- 指導先
- ものづくりマイスター
千葉県立成田西陵高等学校
創立100年を越える歴史と伝統のもと、多様な学科を設置した専門高校です。校訓である「独立自尊・積極進取・質実剛健」を行動指針として、普通教育と専門教育を併せて行い、幅広い教養と専門的な知識・技術を身につけた人材を育成します。特にキャリア教育に力を入れる本校は、「主体的・対話的な深い学び」を実現し、「確かな学力」「豊かな心」「健やかな身体」とともに「生きる力」を育成することを目標としています。
杉山 英夫(すぎやま ひでお)さん
自社でとび職、ブロック建築などの技能を身につけ、取締役会長に就任した現在もなお現場指導に携わっています。職業訓練校の校長などを務めながら、とび及びブロック建築の指導員も兼務するなど若手技能者の指導に努めてきました。正確な作業工程を目指しつつ、仕事への興味を持ってもらえるように、工夫しながら指導することを心がけています。
ものづくりマイスターの
実技指導を依頼した理由
現場で必要なことを
肌で感じ
即戦力と
なれる技能者を育てる
千葉県立成田西陵高等学校
土木造園科 主任教諭
下条 泰祥(しもじょう やすあき)さん
背景
即戦力として求められる技能を
身につける
もともとは、2年生の夏休み2週間を使って、当校独自の校外実習を行っていました。しかし、新型コロナウイルス感染症が拡大し、学校外での実習に取り組めない状況になったため、学校内で実施できるプログラムとして、ものづくりマイスターによる実技指導を依頼しました。熟練の技能者にお越しいただき、技能とともに現場の仕事について深く学ぶことができるので、これまでの活動以上に学びの多い機会となっていると感じます。生徒たちには実習を通して、現場の即戦力として求められる技能を身につけてほしいと思っています。「課題研究」という授業に「指導プログラム」を組み込むことで、学校の時間割に沿って無理なく取り入れることができています。
効果
生徒たちの自信に
つながる現場力を学ぶ
現場を長年経験してきたプロフェッショナルから指導を受け、生徒たちの実習に取り組む姿勢、顔つきも変わり、このような環境で学べる喜びも伝わってきます。ブロックを使って一つの構造体をチームで造りあげることから、団結力も身についてきたことを感じます。役割分担をしながら協力する姿は頼もしく見えますし、就職後、上司や先輩と社会人としてのコミュニケーションをとる観点からも大変良い機会となっています。また、マイスターから現場で使う用語や、道具の使い方を学び、現場に即した実技指導により生徒達の技能が向上し、自信がついていく様子が見て取れます。例年行っていた「校外実習」はリアルな現場を体感できる、という良さもありますが、校内の設備、環境で高い技能をじっくり丁寧に指導していただける点が、マイスターによる校内実習の良い点だと感じています。
実施したプログラムの内容
指導では、配置図を読み、設置面を整備、地面の床堀からブロック積みの基礎工事、鉄筋の扱い、ブロック積みを体験。生徒一人ひとりがすべての工程に携われるように配慮しながら進め、技能検定2級レベルの技能に一通り取り組み、最終目標にはブロックで壁3面の囲いを造ることを掲げました。ブロック建築は、仕上げの美しさはもちろん、ブロックを支える基礎部分や内部に通した鉄筋など、見えない部分の作業が大切になりますので、それらの作業を丁寧に指導します。
実施プログラム
- 実施内容
- ブロック建築の実技指導
- 目 的
- 技能検定2級レベルの技能の習得
- 受講対象
- 土木造園科6名(3年生)
- 1回目
- 水盛作業(配置図に従って位置や高さの決定)
- 2回目
- 根切り作業(基礎をつくるための地盤掘り)
- 3回目
- 地業(根切りの底の強化)
- 4回目
- 鉄筋工事(安全性確保のための配筋)
- 5回目
- コンクリート工事(ベースコンクリート打設)
- 6回目
- ブロック工事(ブロック積み)
Crosstalk Interview
深い理解につながる
現場を熟知した
マイスターの指導
Talk member
ものづくりマイスター(ブロック建築・とび)
杉山 英夫(すぎやま ひでお)さん
土木造園科3年生
古徳 公一(ことく こういち)さん
ブロックを積みあげてつくる建築
強度を支える見えないところを大切に
現場や職業訓練校で多くの若者に指導をされてきた、杉山マイスター。生徒たちにブロック建築の技能を指導するにあたり、どのようなことに重点を置いていらっしゃるのでしょうか。
杉山マイスターブロック建築は決まった形のブロックを積んでいくため、一見簡単そうに見えます。しかし、外壁に使われるためのしっかりとした強度、そして見栄えの良さが求められます。より良いブロック建築を造るためには、ブロックを積む基礎部分をきちんと工事すること、ブロックを支える鉄筋を適した配置にすることが重要なんです。けれども、「基礎」と「鉄筋」はできあがってしまえば見えなくなる箇所なので、そういった裏側の作業がいかに大切か、どんな工程を踏んでいるのかをみんなに体感してほしいと思い、指導に取り組んでいます。
古徳さんは、マイスターからどのような指導を受けましたか。
古徳まず、ブロックを積むための地をならす作業から始まり、穴掘り、砂利詰め、コンクリートの流し込みなど、基本から丁寧に指導していただきました。鉄筋を使った土台作りもしっかりと築けたと思います。作業をしながら、「なぜこの作業が大切なのか」を話していただき、ブロックを積む基礎部分が強くないとブロックを積む際にズレが生じて、強度面で不安が残ってしまうリスクをよく理解できました。
受講者全員が
すべての工程を体験する
実技指導は、どのように進められたのでしょうか。
杉山マイスターブロックは人の手で積んでいきます。つなぎのモルタルを乗せた上にブロックを置く際にも、ズレないためにはどう置くのがよいのか、整えるときの軽く叩く力加減はどのくらいなのか、結局は自分でトライしてみないとわからないんです。生徒たちが作業している最中に「左手でこう押さえて」など手順を丁寧に説明していくことで、注意点を自分で理解できるようになるので、時間をかけてでも基本を細かく教えるようにしています。自ら体験するという点では、ブロックを運んだり、モルタルをこねたりとさまざまな作業を、一人ひとり順番にすべての作業に触れてもらっています。とにかく、体験して作りあげる楽しさ、達成感を味わってもらいたい。そうしてブロック建築に興味を持ってもらえるのが、理想です。
古徳さんは、ブロック積みを学んでみて、いかがでしたか。
古徳始めにマイスターから手本を見せていただき、その後私たちが作業します。マイスターがとても素早く簡単そうにブロックを積んでいくので、自分も同じようにできると思ったのですが、実際にやってみるとその大変さがわかりました。実践すると最初の作業である、ブロックをつなぐモルタルをコテで適量すくうことから苦戦しました。困っているとマイスターがアドバイスをくださって、何とかコツを掴むことができました。ブロックがうまく積めると嬉しいですし、さらに反復練習して技を磨きたいと思いました。
授業ではイメージが湧きづらいことも
指導を受けて理解ができた
ブロック建築の指導を通して、伝えたいことはありますか。
杉山マイスターブロック建築に限らない話ではありますが、職人仕事は手抜きの作業をすると、すぐに信用を失います。そうならないように、責任を持ってきちんと仕事をするという姿勢も伝えたいことの一つです。そのためにも、若いうちに仕事に役立つ資格を取るなどして頑張ってほしいと思います。また今回、ブロック建築についての基本をしっかり学んだので、ブロックをカットして形をつくる、曲線のある構造物を作るなど、今後は応用もできるようになると思います。作業が進むにつれて、生徒たちが上達していく姿を見るとこちらも嬉しいですし、そうしたやりがいも含めて、若い人たちに教えるのは楽しいですね。
最後に、マイスターの指導を受けた感想をお聞かせください。
古徳鉄筋の組み立てやコンクリートの配合など、これまで授業だけではあまりイメージが湧かなかったところを、マイスターの指導を受けたことで深く理解することができました。わかりやすく一から説明してくださり、実演していただけたのがとても良かったです。マイスターの技能レベルの高さに加え、その段取りの良さ、道具の使い方の巧みさに感動しました。将来、土木関係の仕事についた際は、マイスターのようにそつなくこなせる職人になりたいと思っています。受講したメンバーと力を合わせて一緒に作業できたのも、良い経験になりました。