を活かしていきたいです。例えば、今は人が管理している納期設定を、データを活用することで自動化したいです。切断に何日、鍛造に何日……という各工程のリードタイムがデータでわかるようになれば、納期設定も自動的に設定できるようになると思います。今は人力での調整が大変なので、今回、学んだ内容を活かして効率化したいですね。