ものづくりマイスター / ITマスター / テックマイスター事業

企業・学校の活用事例

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令和4年度 中小企業・団体編
テックマイスター(滋賀県)

機械加工部門の生産管理システムの活用と
ペーパーレス化、センサーの設置による
ITを使った生産性向上ができる人材の育成へ

本事例については、令和3年度にテックマイスターの指導好事例(https://waza.mhlw.go.jp/meister/company_07/)としてプログラムの前半までの指導内容を掲載しておりますが、ものづくりマイスター制度を利用する中小企業や、新しいものづくりマイスター(+DXやIT部門)にも参考となるよう、令和4年度にプログラムの後半を含む全体の内容を改めて取材し、再構成して掲載したものです。

指導先

株式会社ミヤジマ

事業内容
各種シャフト形状部品の熱間据え込み(アプセット)鍛造および各種金属熱処理加工及び機械加工
従業員数
47名
テックマイスター

山本 俊彦(やまもと としひこ)さん

平成30年(2018年) テックマイスター認定
令和2年 (2020年) ものづくりマイスター認定(金型製作職種)
平成27年(2015年) ものづくりマイスター認定(機械加工職種、仕上げ職種)

42年間大手家電メーカーにて家電の外装金型、精密金型の機能部品の製作、精密器具組み立ての調整作業や工程管理マネジメント業務、精密金型の試作、量産金型の製造、高精度部品の製作に携わる。また、機械加工や製造部門の人材育成として、国家検定や社内検定の訓練指導を行うほか、製造部門の研修事務局として従事。退職後は、ものづくりマイスター、テックマイスターとして活動。主な指導内容は、機械加工分野(主に汎用機、NCフライス、マシニングセンタなどの機械加工、金型製作およびヤスリ仕上げ)における技能検定1~3級レベルの実技指導及び作業現場や設備稼働状況等の把握と分析、課題の洗い出しと改善策を導き出し、コスト削減と品質・生産性向上に向けた指導である。

実施したプログラムの内容

実施プログラム

実施内容
生産管理システムの活用状況と現状把握、問題点対応、工程納期管理表の作成とタブレットの活用によるペーパーレス化、NC設備への信号灯及びセンサー設置の検討と実施、改善活動に関する指導、指導の総括(社内報告会)等
目  的
生産管理システムを活用した生産工程、作業管理、稼働率の見える化等を推進して、業務の改善を図る
受講者
7名
実施日程
令和3年5月~11月 1回あたりの実技指導は3時間
1回目
機械加工グループ全員に対する昨年度の改善内容の説明と今後の進め方について
2回目
生産管理システムの活用状況と現状把握
3回目
生産管理システムで現状の納期管理に絞って問題点の抽出
4回目
生産管理システムの問題点掘り下げと対応策について
5回目
機械加工グループの工程納期管理表作成案とタブレットの活用によるペーパーレス化と情報の共有化について
6回目
NC設備信号灯、センサー設置と活用方法について
7回目
NC設備信号灯、センサー設置の検討とシステムメーカーに改善要望提示
8回目
設備稼働時間の集計、工程管理をデジタル化して運用するための具体的な進め方について
9回目
工程管理、物品発注、段取り時間自動収集、設備稼働管理、ペーパーレス化の計画表に基づいた改善推進について
10回目
設備稼働状況の見える化に対する各種改善について
11回目
生産管理システムメーカーにバージョンアップに向けた提案書の検討と見積り依頼
12回目
紙日報からタブレットを活用した入力方法変更への運用調整
13回目
タブレット運用のルール化と操作面の問題点・改善案について検討
14回目
生産管理システムのソフトと信号灯、センサーの設置日程と検収の進め方について
15回目
生産管理システムの工程管理バージョンアップ不具合の対応
16回目
改善効果へのデータ集計、生産管理システム及び信号灯の取り付けによる運用開始
17回目
改善前後の削減時間・削減効果金額の算定と改善活動の全体まとめ
18回目
指導結果の総括及び社内報告会

実技指導の目標と目標への到達度

No. 目標 到達度
01[指導の1回目] [指導の1回目]受講者を含めた機械加工グループ全員に対する昨年度の改善内容の説明と今後の進め方について説明をして内容を理解する。 受講者含め33名の社員へ実技指導の目標と実施内容について説明を行い、理解を得たので目標に対して到達できたと言える。
02[指導の2回目] [指導の2回目]生産管理システムの活用状況と現状把握を行う。 生産管理システムが導入されてから、蓄積されてきたデータが十分に活用されていないこと、また生産管理システムの「納期管理」の部分について改善すべき点があることが判ったので目標に対して到達できたと言える。
03[指導の3、4回目] [指導の3、4回目]生産管理システムの「納期管理」に絞って問題点の抽出を行い、問題点の掘り下げと対応策を検討する。 「納期管理」については、受注時に機械別にアイテムを登録する必要があり、優先すべき納期の順番が分からなくなること、また登録時に機械別に工程納期が設定されると、本来登録したい機械で工程が組みにくくなるといった問題が起きていることが判った。また、それぞれの対応策を検討したことから目標に対して概ね到達できたと言える。
04[指導の5回目] [指導の5回目]機械加工グループの工程納期管理表作成案とタブレットの活用でペーパーレス化と情報の共有化について検討を行う。 工程納期管理表案の作成と手書きで作成していた日報のペーパーレス化、また日報に注文番号を打ち込んで生産予定を機械毎に振り分けられるようにすること、機械に信号灯とセンサーを設置し設備稼働状況が日報に自動で入力されることなどを目的として、タブレット端末導入の検討までを行い目標に対して到達できたと言える。
05[指導の6、7回目] [指導の6、7回目]NC設備信号灯、センサー設置と活用方法について検討を行い、NC設備とセンサー設置の検討とシステムメーカーに改善要望を伝え、改善案を依頼する。 NC設備信号等についての説明を行い、モデル機械を決め、システムメーカーに設備稼働時間の集計と工程管理をデジタル化したい旨を伝え改善案を依頼することができたので目標に対して到達できたと言える。
06[指導の8回目] [指導の8回目]設備稼働時間の集計、工程管理をデジタル化して運用するための具体的な進め方について検討する。 工程管理、段取り時間の自動集計、設備稼働管理をデジタル化して運用できるように計画表を作成することができたので目標に対して到達できたと言える。
07[指導の9、10回目] [指導の9、10回目]工程管理、物品発注、段取り時間の自動収集、設備稼働管理、ペーパーレス化のための計画表に基づき改善の推進方法について検討する。 実現性のある設備稼働時間の集計や工程管理などをデジタル化するための方法を設備メーカーと検討し、情報収集を行うことができたので目標に対して到達できたと言える。
08[指導の11回目] [指導の11回目]生産管理システムのメーカーにバージョンアップに向けた提案書の検討と見積り依頼を行う。 生産管理システムのバージョンアップのための提案書の内容を精査し、見積依頼までを行うことができたので目標に対して到達できたと言える。
09[指導の12、13回目] [指導の12、13回目]紙日報からタブレットを活用した入力方法に変更した際の運用調整を行う。 タブレット運用のルール化と操作面での問題点・改善案についての検討を行うことができたので目標に対して到達できたと言える。
10[指導の14回目] [指導の14回目]生産管理システムのソフトと信号灯、センサーの設置日程と検収の進め方について検討する。 バージョンアップした生産管理システムと信号灯及びセンサー導入日程の調整を行い、納品されたシステムや設備の確認方法について理解したことから目標に対して到達できたと言える。
11[指導の15、16回目] [指導の15、16回目]生産管理システムの工程管理バージョンアップを行い、生産管理システム及び信号灯の取り付けによる運用を開始、改善効果へのデータ集計を行う。 バージョンアップによる不具合があったため対応を行い、運用を開始することができた。また、改善効果へのデータ集計方法について理解したことから目標に対して到達できたと言える。
12[指導の17回目] [指導の17回目]改善前後の削減時間・削減効果金額の算定と改善活動のまとめを行う。 工程管理、日報入力、複数品の発注業務について、改善前後で比較し、削減された時間と費用を算定、次回の社内発表会に向けて資料の作成を行い目標に対して到達できたと言える。
13[指導の18回目] [指導の18回目]指導結果の総括と社内発表会の実施。 指導の第1回から第17回までに行った現状分析、目標設定、対策の立案と実施、指導の成果などを資料にまとめて、社内の関係者に向けて発表会を実施することができ目標に対して到達できたと言える。

実技指導の成果

機械加工グループにおける生産管理システムのバージョンアップとタブレット導入による日報等のペーパーレス化の実現、工程管理の簡便化、発注業務の簡便化及び信号灯とセンサーの設置による作業時間と費用の削減。特に機械加工の工程調整時間については、1カ月あたり5時間以上の削減、費用では4万円近くの削減、日報入力については、1カ月あたり4時間以上の削減、費用では3万円以上の削減、複数品の発注業務については、1時間ほどの削減、費用では6千円ほど削減した。

今後の課題

納期管理や日報自動入力など未着手の部分があるので継続して改善活動を行うこと、また今回は機械加工グループのみの取組みであり、鍛造や熱処理工程グループなど社内全体では生産管理システムの活用ができていないので、今後も引き続き納期管理に絞って活動を推進していく必要がある。

テックマイスターの
実技指導を依頼した理由

株式会社ミヤジマ 技術営業部 リーダーの石田 陽一(いしだ よういち)さんに、
実技指導を依頼した背景や指導にあたっての準備などについて伺いました。

背 景

弊社では、ものづくりマイスター制度開始の平成25年度から、機械保全や機械検査職種で実技指導をお願いしていましたが、テックマイスターについては、令和2年度に弊社が滋賀県で初めて依頼したと聞いています。昨今のIoTやDXについては、10年、20年先を見据えて、中小企業として取り組む必要性を感じていたところでした。そのような中で、滋賀県地域技能振興コーナーから会長あてにIoTやDXなどの指導ができるテックマイスターの実技指導の案内があり、令和2年度と令和3年度に続けて依頼することになりました。
受講者を選ぶにあたり、弊社には鍛造を初め機械加工などいくつかのグループがあるのですが、人数も6名とそれほど多くなく年齢も比較的若い30代前後の機械加工グループのメンバーを主にご指導いただくことになりました。
令和2年度にご相談させていただいた段階では、現場のIT化を進める前に、業務の見直しが必要であることがわかりました。設備などは、5年前に新しい工場を建て、移設した当初の配置のままで段々と動線が悪くなっていました。そういった状況で加工段取り時間の短縮や、作業者の分担の明確化、現場の整理整頓などを行わないといけない状態でしたので、まずは先にその問題点を解決していくことになり、その後、指導の途中から、もし次年度も実施できるのであれば「作業工程の見える化(IT化)に進みましょう」ということになりました。
令和2年度の指導が目標どおり進みましたので、令和3年度は次のステップの指導を継続してお願いいたしました。ご指導いただく内容は開始前の4月に一度集まって打合せをした後、数回電話等でやりとりしながら生産管理システムを活用した生産工程、作業管理、稼働率の見える化を推進して業務改善を目指しました。主な受講者は、機械加工グループのリーダーと私を含めて7名、期間は5月から11月に全部で18回実施しました。

指導内容

テックマイスターの山本 俊彦(やまもと としひこ)さんに、指導の詳細について伺いました。

テックマイスターとしての活動は初めてで、お話があった当初は「現場改善」を中心に令和2年度のみ実施の予定でしたが、指導を進めていく中でITを駆使した生産効率の向上と現場の改善能力を高める必要性を感じ、現場の担当者や滋賀県地域技能振興コーナーの方と話し合って2年計画で進めることになりました。令和2年度については、全17回の指導で「加工段取り時間の短縮」、「業務見直し」、「データの見える化」、「工具等の配置変更」などを実施し十分な効果を感じることができました。定量的な効果としては、設備稼働について月90時間以上削減することができました。また、定性的な効果としては、機械加工グループの全員の取り組みに対する意識が向上し、一人ひとりが自発的に行動するようになり大変良かったと思います。

令和3年度に入り指導の具体的な内容を検討する中で、受注から最終の出荷までの流れについて担当者から「モノと情報のフローチャート」を用いた説明を受けたところ、生産の流れは正流に見えました。しかし、現場でモノの流れを見ると工程間での調整作業が多く、材料の手待ち時間、納期の変更などが日常的に起きており、不正流であることがわかりました。そこで、以前勤めていた企業で携わった方法、例えばトラブルを原因究明するためにPDCAサイクルを回しながら行う工程品質の改善、設備メーカーと設備の仕様変更を行うことで実現させた生産性向上と納期・コスト短縮化、システムメーカーに依頼して行った生産管理システムのバージョンアップとペーパーレス化などの経験を活かして取り組むことができそうだと思いました。
令和3年度は令和2年度の改善効果が出たこと、また令和2年度の途中で決めたこともあり、事前に生産管理システムのバージョンアップや加工設備メーカーへシステム導入について注文するなどを予定することができました。一方、当初は全15回の指導予定でしたが生産管理システム改修の遅れなどがあり、訓練の途中から日程を変更し、3回ほど延長することになりました。
指導にあたっては回によって異なりますが、平均して2時間前後かけて資料やグラフ、報告書などを作成しました。また、受講者には当日の訓練内容を必ず議事録にまとめ、活動内容が従業員同士で共有するようお伝えしました。

5月から11月にかけて約半年にわたって指導を行いましたが、5月から7月は各3回、8月に4回、9月に3回、10月と11月に各1回実施しました。初回に社員の方々に対して、令和2年度の改善内容と今後の進め方について説明をしました。指導の2回目から4回目にかけては、現状把握と問題分析を行い、5回目から主に3つのことを目標とし、指導していきました。1つ目は「機械加工の工程調整時間の短縮のための生産管理システムのバージョンアップ」、2つ目は「情報共有及び情報共有のペーパーレス化を目的としたタブレット端末への日報入力及び信号灯・センサーの導入等、3つ目は「発注作業短縮のための生産管理システムのバージョンアップ」です。また、最後の2回で「改善活動前後の削減時間と削減効果金額の算定」と、総括と受講者の「社内報告会」を行いました。

初回の指導では、今回の受講者だけでなく社員47名の方に令和2年度の改善内容の説明と今後の進め方について伝えました。
ミヤジマさんで使用されている生産管理システムは、10年以上前に導入したもので、その中にデータが蓄積されているものの、有効に活用されていませんでした。ただ、システムは全ての部署と繋がっているので、機械加工グループだけが内容を把握していればよいというものではありません。そのため、他のグループの方にもこれから実技指導の目標とこれから実施することを説明する機会を設け、協力してもらえるようにしました。

指導の2回目から4回目(5月から6月)では、元々会社で使用していた生産管理システムの活用状況と現状把握を行い、その中でも特に納期管理に絞って、問題点の抽出を行いました。また、受講者は生産日程の現状把握を行うため、他部門にも積極的に協力要請を行いました。その後、生産管理システムの問題点を掘り下げ、対応策について指導しました。この生産管理システムの現状把握と問題点の分析により、生産管理システムで行っている「工程管理」、「日報入力」、「複数品の発注業務」の項目でバージョンアップが必要なことがわかりました。

指導目標の1つ目である「機械加工の工程調整時間の短縮」については、生産管理システムの課題として、現状、受注時に1つのアイテム毎に機械別に登録していたため、優先すべき納期の順番が分からなくなるということがありました。また、登録された工程納期が作業指示の記載される伝票(作業指示記録伝票)には反映されるものの、個別の機械では編集(設定)ができないこと、登録時に機械別に工程納期が設定されてしまうと、本来登録したい機械で工程が組みにくいなどの問題がありました。
そこで、課題を掘り下げて解決策を考えたところ、受注時に登録された機械、工程納期、作業指示記録伝票、不要なデータの削除または編集など納期順に並び替えられるよう、柔軟に対応できるようにすること、各工程の作業時間の見える化を行うには、段取り時間加工時間を集計する必要があるということ、また、マスター登録ができるようにして、工程を組み直すことなく作業時間短縮と精度の高い納期管理ができるようすることが必要だとわかりました。
指導の流れとしては、6月に入り、機械加工グループが工程納期管理表の案を作成し、生産管理システムのメーカーと連絡を取り、こちらの課題についてシステム上でどのような対応ができるかの問合せや生産日程の現状把握をするため、他の部門にも改めて協力要請を行いました。また、7月の指導では、工程管理、段取り時間の自動収集、設備稼働管理をデジタル化して運用できるように具体的な進め方を指導し、計画表を作成しました。8月には、設備メーカーと設備稼働時間集計や工程管理のデジタル化をするための方法について検討を行いました。生産管理システムメーカーによるバージョンアップに向けた提案書の検討と見積り依頼を行い、9月末(指導の16回目)にようやく運用できるようになりました。工程調整時間については、指導前までは前工程の仕事が終了後、その都度、機械加工で必要な作業項目のリストが出ているだけでした。リストを見ながら手動で工程の納期に合わせて一つ一つ抜き出し、振り分け、それを機械毎に渡しており、生産管理システム上では8工程ほど必要でしたが、システムのバージョンアップを行い、機械毎のデータを一度にExcelファイルに出るようにしたことによって4工程で行えるようになりました。また、1日あたりの工程調整時間に費やす作業時間を30分から半分の15分にまで削減することができました。

指導目標の2つ目である「情報共有及び情報共有のペーパーレス化を目的としたタブレット端末への日報入力及び信号灯・センサーの導入等」については、朝礼やグループミーティング時に従業員間での情報共有を図るため、手書きで作成していた日報をペーパーレス化すること、また日報に注文番号を打ち込んで生産予定が機械毎に振り分けられるようにすること、機械に信号灯とセンサーを設置し設備稼働状況が日報に自動で入力されることなどを目的として、タブレット端末等の導入を行いました。
6月頃から具体的にタブレットの活用によるペーパーレス化と情報の共有化についてお話をさせていただきました。また、NC設備へのセンサー設置とその活用方法について、検討しました。生産管理システムの運用面についても、1つ目の目標である工程調整管理と共に、メーカーに対応策について問合せを行いました。7月には、モデル機械を決め、信号灯及びセンサー設置の検討と、システムメーカーに設備稼働時間の集計と工程管理をデジタル化したい旨の要望を出しました。

具体的には、稼働率から生産性が向上しているかをみていこうと、まずは1台のNC旋盤を選び、一番安価でWi-Fiを通じてパソコンに飛ばして蓄積する事ができる信号灯(パトランプ)を設置しました。
NC旋盤運転時は「加工中は信号灯が緑」、「加工していない時は黄色」などランプの色が変わります。それらの情報をWi-Fiを通じてパソコンに飛ばし、蓄積し、そのデータを使いグラフ化する事で稼働率の見える化が可能になります。その情報から各色のランプの点灯の長さで今どういう稼働状況かが見えてきます。更に、他の人に比べて黄色の時間が長いと何かが起こっている、例えば製品へのアプローチの時間が他の人に比べて長いということも判り、ムダを見つけることができます。
8月に入り、工程管理、段取り時間自動収集、設備稼働管理、ペーパーレス化を計画表に基づいて進め、特に計画表については現場のタブレットで見られるようにしました。また、目標の1つ目と共に対応策を依頼していた生産管理システムメーカーからバージョンアップに向けた提案書が出てきたことから、検討し、見積り依頼をしました。メーカーの提案内容から、紙日報からタブレットを活用した入力方法に変更した際の運用のルール化と操作面の問題点・改善案についての検討、またこの間、生産管理システムのバージョンアップと信号灯の点灯条件変更を行うため事前に機械メーカーと連携を取って進めました。

終盤の9月には生産管理システムのソフトとパトランプ、センサーの設置日程と検収の進め方、生産管理システムの工程管理バージョンアップに伴う不具合への対応、改善効果へのデータ集計についての指導をしました。システム業者及びパトランプについて業者の取り付け工事が計画より大幅に遅れていましたが、9月末になってようやく運用が始められるようになりました。
今後は、活用後の作業性や非稼働時間の削減について分析し、次に活用できるように運用しながら問題点を抽出すること、また改善後の非稼働時間集計を行い、改善効果をまとめるよう伝えました。

指導目標の3つ目である「発注作業短縮のための生産管理システムのバージョンアップ」について、生産管理システムの現状分析をしたところ、発注業務においても改修が必要な箇所が見つかりました。
発注業務では、購入部品1点につき1枚ずつ注文書を発行していたので、購入先に注文書を送付する際に繰り返しメールに添付して発注しており、効率が悪いと感じていました。そこで、指導の9回目に発注について改善推進の検討を行いました。こちらも目標の1つ目と2つ目と同様、システムのバージョンアップに向けた提案書の依頼を行い、購入部品が複数点の場合は、1枚の発注書でまとめられるようになりました。また、繰り返しオーダーするものは、チェックを入れるだけで複数選択と購入部品の発注ができるように修正しました。

指導の17回目では、改善前後の削減時間と削減効果金額の算定と全体のまとめについて、最終回では、指導結果の総括と受講者による社内報告会を行い、終了後も継続的に活動できるようお伝えしました。社内報告会では、34枚のスライドに指導内容のまとめをし、実技指導による成果について、会長をはじめ社員に向けて発表しました。機械加工の工程調整時間については、1カ月あたり5時間以上の削減、費用では4万円近くの削減、日報入力については、1カ月あたり4時間以上の削減、費用では3万円以上の削減、複数品の発注業務については、1時間ほどの削減と費用では6千円ほどの削減に繋げることができました。

実技指導を終えて

株式会社ミヤジマの技術営業部 リーダーの石田 陽一さんに、実技指導を通して感じたことなどを伺いました。

当初、会長から話しを聞いた時は、鍛造グループで指導を受けるようにと言われていましたが、DXやITという点でリーダーを決めるのが難しいという状況でした。また、人数も多く浸透させるのは大変そうだということで、最初は無理だろうと思っていました。ただ、改めて会長から、それだったら人数も少なく比較的若いメンバーの機械加工グループでどうかと提案があり、説得された形で始めました。「まずはやってみよう」ということで、山本テックマイスターとお話させていただく中で、課題が見えるようになり、少しずつ進んでいったというのが実情です。悩みとなっていた課題を聴いていただき解決できるところは解決できましたし、また新たに課題が見えてきたこともあり、結果として指導を受けて良かったと思っています。

社内では、以前よりTPM活動(Total Productive Maintenance)をしていました。生産システムに存在するあらゆるロスをゼロにするという活動なのですが、普段やっていて当たり前になっていることは、ロスであるということになかなか気づきにくいということがあります。山本テックマイスターから「一歩でもできるだけ近く、たとえ1秒でも短くすることを意識して続けましょう」という指導があったことで、機械加工グループのメンバー間ではTPM活動に対する意識が芽生えて、とてもうまく仕事が回るようになっていると思います。また、受講者の年代が比較的若いということもあって、スマホを操作するように、タブレットの導入やタッチパネルでの操作なども抵抗なく進めることができました。

成果としましては、実技指導と設備投資により、実際に生産量が目に見えて増えました。機械が1.5倍で、人は増えていないのですが、安定した生産量を確保できるようになり、売上が倍近くになりました。それはやはり、今まで機械のムラや人のムラがあり機械が動かないということがあったためですが、今は、そういうことがなくなり、要は売上が全部見えるようになっているのでどれだけ加工したかを見ると結構高止まりしている状況です。

また、今後もIoTを学んでいくため、色々と勉強するようになりました。例えば、事務所で使用しているパソコンを2画面ワイドにして、ファイルの切り換え時間をなくすなど少しずつですが、取り組みを続けています。
他にも総務や経理部門では、毎月決まった集計の作業があるためできるだけ費用をかけずにRPA(Robotic Process Automation)ツールの導入などを検討するなど、要はITを使ってみんなが楽に仕事ができるようにしていきたいと思います。

受講者の株式会社ミヤジマ 機械加工グループリーダー福田 史彦(ふくだ ふみひこ)さんに、実技指導を通して感じたことなどを伺いました。

実技指導を終えて、目に見えて効果が出るようになりました。例えば、工程管理では生産管理システムのバージョンアップにより、過去3回の実績から1回あたりの平均タクトタイムが表示され、生産するロット数について前のように勘に頼って工程表を作成するのではなく、実績に基づいて工程を組めるようになりました。また、機械毎にタブレットが1つあり、社内の共有サーバーにアクセスできるため、プリントアウトして口頭で説明をする必要がなくなり、今では作業者がタブレットを見るだけで次にする作業が分かるようになりました。

また、加工プログラムでコードを入力すれば、加工の終了が近づいていることを信号灯(パトランプ)を点滅させる事ができるように機械メーカーに依頼をしました。
生産性というのは、機械加工の場合、機械で削っている時間ですので、加工するモノを機械に取り付けている時間は生産していない時間という考え方で、裏を返せば削っている時間をいかに長くできるかということです。
通常、加工終了時に信号灯の色やブザー音で作業者に知らせます。一人で加工機を複数台扱っているのでそのブザー音などで気づきその機械に行き次の加工を始めます。気づいてからの移動では次の加工までにロスが発生します。
改造後は、加工終了の少し前に信号灯が点滅することで、他の機械で作業している作業者が点滅に気づき、事前に機械に移動し加工終了後、すぐに次の加工に移ることが可能になりました。そうすれば、その機械の削っていない時間をできるだけ削減することができます。山本テックマイスターのご指導により効果が実感できましたので、指導期間後に加工の機械を1台増やしたのですが、その機械も同じようなシステムにしました。また、これから新たにもう1台導入する機械にも同様のシステムを入れる予定です。

生産管理システムのバージョンアップと新しくタブレットや信号灯を導入しただけでなく、最終回に社内報告会を行いました。会長とグループのメンバー全員に結果を伝えました。特に経費の削減になること、この活動を続けていくことで、更に会社が潤い自分たちの給料に還元されることを伝えました。また、削減効果については全て金額を出して発表しました。そうしたことで、メンバーの意識は間違いなく変わってきたと思います。指導が終わった後も生産性向上のためのTPM活動をやっているのですが、メンバー全員で話し合って方向性を決めていくなど、活動のベクトルがすごく合ってきました。この活動はずっと続けていて、実技指導の延長のような形です。みんなで動線の事を考えたり、ちょっとでも表示をつけるなどして、モノを探す時間を減らしたり、基本的な部分は引き続きやっています。生産性も売上の部分で数字が出ているので、着実に成果が出ていると感じています。

実技指導が終了してから、1年ほど取り組んでいることがあります。アイテム毎に、こういう刃物を取り付けるといったことや、加工時間はこれだけ必要であるといった情報が書かれた「加工要領書」という紙ベースのファイルがあり、この要領書は数百点ほどあるのですが一枚ずつパソコンに入力してデータベースを作成しています。今はまだ必要な要領書は紙に印刷して、マグネットで貼っているのですが、今後の目標として、紙だったら数枚必要なところを、データにすればモニターをスクロールして見ることができるような状態にし、更に工具などが工場のどこに配置されているか分かるような情報も載せて、いずれは完全にペーパーレス化していきたいと思っています。

テックマイスターの山本 俊彦さんに、指導して感じたことや受講者へ伝えたいことなどを伺いました。

今回の指導で感じたことは、ミヤジマさんは経営者の理解があり大変協力的であったため、マイスターとして教えやすい環境でした。また、受講者の石田さん、福田さんのお二人は現場をよく見ており、後輩たちへの気配りや気遣いができ、誰にでも平等に接し相手の気持ちになって考えるなど人間的に素晴らしい方々だと思います。
お二人とは相談しながら、大体3週間ほどかけて発表の資料作成を行い、指導の最終日に社内報告会を行いました。報告会では受講者はもちろん会長、関係者にもご出席のお願いをしました。結果として、最終訓練日までに活動成果を導くことができ、受講者自身に成功体験を味わってもらえて良かったと思います。

一方、苦労した点としては、生産現場で改善活動の検証を行うには、モノの流れが寸時にわかって良い面がありますが、反面、作業者へデータ収集のお願いや、改善状況を知るための聞き取りをする必要があり、繁忙期で忙しい作業者の手を止めないように改善活動を進めなければならないこと、また、受講者だけでなく現場の作業者一人ひとりに活動の趣旨、目的を理解して協力いただかなければなりません。また、反省点として原価管理システムの操作方法を知る上で、取扱説明書や過去のバージョンアップ履歴及び仕様書などに、事前に目を通して理解を深めることができなかったこと、現状分析などのITを活用した新しいデータの取り方、分析方法について指導が足りなかったということがあります。実践部分では取り付け工事など計画の遅れがあり、活動日程の延長を余儀なくされたこと、改善後の検証期間が短く予定していた活動の成果を出すことができないなど、課題も残りました。

受講された方や他の従業員の方々にお伝えしたいことは、今回の改善活動で全て完了したわけではなく、むしろ取り組んだ以上に課題が見えてきたということです。指導の最終回でお話しをしましたが、現場改善は永遠のテーマであり、職場の全てのムダを洗い出し、全員参加で引き続きPDCAサイクルを回しながら改善活動を推進していただきたいと思います。生産管理システムの更なる活用で、鍛造、熱処理工程の生産進捗の見える化、納期管理の精度アップ、日報自動入力、ペーパーレス化など行い、生産性向上に向けた改善活動が社内全体で推進していって欲しいと思います。
企業側に必要な姿勢は、どのような人材像を強く求めているかが明確になっていることで、企業のトップが社員の人材育成を中長期にわたり、企業は利益を出しながらその範囲内で教育していかなければならないと思います。教育は、利益をいくら社員教育に投資するかだと思います。3カ月、半年くらいの計画性を持って、次の現場は工作機械を使って削ってみようとか、新人にそういう話ができるようになるのが大切であると考えますし、そうすることで新人のモチベーションも上がっていくと思います。