ものづくりマイスター / ITマスター / テックマイスター事業

企業・学校の活用事例

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令和4年度 中小企業・団体編
テックマイスター(大阪府)

マシニングセンタによる製作加工現場における
品質向上を目的とした現場改善の方法を学ぶ

指導先

株式会社テクノタイヨー

事業内容
  • マシニングセンタによる試作
  • 加工
  • 製品検査
  • 組立
  • 海外生産

従業員数
48名
テックマイスター

熊本 義久(くまもと よしひさ)さん

令和3年(2021年) テックマイスター認定

令和2年(2020年) ものづくりマイスター認定(機械加工職種、機械・プラント製図職種)

42年間大手電機メーカーにて加工、人材開発関連の部署に勤務。主に、射出成形用の樹脂金型及びプレス金型、普通旋盤・フライス盤・マシニングセンタを用いた自動機用の部品加工、CADやCAMを使ったモデル作成とプログラム作成、また、3DCADやIE(Industrial Engineering)、ムダ取り、TWI(企業内訓練)の研修講師として、社内及び社外への教育に携わる。また、技能五輪全国大会や、技能グランプリ等への技能競技大会への出場経験もあり、得意とする指導は、主に旋盤・フライス盤・マシニングセンタなどの機械加工、初級・中級者への3DCADやCAMを使用したものづくりやプログラムデータの作成、現場改善の基本となるIEの基礎教育から現場での改善(ムダ取り)までの実践改善指導の実施、現場の現状分析(データの収集・分析)から改善案検討、現場改善を通じた生産性向上、ロス削減の実施など。

実施したプログラムの内容

実施プログラム

実施内容
受講者へのヒアリング、生産現場の現状確認、加工グループ全員への改善知識の指導実施、受講者への改善知識の指導、5S活動による作業エリアの改善、品質チェックの強化、社内勉強会(発表会)の実施
目  的
現場のリーダー育成、現場改善等による製品の品質改善
受講者
1名
実施日程
令和3年9月~11月 1回あたりの実技指導は3時間
1回目
受講者への面談と課題の把握、目標設定等
2~6回目
生産現場の確認と課題の把握、職場レイアウトの作成、売上進捗表の変更、改善知識の指導等
6~12回目
加工グループ全員への「ムダとは」「5Sについて」等の改善知識の指導、受講者へのワークシートを用いた作業分析の指導、職場レイアウトの配置位置確認と不要品目の洗い出し
13~20回目
5S活動による作業エリアの不要物の廃棄、レイアウト変更による動線改善等の実施、品質チェックの方法を検討し強化、社内勉強会の実施

実技指導の目標と目標への到達度

No. 目標 到達度
01[指導の1回目] [指導の1回目]面談により将来の姿をイメージし、課題の把握、実技指導で達成したい目標を考える。 受講者と面談をした上で現時点での課題の整理を行い、到達したい目標を考えることができたことから、概ね目標に到達できたと言える。
02[指導の2~6回目] [指導の2~6回目]生産現場の課題を把握するため、加工グループのメンバーの協力を得て、問題点の洗い出しを行う。 現状の課題について現場確認をしながら討議を実施するなど、目標どおり到達できたと言える。
03[指導の2~19回目] [指導の2~19回目]改善等に関する知識についての講義と知識の定着を図る。 目標どおり実施し、理解度は8割程度で定着については7割程度である。
04[指導の2~6回目] [指導の2~6回目]職場レイアウトを作成し、不要物の把握や作業効率が上がる動線について考える。 機械、工具、材料などの配置を把握し、職場レイアウトを作成するなど目標どおり実施し、概ね到達できたと言える。
05[指導の2~6回目] [指導の2~6回目]売上進捗表を変更し、グラフにすることで見える化する。 売上進捗表の日々の推移と合計が把握できるように変更することができたことから目標どおり実施し、概ね到達できたと言える。
06[指導の1~20回目] [指導の1~20回目]朝のミーティングで昨日の実績と当日の目標及び業務に関する情報共有を実施する。 当日の目標と前日の実績、気づきなどをグループ全員で共有するようになるなど概ね到達できたと言える。
07[指導の6~12回目] [指導の6~12回目]不要品の廃棄や工具、材料を整理することで、職場レイアウトの変更を実施する。 目標の不要品等の整理や職場レイアウトについて、変更するなど概ね目標に到達できたと言える。
08[指導の13~19回目] [指導の13~19回目]品質チェックの方法を検討し、強化する。 加工開始時のチェックだけでなく中間チェックを行うことで、後工程への不良品の流出と手直しロスを削減し、手順をルール化するなど目標に到達できたと言える。
09[指導の20回目] [指導の20回目]最終回で社内勉強会の実施。 「ムダとは」や「5S」などの内容について受講者が講師となり、社内勉強会を実施できたことから、到達できたと言える。

実技指導の成果

職場の不要機械の撤去、工具や材料位置の変更による大幅なレイアウト変更実施による作業効率を改善することができた。また、品質チェックの方法を変更し、ロスを削減することができた。

今後の課題

  • 加工グループのメンバーのさらなる意識の改善。メンバーに作業前に標準時間と個人の目標時間を述べさせ、作業後の時間との差を認識させることにより、足りないスキルを身につけるよう受講者へ指導。また、作業時間以外の作業工数の見える化も必要。
  • 作業エリア内に存在する備品を洗い出し、さらなる効率化を追求する。
  • 日々の売上の進捗管理だけでなく、今後は月間での推移の進捗の変化が把握できるように変更する。
  • 過去の実績や会議メモなどの不要掲示物を撤去する。
  • 品質手直しが発生した際の工数をメンバーに共有するため「売り上げ進捗表」に追記する。
  • 品質管理部門と最終チェック方法の検討を図り、今後の品質向上を目指す。

テックマイスターの
実技指導を依頼した理由

株式会社テクノタイヨー 代表取締役 水野 敏雄(みずの としお)さんに、
実技指導を依頼した背景や指導にあたっての準備などについて伺いました。

背 景

ものづくりマイスター制度については全く知らなかったのですが、ちょうど大阪府地域技能振興コーナーの方からお話を頂いた際に、当社において技能継承に関して問題に感じているところがあり、制度を利用することにしました。
実は、ちょうどベテランの職人が高齢で退職したタイミングでした。その職人からは2年ほど前から少しずつ技能を伝えてもらい、その後、退職したのですが在席していた間はまだまだ頼っていた部分があったようで、分からないことが次々と出てきました。中でも、当社の事業で重要なマシンニングセンタですとか、NC旋盤の精密切削加工の部分で品質のばらつきが問題として表出してきました。さて、それをどうしたものかと考えており、それだったらものづくりマイスターの方に分からないところをお聞きできるのではないかという思いから申込みをしました。
当初は、ものづくりマイスターとテックマイスターのいずれに依頼するものかまでは決まっていなかったのですが、地域技能振興コーナーの方に相談に乗っていただき、不良品が出る問題については、職人に技能を教える以前に、品質管理や問題抽出のやり方などについて先にやった方がよいのではないかということになりました。

8月に一度、事前打合せを行い、実技指導は9月から11月の間に20回実施しました。当社では1週間のうち金曜日と土曜日は勤務が比較的落ち着いている曜日で、特に土曜日は隔週で休みがあることもあり、主に金曜日に、それ以外は土曜日にご指導いただきました。
受講者は1名で、指導を開始した9月の段階では加工グループに異動し、リーダーに就任したばかりでした。前任からの引き継ぎがない状態でしたので、とにかく早くやりたいという気持ちがあり、実働しながらの研修である程度時期を固めて実施していただくことにしました。
工場の機械はずっと休みなく稼働している状況で、シフトで出勤しているため朝は6時、夜は9時に出勤しています。ずっと同じ時間に同じ人間が出勤するのではなく、少しずつずらしながら出勤するということもあり、指導は日中の就業時間内に行うため、3カ月の予定を予め全て押さえておきました。
当社では、外部研修等への就業時間内の受講を奨励しており、費用も会社で負担しています。その代わり、研修を受けた社員は必ず1カ月以内に社内で共有するための勉強会をするルールがあります。また、社内ではコミュニケーションを取るために月に1回ほどブックシェアリングコミュニケーションという勉強会のようなものを開いて、普段から知識や考え方について情報共有する機会を設けています。そのため、今回ご指導いただくにあたっても、社内で情報共有を図るため、実技指導の最終回に社内勉強会を開くことを当初から予定していました。

準備・環境づくり

指導内容については、事前の打合せで大体決めてありましたが、実際に受講しながら、実情に合わせて変えていきました。また、テキストのようなものは特になく、熊本テックマイスターが都度、用意した資料で学習しました。

指導内容

テックマイスターの熊本 義久(くまもと よしひさ)さんに、指導の詳細について伺いました。

指導前に大阪府地域技能振興コーナーの担当者と一緒に株式会社テクノタイヨーさんに伺い、水野社長とお話させていただきました。簡単な工場見学をしつつ、9月から加工グループに新しいリーダーを就任させること、加工グループの抱える課題、品質の向上、生産性向上を目指したいことなどについてお聞きしました。

初めに実技指導にあたっての事前準備ですが、実技指導は座学と実践の両面から臨みますので、座学で必要な資料は実際に講師として使用してきた資料や市販の本からの抜粋などテクノタイヨーさんの状況にあわせて用意しました。特に、今回の指導内容である5Sやムダ取りのような部分はIEの手法を使いますので、そういった内容を中心に資料を用意していきました。他にも配付するような資料だけでなく、Power Pointの資料なども用意しますので、最低でも準備には4~5時間かけていました。特に、大企業であれば社員研修などで学んでくるような内容も、中小企業ではなかなかそこまで手が回らないということも多々あり、始めて学ぶ内容であるという前提で丁寧に説明して、ご理解いただけるようにしました。

9月から11月にかけて3カ月間で20回の指導をしました。9月と10月は各6回、11月に8回行いました。まず、最初に受講者と面談を行い、今後の指導内容の方向性を確認しました。その後、主に大きく分けて3つに目標を絞って、指導していきました。1つ目は改善知識についての指導、2つ目は生産現場の現状確認と改善、3つ目は品質チェックの強化についてです。また、最後には社内勉強会を通して、指導内容の共有を図りました。 3カ月を通して、目標に対して並行して進めて参りましたので、各回の指導内容というよりは、各目標に対してどのように進めていったかお伝えしたいと思います。

初回の指導では、受講者の山本さんと「面談」をしました。ヒアリングを通して、目標としていることや、課題に感じていることなどについて話しをしました。目標については、自分が5年後、10年後にどういう姿になりたいかということを聞き、自分の強みや弱みについても書き出してもらいました。その上で、今足りないこと、勉強しなければいけないことなどを会話しながら、職務内容に合わせて考えていきました。
また、現時点での現場の課題、生産状況その中で、自分の仕事の内容や自分にとってお客様とは何か、お客様を満足させる製品づくりには何が必要か、また、社内の次工程もお客様であるという考え方について伝えることで品質問題等の確認をしていきました。工場内も改めて受講者の山本さんから案内してもらい、困ったことなどについて現場を見ながら聞いていきました。見えてきたのは、職場のレイアウトや日々の進捗管理、情報共有の問題などでした。山本さんには朝のミーティングで本日の目標を、昨日の実績(例えば職場での失敗などの情報も含め)と共に共有していこうという話しをしました。

指導の1つ目である「改善知識についての指導」ですが、指導の2回目以降から、改善に関する内容についてレクチャーを1時間から2時間ずつ毎回やるようにしました。山本さんが入社してまだ数年ということもありますが、初回の面談で今後のためにも改善活動について学ぶ必要を感じましたので、職場のレイアウト変更などを実践しつつ、知識も同時に教えるようにしていきました。9月中は、まずは山本さんに少しずつ伝え、10月には加工グループの全員へ改善知識の指導をしていきました。
山本さんはリーダーですので、個別に「時間観測」、「組合せ表」、「標準作業表」、「連合作業分析」などワークシートを用いて作業の分析方法を指導しました。また、知識として「稼働率」及び「可動率」についても説明をしました。
加工グループのメンバー全員へは、最初に「問題とは」、「動きと働きの違いについて」、「ムダとは」、「5Sについて」等の内容を資料を用いながら説明をしました。特に仕事上の「問題」に気づくことが重要ですので、「問題点改善リスト」というものを配付、普段からメンバーが気になっていることを書いて提出してもらいました。「問題点改善リスト」は無駄をなくし、効率化を深めるためには必要なものですので、元々指導しようと考えており、当初は受講者の山本さんだけにレクチャーするつもりでしたが、やはり全員を巻き込んで内容を展開した方が意識が変わると思い、内容は問わず何でもよいので書いてもらうことを目的として実施しました。
また、「5S」はすでに社内で活動しているところもありましたが、今回指導している内容を加えての活動となるように指導しました。今回指導した5Sとは、一般的にいわれている5Sじゃなくて、こういう5Sの活動の考え方があって基礎教育なんだよといったことを、毎回できるだけやるようにはしました。

また、目標の2つ目でもある「生産現場の現状確認と改善」にもつながるのですが、朝のミーティング時に今日の目標と昨日の実績、気づきなどをグループ全員に共有するように伝えていきました。進捗のグラフなどで目に見えるような形にし、チームとしてどこまで達成したかを毎日見ることで本人たちが何かを感じてくれるようになることが目的です。
他にも目標や実績だけでなく、前日に起きた出来事、例えば失敗したことなどをメンバーの前で話すことで、共有し、失敗しないようにしようという意識付けをすることから始めました。これはミーティングで報告する時に本人が話すことで、自分の中で整理できるようになるだけでなく、周りにも聞くことでそういうことがあるということを認識させ、お互いに仕事へのモチベーションを上げるという意図がありました。

指導の2つ目は、「生産現場の現状確認と改善」についてです。山本さんと現場確認をしながら見えてきた生産現場における課題は、「物の置き場所、作業動線、機械の配置などレイアウト」と「日々の目標管理」の2つでした。

「物の置き場所、作業動線、機械の配置などレイアウト」について、一緒に現場を見回りましたが、作業台で仕事をする際の工具等の置き方、例えば測定物と測定器が重なって置かれていたり、本来大切に扱わなければいけない測定器に傷がついていたりといったことが確認されました。同じ場所に戻さないと作業動線が変わってしまったり、取りにくかったりと時間のロスが発生します。こういったことも慣れてしまうと、気づかなくなってしまいます。そこで、現場のレイアウトがどうなっていて、バックヤードに何があって、在庫がどれだけあって、置かれている物の要不要といったことを管理するためには、5Sの考え方が重要であるといった話をし、物の置き場所や設備を1つずつ見て回りながら、材料がなぜこの場所に置いてあるのか、決められているからではなくて、作業効率を考えて場所を変えるなど、実際に5S活動をやりながら進めていきました。

まず、9月の2、3週目から機械、工具、材料などの配置を把握するため、職場のレイアウト図を作成しました。設備のレイアウトも描かせて、使っている機械の裏に何が置いてあるかまで描き出します。また、レイアウト図内には簡単な略図で距離も出すようにしました。
10月に入ってからは、機械、材料、工具、棚など不要品目の洗い出しをしました。洗い出していく中で、現場に使用していない古い設備があることがわかりました。そこで受講者の山本さんにはレイアウト変更を行うために、その機械が要るか要らないかを判断するように伝えました。
11月には、設備、備品の区分を行い、古い設備を撤去しました。更にその設備の周辺全体を整理し、大幅なレイアウト変更を実施することができました。また、材料や工具などを一元化し、動線改善を実施しました。

もう一つの課題である「日々の目標管理」ですが、工場内を見回った時に、職場の掲示板には色々と実績管理を貼りだしてあり、ある程度の目標は掲げられ、一日の出来高も確認できるようになってはいるものの、目標に対する日々の進捗は分からない状況がありました。そこで、例えば20日間の稼働日であれば「20日での売上目標に対する到達度をグラフで見えるようにしましょう」ということを話しました。進捗管理については、9月中に実行に移して、日々の目標と実績がわかるようにして掲示することができました。

指導の3つ目である「品質チェックの強化」については、10月から11月にかけて実施しました。指導の依頼のきっかけとなった不良品が出る問題の解決として、品質チェックの強化を提案しました。まず、製品化までの流れですが受注したタイミングで試作品を作り、作り込んだところで精度をチェックして問題がなかったら量産するという流れがあります。しかし、なぜか納品した後に納入先から品質の問題で、返品が発生することがあるとのことでした。そこで製造のどのタイミングで品質に変化が起きているのかをヒアリングし、チェックの強化を行う必要があるだろうという結論に至りました。例えば加工開始時の品質チェックだけでなく、中間時のチェックを行うことにより開始時以降の変位状況を確認し、後工程への不良品の流出と手直しロスの低減に繋がるようにしました。また、当然ながら工具の摩耗であるとか、そういった変化のチェックも行うように指導しました。

指導の最後になりますが、社内勉強会を実施しました。山本さんに30分ほどのプレゼンを行っていただきました。内容は、加工グループのメンバーにも指導をした「問題とは」、「動きと働きの違い」、「ムダとは」、「5S」の内容について、受講者が講師となって、内容の定着化と他部署への波及を目指して行いました。

実技指導を終えて

株式会社テクノタイヨー 代表取締役の水野 敏雄さんに、実技指導を通して感じたことなどを伺いました。

指導いただく前は、加工現場は機械を止めることなく交代で業務を行っていたことから、なかなか改善する時間がありませんでした。今回の指導で現場からの声を吸い上げることができ、改善活動を行うことでその後も現場からも色々な意見が出てくるなど、他の従業員にとっても良い影響がありました。

他に変化を感じたところは、品質管理の部分です。抜き取り検査のルール化ができたことは非常に効果がありました。恥ずかしい話なのですが、かつては作ったものが全部アウトだったと後から気づくようなことがありました。現在ももちろんゼロではないのですが、少なくともロット全体、作ったものが全てアウトであるといったことはなくなりました。加工高にも変化が見え、生産性が上がったと感じます。

実は受講者の山本は加工グループから品質管理グループに異動になりました。両方のグループは非常に密接な関係で、加工グループとは違う視点から、加工グループの品質を上げて効率を上げていこうという意味で適任だと思います。指導で教えていただいたことを品質管理グループにおいても活かせるよう取り組んでもらっています。

受講者の株式会社テクノタイヨー 山本 拓(やまもと たく)さんに、実技指導を通して感じたことなどを伺いました。

昨年の9月に加工グループのリーダーに任命されました。当時は入社3年目で、その前は生産技術や組み立て、営業などを経験してきましたが、メンバーの中で一番年下でもあり、初めてリーダーに抜擢されて右も左も分からないという状況でした。そのような中、社長から指導を受けてみないかというお話をいただき、それならば是非やってみたいと思い実技指導を受けることになりました。

加工グループに異動してすぐ感じたのは、工具や材料があちこちに置かれているなど整理整頓があまりできていないというところで、変えていきたいと考えていました。
また、他にも加工高が上がる日があっても、業務量が多いなどその関係が見えないため、みんな苦しみながらやっていたところがありました。そのような中で熊本テックマイスターから座学で改善に関する知識を教わりつつ、現場の課題を一覧の表にしていくことによって、私自身も課題の把握がしやすくなり、現場の作業者の困りごとなどもわかるようになりました。

作業者へは「問題点改善リスト」を配付し、どういったことをするか丁寧に説明しながら、進めました。従業員の中には、今の状況に慣れてしまい実際にはやりにくいと感じながらも、こういうものだと思って問題になかなか気づかないといったこともありましたが、中には意見のある方もいたので、今まで聞き出せなかった部分を「問題点改善リスト」を通して聞くことができました。熊本テックマイスターからは、問題点のあぶり出し方から、解決、こういうパターンだったらこうした方がいいとか、解決のパターンまで教えていただき、大変勉強になりました。

また、材料や工具の配置などは加工する段取りに沿って材料や工具の配置を変えていきました。自分自身の希望と熊本テックマイスターの意見を聞きながら、作業は主に私一人で、実際に動かしてみるということをやっていき、結果、がらりと配置が変わりました。他には品質チェックの改善に取り組みました。加工の途中段階でチェックするようにしたのですが、現在ではルール化してそのシステムで品質チェックを行っています。メンバーが協力的で理解を示してくれたことから、今回、短期間で色々なことを変えていったのですが、その点では、非常に進めやすかったと思います。

最後には社内勉強会を行いました。元々、週に1回、会社で改善活動の時間というものがあり、そこに繋げていくことができるだろうと思いましたので「改善」をテーマとして、社内の関係者約15名に参加してもらい、20分のプレゼンと、10分ほどの質疑応答の時間を設けました。普段は人前で話すことは緊張するのですが、今回は、自分で学んで納得した内容であったこともあり、熱意を持って伝えることができました。

将来はまだまだほど遠いとは感じているのですが、会社を良い方向に進めることができるように自分を成長させ、経営幹部の一員になれるような人間を目指したいと思っています

テックマイスターの熊本 義久さんに、指導して感じたことや受講者へ伝えたいことなどを伺いました。

改善活動という意味では非常に短期間での取組でしたので、即効性のある成果を出すことはできません。とはいえ指導ですので、取り組んだ結果、良い方向に向かっていく必要はあるという意味で、プレッシャーを感じていました。そのような中でも、日々の目標などをグラフ化して見えるようにしたことで、社員の取組方が変わってきたなという印象があり、今回の指導は目標を達成できたと思います。

指導で感じたことは、今回はマシニングセンタという設備を使っている現場でしたので、改善活動を行うにあたり、段取り作業や準備作業、レイアウト変更ということには取り組めたものの、マシニングセンタが動いている間は、機械には手を付けられないため、その部分に関わるムダ取りや生産の組み換えはできませんでした。そういう意味では、テクノタイヨーさんの場合、加工の後にある組み立て工程での実技指導であれば、もっと踏み込んでIEの手法が活用できたと思います。

今回は、人にも環境にも恵まれたと感じています。受講者の山本さんが非常に意欲的で、話しをしながら色々なことを、どんどん吸収してくれました。ちょうど前任者が退職された後で、固定観念がなく真っ白な状態でタイミングも良かったと思います。分からないことも積極的に質問してくれ、現場を変えたいという気持ちも伝わってきました。指導者としては、どこまで理解してもらえているのか、どんな質問があるかなど心配していたところもありました。本人は大変そうでしたが、経験年数からすればよくやってくれました。

基礎教育を最初に受けていると業務を進める中で醸成される部分が出てくると思うのですが、中小企業の場合はすぐに実務を進める方が多く、教育の部分にまでは、なかなか手が回らないのだと思います。そのため、今回は必要な知識を身につけていただくため、丁寧に説明し、分からないことは何でも聞いてもらうようにしました。他にも、山本さんには何でもよいので、興味を持って取り組んでほしいということを伝えました。興味を持つというのは、仕事でもいいし、遊びに行ったときに、何かを見たときに、何かそれについて興味を持ってほしい、漠然とただものをみるのではなく、興味を持って見てほしいとお願いをしてきました。そうすると、段々蓄積されたものが後から出てきます。仕事というのは、やはり興味を持ったことの積み重ねだと思っているので、そうすると彼の言う言葉に重みが出てくるようになると思います。