造園のスペシャリストを
目指して
地域で活躍する人材を育成

令和3年度 
学校編
造園

このページを印刷

  • 指導先
  • ものづくりマイスター

三重県立四日市農芸高等学校

三重県立四日市農芸高等学校は、三重県北勢地域唯一の農業学科と家庭学科を併設する専門高校です。令和2年に学科改変し、農業学科は農業科学科、食品科学科、環境造園科の3学科になりました。2年生からは食料生産、施設園芸、食品科学、食品開発、造園技術、自然環境の6コースに分かれて専門的な学習を行います。それぞれの専攻を活かして将来、地域社会で活躍できる人材を育成しています。

豊田 善太郎(とよだ ぜんたろう)さん

豊田マイスター自身も三重県立四日市農芸高等学校の卒業生。「ものづくりマイスター等事業」が始まる以前から、母校の生徒に向けてさまざまな造園の実技指導を行っていました。指導を受けてスキルアップした生徒たちによる、技能検定の合格率は100%を達成。さらには、教えた生徒が技能五輪全国大会においても入賞するなど、指導による確かな技能向上に定評があります。

ものづくりマイスターの
実技指導を依頼した理由

レベルの高い指導で
「選ばれる学校」になる

三重県立四日市農芸高等学校
教師
前田 竜矢(まえだ たつや)さん

背景

プロの技能を身近に感じる体験を

地域社会で活躍する人材となるために、早い段階でプロフェッショナルに教えてもらうことは生徒にとって有益だと私は考えます。そのため以前より、プロに講師を依頼することはありましたが、技能振興コーナーより「ものづくりマイスター等事業」の話を伺い、本校の卒業生である豊田マイスターから実技指導をいただくことが決まりました。少子化が進む現在、一人でも多くの子どもたちに選ばれる学校となるためには、新しいことにも積極的に挑戦していかなくてはなりません。「ものづくりマイスター等事業」を活用し、よりレベルの高い指導を学校一丸となって実践していきたいという想いがありました。

効果

職業意識が向上し、離職率も減少

造園自体に興味を持って、生業にしたいと思えるように生徒たちを導くことが、教師である私たちの役割だと考えています。学校側が「造園の道」へ向かうように背中を押すのではなく、「造園が好き」と口にできる生徒が増えるように仕掛けを計画する日々です。
マイスターによるプロの技を間近で学ぶ機会を持つことで、生徒たちは造園という仕事のビジョンを描けるようになり、造園への興味関心へとつながっていくようです。毎年30~40%の生徒が造園関連の進路に就いています。「好きだから、造園にします」そう口にできる生徒が増えたことが、指導を経ての大きな収穫です。それだけではなく指導を受けた生徒たちについては、造園関係の仕事に就いたあとの離職率も減少しました。スキルアップした生徒たちの中には、技能五輪全国大会において成果を挙げている生徒もいます。さらには、ものづくりマイスターによる指導の機会は、生徒だけではなく教職員も学びとなる部分もあると感じています。

実施したプログラムの内容

造園技術コースでは卒業後、即戦力として社会で活躍できる人材育成のため、専門教育と資格取得に力を入れた教育を実践しています。ものづくりマイスターと学校職員がタッグを組み、チームとして継続した指導を実施。造園職種の技能検定2・3級レベルの竹垣、石敷等の技能指導をはじめ、技能五輪全国大会で求められる石積みや石張りなど、より高いレベルを目指す生徒に向けた技能指導なども行っています。

実施プログラム

実施内容
技能検定2・3級レベルの試験課題を用いた実技指導
技能五輪全国大会課題を用いた実技指導
目  的
造園技能の向上
受講対象
環境造園科30名(2年生)、環境造園科10名(3年生)
1回目
実技指導の進め方の説明など
2〜5回目
竹垣の製作、石敷等の技能指導、通し練習による指導
6〜10回目
石積み、石張に石敷等の技能指導、通し練習による指導

Crosstalk Interview

「やればできる」
という実感が
ものづくりを面白くする

Talk member

ものづくりマイスター(造園)

豊田 善太郎(とよだ ぜんたろう)さん

環境造園科3年

勝又 大雅(かつまた ひろまさ)さん

環境造園科3年

小﨑 壮汰(こざき そうた)さん

マイスターの指導はフレンドリー
楽しみ興味を持つことで、造園が好きになる

豊田マイスター自身もこの学校の卒業生とあって、思い入れは人一倍。初回の印象について、受講者にお聞きしました。

勝又最初に先生から「造園のプロが来る」と聞いたときに、職人の世界を想像すると非常に厳しい方なのでは、と思い込んでいました。しかし実際はとても優しくて、フレンドリーに話しかけていただけたので、職人のイメージが変わりました。

小﨑造園業といえば、いまだにしっかりとした上下関係が残っているというのを聞いていて、怖いイメージもありました。しかし、豊田マイスターはまだまだ未熟な私たちにも、わかりやすく丁寧に指導してくださっています。

豊田マイスター造園というと、昔はスパルタ方式で教えるという風潮もありました。しかし、現在は違います。生徒たちにできる限り興味を持ってもらい造園が「楽しい=好き」になってもらう意識で指導しています。

勝又驚いたのは、豊田マイスターの所作にまったく無駄がないことです。作業をはじめる前には道具などを適切な配置に準備されるなど、そういった作業の先を見越したうえでの姿勢を自分も学びたいなと思いました。

小﨑私は、剪定の実習が印象に残っています。木を見た際に、どの枝をどのように切ればよいか検討がつかなかったのですが、豊田マイスターはスルスルっと木に登り、次々と枝を落として、あっという間に完成させていきました。生徒たちみんなが、その動きに思わず見とれてしまいました。

新しいことができると、自信が生まれ
「もっと上手くなりたい」と思う

経験豊富な豊田マイスター。造園の技能指導を通して、プロならではの技やコツを生徒たちに伝授しています。その高いスキルに、驚きを覚える生徒も少なくありません。

勝又私の場合、丁寧な作業を心がけるあまり、進行が遅くなってしまうことが悩みでした。豊田マイスターからは、学校の授業では習うことができない、作業を効率化するアイデアを教えてもらいました。

小﨑手順の中でのちょっとしたコツを教えてもらえたことが自分自身の成長に繋がったと感じています。例えば、竹垣造りで竹同士を結束するときに、しっかり結んだつもりでも紐が緩んでしまうことが多かったんです。どこを押さえると固く結べるかなど細かな指の動きまで教えていただき、結束の仕方をマスターできました。

豊田マイスター講義で学ぶよりも実際に自分で手を動かしたほうが身につきます。剪定などでも、失敗をおそれる生徒より、思い切りよく切れる人の方が成長は早い印象です。まずは積極的にやってみることが大切だと感じています。

勝又技能検定2級レベルの練習では、一段と作業量が増えて、最後には時間が足りなくなります。そこで教わったのは、無駄を減らす方法です。例えば竹垣造りでいうと、最初だけ定規を使用して竹を一筋だけ正確な長さに切ります。その後、切り取った竹の長さを目安にして、残りの竹を一気に切っていく。そうすることで、定規を使わずに手早く作業を進めることができ、時間の節約になります。効率化の方法を知り、かなりスピーディーに作業を進めることができました。

小﨑新しいことができるようになると自信が持てるので、もっと上手につくりたいと思えるようになります。自分が成長できている実感がありました。

豊田マイスターコツをつかむことで、「やればできる」という実感を掴めます。そうすると、だんだん造園が好きになるし、それぞれの作業も楽しくなります。公園や庭など自分の造ったものが長く残っていくのが、造園の仕事です。その素晴らしさをみなさんにも感じてほしいと思っています。

より高いレベルを目指して
夢に向かって歩んでいく

業界の後継者不足が深刻な課題だと語る豊田マイスター。だからこそ一人でも多くの若者に、造園の道を志してほしいと伺いました。生徒のお二方、そしてマイスターの今後の目標などをお聞かせください。

小﨑8月に開催された「若年者ものづくり競技大会」への出場が叶いましたが、結果は敢闘賞だったので、まだまだ満足のいく成果を出せていません。引き続き、大会でよい成績を収めたいということと、造園の技能検定1級の試験を受ける際には、満点で合格したいという目標があります。

勝又私の目標は、技能五輪の全国大会で入賞することです。

豊田マイスター四日市農芸高等学校では、造園の技能検定2級までを取得する生徒が増えてきたようです。いまでは、若い職人よりも生徒たちの方が上手だと感じるほどです。それほど、技能レベルは高いものになってきています。

勝又将来は、造園関係の仕事に就きたいと考えています。しっかりと技能を身につけ、いずれは独立して、お客様から指名される造園職人になりたいですね。一緒に学んでいる仲間たちも造園の仕事に就く予定の人が多いので、ともに助け合って、将来一緒に仕事ができると嬉しいです。

小﨑私は動物が好きで犬猫の保護活動をしているのですが、もともと四日市農芸高校に進学したのも、ドッグランや動物のための広場を造ることに興味があったからです。将来は造園業を営みつつ、夢だったドッグランを運営したいと思っています。

豊田マイスター職人の世界で充分に通用する人材を育てることが私の役目。造園の現場で活躍する卒業生に「あの時、教えてもらってよかったです」と声をかけてもらえることも多く、「造園の道」で再会できたときは本当に嬉しい瞬間です。引き続き、業界の未来を担う若者たちを育てていけたらと思います。