ものづくりマイスター / ITマスター / テックマイスター事業

企業・学校の活用事例

このページを印刷

令和4年度 学校編
ITネットワークシステム管理(石川県)

技能競技大会に参加できるレベルを目指して
ITネットワークシステム管理に関わる高度な技術を身につける

指導先

石川県立工業高等学校

学科
  • 機械システム科
  • 電気科
  • 電子情報科
  • 材料化学科
  • 工芸科
  • テキスタイル工学科
  • デザイン科
生徒数
911名(令和4年5月1日現在)
ITマスター

櫻井 浩一(さくらい こういち)さん

平成29年(2017年)ITマスター認定(ITネットワークシステム管理職種)

中学生の時からBASIC※1を、大学生の時にはUNIX※2に触れ、プログラミングと共に学ぶ。また、修士課程では地球シミュレータのソフトウェア開発プログラムを担当。数値流体計算で博士号取得後、民間の企業に就職。CADを使用し、自動車メーカーの流体計算に携わる。現在はコンサルタントとして、また大学や企業研究施設のITシステムの運用、管理なども行っている他、ITマスターとしては小学校でのロボットプログラミング講座や、中学校でのサイバーセキュリティ講座などを実施。デジタル機器の安全な使い方から情報システム管理者に向けた情報資産管理手法や、システム運用の安定化手法と障害時対応手順の考え方などが指導できる。

「BASIC」とは、初心者向けのプログラミング言語のこと。 「UNIX」とは、1969年に当時のAT&T社ベル研究所で開発されたオペレーティングシステムのこと。

実施したプログラムの内容

実施プログラム

実施内容
Windows、Linuxのサーバ構築及びクライアントPCの設定等
目  的
ITネットワークシステム管理職種において、若年者ものづくり競技大会や技能五輪全国大会等に参加できるレベルのITネットワークシステム管理に関わる高度な技術を身につけるため
受講者
6名(電子情報科 1年生3名、2年生3名)
実施日程
令和3年10月~令和4年1月 1回あたりの実技指導は3時間
1回目
BIOSの設定、Debian Linuxのインストール等
2回目
プログラム作成、コンパイルと実行について
3回目
一般ユーザ権限、管理者権限の違い、ファイル単位での権限設定等について
4回目
IPアドレスを利用したネットワーク構築・複数ユーザによるシステム利用・管理者権限の使い方・SSHを使用したリモートログインについて
5回目
サブネット単位での通信範囲、プライベートIP、グローバルIPなど、IPアドレスによるネットワーク管理の基礎
6回目
詳細なシェルの活用方法、プロセス管理・ファイル操作・権限操作系のコマンドについて
7回目
プロセス管理についての概略説明
8回目
ポートごとに割り当てられるサービスの種類紹介等
9回目
これまでの実施内容の振り返りと次回の下準備
10回目
MPICHと姫野ベンチを利用、5台のLinux機を分散型並列コンピュータとして動作させる

実技指導の目標と目標への到達度

No. 目標 到達度
01[指導の1回目] [指導の1回目]BIOSの設定とUSBメモリにDebian Linuxをインストールする。 BIOSの設定について理解できた。Debian Linuxのインストールについては、全員インストールすることができ、目標を達成したと言える。BIOSの設定では、コンピュータの起動前の設定ができること、BIOS設定を変更することで導入されているOS以外を起動することができるなど、セキュリティに問題が生じるリスクがあることも学ぶことができた。また、OSのインストールに触れることで「ディスク」、「ネットワーク」、「ソフトウェアパッケージ」などインストール時に「選択」が必要な項目を把握することができた。
02[指導の2回目] [指導の2回目]プログラムを作成し、コンパイルと実行を行う。 プログラム作成やコンパイルと実行について指導したとおり行うことができ、目標を達成したと言える。UNIXで標準的に使用されるテキストエディタ(vi)を用いてテキストファイルを作成することを目的に、プログラムの作成からコンパイル・実行ができるようになった。また、テキストファイル処理、コマンドの実行方法、プロセスの強制停止など、UNIXシステム管理のさわりを学び、全員がそのレベルに達した。
03[指導の3、4回目] [指導の3、4回目]一般ユーザ権限と管理者権限の違い、ファイル単位での権限設定の確認と変更方法について理解する。IPアドレスを利用したネットワーク構築・複数ユーザによるシステム利用・管理者権限の使い方、SSHを使用したリモートログインについて理解する。 ユーザ権限に関して、違いや設定方法、セキュリティ等に関する留意点について理解することができ目標を達成したと言える。特にネットワーク設定や利用者の管理など、システム管理者の役割を学び、全員が関連技術を習得した。ネットワーク越しに他のシステムにログインできることも学べた。
04[指導の5回目] [指導の5回目]サブネット単位での通信範囲について学ぶ。プライベートIP、グローバルIPなど、IPアドレスによるネットワーク管理の基礎について座学及び演習により理解する。 ネットワーク管理の基礎について理解するだけでなく、UNIX端末、Windows端末のネットワークの設定方法についても習得することができ、目標を達成したと言える。
05[指導の6回目] [指導の6回目]詳細なシェルの活用方法、プロセス管理・ファイル操作・権限操作系のコマンドについて理解する。 コマンドベースでのシステム利用には時間がかかったが、OSインストールを再度実施し、1回目のインストール時には意味が分からずに決定していた事項(ディスク、ネットワーク、ユーザ作成、パッケージ管理)について理解を深め、終盤ではコマンド実行やviを利用した設定ファイル編集が当たり前のように実行できるようになっており目標を達成したと言える。
06[指導の7回目] [指導の7回目]プロセス管理についての概略とマルチユーザ環境について理解する。 マルチユーザ環境での留意点と自身が管理するUNIX機に他のユーザのアカウントを作成し、他のユーザがネットワークを介してシステムにログインしてくるという「マルチユーザ」環境について理解することができ、目標を達成したと言える。
07[指導の8回目] [指導の8回目]ポートごとに割り当てられるサービスの種類の理解とTelnetコマンドを利用してHTTPポートに接続、定められた手順により通信が行われていることを体験して理解する。 ポートごとに割り当てられるサービスの種類について理解することができた。また、Telnetコマンドを利用したHTTPポートへの接続などについて教本を用いて深掘りしながら学習した。また、教材としてウェブサーバの立ち上げを取り上げ、サーバサービスの動かし方とプロトコル(今回はHTTP)の概念及び具体的な動作、プログラムのインストール(パッケージ管理)についても理解を深めることができ、目標を達成したと言える。
08[指導の9、10回目] [指導の9、10回目]5台のLinux機に各々アカウントを作成し、パスワードなしでSSH接続できるようにSSHサーバの設定とSSHクライアント設定を行うことで、コマンド操作、設定ファイル変更によるサーバの動作設定、シェル概念の理解を深める。MPICHと姫野ベンチを利用し、5台のLinux機を分散型並列コンピュータとして構築し、動作させる。 参加した生徒は当初、コマンドの利用に不慣れであったが、集中的にコマンド操作を行わせたことでLinuxシステムの操作に必要な基本的コマンドの習得が行え、テキストファイル編集についてviを利用して実施できるところまで到達することができた。ネットワークを介して複数のコンピュータを1台の計算機として扱うための並列計算ライブラリを導入し、各コンピュータ上で同時にプログラムが起動する様子を学習した。身近なPCの演算能力の高さ、ネットワークを介して接続し性能をさらに高めていくことについて学習できた。また、マルチユーザ環境でのコンピュータリソース分配マナーについて学んだ。

実技指導の成果

ITネットワーク管理職種において、目標とする技能競技大会に参加できるレベルの資質と能力を育成するために必要な基礎知識や技能の習得ができた。その結果、今回の指導で学んだことの集大成として、5台のLinux機を分散型並列コンピュータとして動作させることができた。

今後の課題

今回は時間の制約上既存の資材を用いて「正しく設定する」学びに終始したが、実際には様々なトラブルや機材・リソース毎に正しい設計を考え、その実装ができるスキルが必要となる。技能競技大会に参加できるレベルまで生徒を育成していくためには、継続的な指導が必要であり、今後は技能競技大会の課題に取り組めるよう更なるステップアップを目標に引き続き指導をしていきたい。

ITマスターの
実技指導を実施した背景

ITマスターの櫻井 浩一(さくらい こういち)さんに、
実技指導の実施にあたっての準備などについて伺いました。

背 景

社会に出て役に立つようなITネットワークシステム管理職種の高度な技術を身につけさせるため生徒たちの能力を若年者ものづくり競技大会や技能五輪、またはそれに準ずる大会に参加できるレベルの技能へ引き上げることを目標に、まずはWindows、Linuxのサーバ構築及びクライアントPCの設定をすることを実技指導の内容としました。本来であれば通常の授業に取り入れたいとのことでしたが、内容が専門的であることから実施にあたり参加者を募り、まずは特別な課外活動としてITネットワークシステム管理の現状を知り、その基礎・基本について学ぶことから始めました。

準備・環境づくり

学習環境については、実習室にある既存のパソコンでは授業用の環境設定が崩れる恐れがあったため、USBに環境を作って操作するなどの工夫をしました。指導の後半では、古い実習用パソコンを使用できるようにしたことで、生徒たちも実際にパソコンを操作して演習することができました。

教材

講習のテキストは『Linux教科書 LPIC※1レベル1 Version5.0対応』※2と『Linux教科書 LPICレベル2 Version4.5対応』※3を使用しました。実技指導が始まる1カ月前に生徒全員に渡し、全て理解できなくても良いので事前に読んでくるように伝えました。生徒が競技大会に出場できるレベルに達するのが目標ですので、とにかくこの2冊を参考にとにかく広く浅く一周できるように進めることにしました。

「LPIC」とは、正式には「Linux Professional Institute Certification」という資格です。LPI認定資格とも呼ばれ、世界中で実施されているLinux技術者認定試験です。また、Linuxプロフェッショナル認定資格とも呼ばれています。 (中島能和著、濱野賢一朗監修、翔泳社、2019、592ページ) (中島能和著、濱野賢一朗監修、翔泳社、2017、640ページ)

指導内容

1回目は、このプログラムを始めるにあたり、これまでのITへの関わりをヒアリングして現在のスキルレベルを確認し、参加する生徒のIT業界への就業意欲を喚起できればと、これまでの私自身のITへの関わりや業務について話をする時間もとりました。また、テキストの概要について説明しました。テキストのレベルですが、イメージでいうと技能五輪全国大会の技能競技課題に臨むことを考えると、このテキストは必須の基礎知識です。そのためスケジュール的には大変厳しい状況でしたが、とにかくやってみようということになりました。

続いて、パソコンのハードウェア構造とOSが起動するまでの概略を説明し、コンピュータ起動前の設定であるBIOS設定の実習を行いました。実際には学校のPCにはBIOSパスワードが入っており、BIOS設定を変更することで導入されているOS以外を起動できるなど、セキュリティ問題が生じるリスクがあることを学びました。また、今後、教材としてOSにDebian Linuxを使用すること、また学校の設備である実習用パソコンの設定を変えることが難しいことから、同様の環境を整えるため個々の生徒が家庭でも自学できるようにパソコン本体ではなく、USBメモリにLinuxを構築するという実技指導を行いました。本当はDebian Linuxを生徒自身で操作できる環境を構築し、その操作に慣れるところまで使い倒すくらいの自習が必要です。しかし、時間の都合上インストールが完了せず、またUSBメモリからのOS起動確認ができなかったことから1回目では自習環境を手に入れることはできませんでしたが、OSのインストールに触れることで「ディスク」、「ネットワーク」、「ソフトウェアパッケージ」など、インストール時に「選択」が必要な項目を大まかに把握することができました。また、次回までに「USBメモリに構築したLinux環境を手に入れ自宅などで自習環境の動作ができるようになること」、「実際に自習環境を利用してテキストの内容を体験すること」、そして「質問があれば、いつでも回答すること」を伝えました。

2回目は、1回目でうまくいかなかったインストールの続きから始めました。今回、USBメモリの性能が十分ではなく、思ったほどの速度が出なかったことがボトルネックとなり立ち上がりが遅くなってしまいました。インストールする間の時間がもったいないと思いUNIXで標準的に使用されるテキストエディタであるviを用いてテキストファイルを作成することを目的とし、プログラミングを題材に取り組みました。ここで、作成したプログラムをコンパイラで実行形式に仕上げ、実行までを学習することでテキストファイル処理、コマンドの実行方法、プロセスの強制停止など、UNIXシステム管理のさわりを学んだのですが、授業や部活でも取り組んでいるとはいえプログラム自体の教本などもない中、生徒たちがあっという間に一連の技能を身に付けたことには驚かされました。

3回目では、一般ユーザ権限、管理者権限の違いを説明し、ファイル単位での権限設定の確認と変更方法について、4回目は、IPアドレスを利用したネットワーク構築、複数ユーザによるシステム利用、管理者権限の使い方、SSHを使用したリモートログインについて指導しました。UNIXシステムでは、Windows環境とは違い「管理者」「一般ユーザ」の権限が割り当てられ、システム管理者でなければ操作できないものがあること、特にネットワーク設定や利用者の管理などシステム管理者の役割を学び、全員が関連技術を習得しました。また、UNIXシステムはネットワークを介して利用するシステムであることから、ネットワーク越しに他のシステムにログインできることを学び、これまで体験したことのない遠隔ログインに強く興味を持たせることができました。

5回目では、サブネット単位での通信範囲について学び、プライベートIP、グローバルIPなど、IPアドレスによるネットワーク管理の基礎について、座学・実地学習の両面から指導しました。実地学習としては、練習用端末を使って独自ネットワークを構築し、IPアドレス・サブネットマスク・ゲートウェイの意味を作業しながら理解を深めUNIX端末、Windows端末のネットワーク設定を習得しました。

さらに6回目では、詳細なシェルの活用方法ならびにプロセス管理、ファイル操作、権限操作系のコマンドについて指導しました。これまでに「なんとなく」動かしてきたUNIXシステムについて、OSのインストールを再度実施することで理解を深めました。1回目のインストール時には意味がわからずに決定していた事項、例えば「ディスク」、「ネットワーク」、「ユーザ作成」、「パッケージ管理」について、生徒同士でディスカッションを行うことで、意義を確認し合いながら実施できるまでになりました。

7回目は、プロセス管理についての概略説明、「マルチユーザ」環境についての指導をしました。自身が管理するUNIX機に他のユーザアカウントを作成し、他のユーザがネットワークを介してシステムにログインしてくるという「マルチユーザ」環境について学習を進めました。8台のマシンにそれぞれ8アカウントが作成され、自分自身がどのコンピュータにどの名前のアカウントでログインしているのか、そのコンピュータはどこにあるのかなど、ネットワークを介した「マルチユーザ」環境の管理の難しさを学ぶことができました。

8回目では、ポートごとに割り当てられるサービスの種類紹介とTelnetコマンドを利用してHTTPポートに接続し、定められた手順によって通信が行われていることを体験しました。8回目までで、システムの詳細な動作についての理解はまだ十分ではありませんでしたが、コマンドを利用してシステム管理を行うこと、設定ファイル内容によってサーバ動作を調整するなど、基本的な作業を理解することができました。また、教本を用いて、UNIXシステムについて深堀しながら理解を深める作業を行いました。教材としてウェブサーバの立ち上げを取り上げ、サーバサービスの動かし方とプロトコル(今回はHTTP)の概念並びに具体的な動作を学習しました。また、プログラムのインストール(パッケージ管理)について学習を深め、オープンソースシステムではインターネットからパッケージを取得して導入していくこと、各パッケージには依存関係があることから、目的のプログラムを動作させるために様々なパッケージ導入が必要であることを学びました。

生徒たちは、当初、GUI(Graphical User Interface)ベースでのパソコン操作には慣れていましたが、コマンドベースでのシステム利用に不慣れでした。教えていくと、終盤ではコマンドの実行、viを利用した設定ファイル編集が当たり前のように実行できるようになり、UNIXのシステム管理の基礎力をつけることができたと思います。それぞれが構築したシステムに対してリモートログイン、リモートファイル転送やサーバプログラムを介した通信を体験し、ネットワークシステムに対しての概念の習得、マルチユーザ環境での留意点(システムの安定稼働、ファイルアクセス権、プロセス管理等)について感覚的に学び取っていました。

世界標準で定められた手続き(プロトコル)として、HTTPに触れましたが、その他SMTPやPOP、FTPなどにも触れ、これまでアプリケーションレベルで利用してきたサービスの背景には長年蓄積されてきた知恵がつまっていること、それを知ることで新しいサービス、通信方法につながっていくことを伝え、これからのネットワーク時代を担っていくための基礎力につながるよう指導を進めました。最後の2回では複数のサーバ間で通信し、1つのプログラムを実行していく並列計算環境の構築を行い、ネットワーク時代のコンピュータの使い方について興味を高めることを目指しました。

9回目では、これまでの実施内容の振り返りと次回の下準備を兼ねて本講座で構築した5台のLinux機に作成されたアカウントに対して、パスワードなしでSSH接続できるように、SSHサーバ設定、SSHクライアント設定を行いました。コマンド操作、設定ファイル変更によるサーバ動作設定、シェル概念の理解を深めました。

最終回は、MPICHと姫野ベンチを利用し、5台のLinux機を分散型並列コンピュータとして動作させました。当初は、分散型並列コンピュータは予定していませんでしたが、過去に訪れた世界デザイン博覧会の大手電機メーカーの展示スペースで、パソコンを16台連結させているのを見たことを思い出し、ネットワークを介して何ができるか見せたかったことから、試しにやってみることにしました。生徒たちは開発環境の導入、計算機間の通信、プロセス動作について興味をもって接することができていたかなと思います。

9回目と最終回で、ネットワークを介して複数のコンピュータを1台の計算機として扱うための並列計算ライブラリを導入し、各コンピュータ上で同時にプログラムが起動する様子を学び、身近なPCの演算能力の高さ、ネットワークを介して接続することで性能をさらに高めていくことができるネットワーク時代のコンピュータ利用法について学習できました。また「マルチユーザ」環境ではほかの人がプログラムを動かすと自分自身に割り当てられるリソースに制限がかかること、自分の作ったプログラムによってほかの人のプログラムに影響を与えることなど、「マルチユーザ環境」でのコンピュータリソース分配マナーについても学びました。

残りの時間はITマスターの経歴・仕事内容について談話を行い、IT業務への興味を深めるようにしました。始めた当初、生徒たちにはコンピュータの内部構造、動作原理など、根本的な知識が不足していました。BIOS設定、Linuxだけでなく、OSのインストール作業も初めての体験でしたが関心は高く興味が尽きない様子でした。また、当初は「コマンド利用」に不慣れであったため、集中的にコマンド操作を行わせたことで、Linuxシステムの操作に必要な基本的なコマンド習得が行え、テキストファイルの編集をviを利用して実施できるところまで到達しました。これも冬休みを活用して集中的に講習を行うことができたおかげです。他にも生徒たちには、仕事をする上で「進捗情報の確認」が重要であることを伝えました。技能五輪では一定の時間内に複数人で1つのシステムを仕上げなければいけません。講義では、毎回工数管理を行い、インストールや各種設定の作業時間を確認するよう伝えていました。生徒の中には、半分伝えると一瞬で覚えて全部できるような生徒もいて、皆、非常に優秀で大げさではなく伝えたことの20~30倍でき、質問などは殆どありませんでした。また、生徒同士で問題や状況を共有し、教え合いながら課題を進めていく姿を目の当たりにし、チームプレイのありかたも実体験から学んでいる様子が伺えました。

実技指導を終えて

電子情報科 情報コース2年 亀田 洋佑(かめだ ようすけ)さん(受講時1年)に、受講したきっかけや感じたことや今後の目標について伺いました。

ITマスターの講習会に参加するか悩んでいた友人が「一緒に取り組もう」と誘ってくれたことがきっかけで、受講することにしました。県立工業高校は資格取得に力を入れていることを入学前から知っていたので、自分の将来を多く考えるために様々な資格に挑戦したいと思っていました。また、高校在学中は学校で取り組めることはできるだけ多く取り組んでいきたいという目標がありましたので、その目標を達成するためにも、友人と一緒に取り組んでみようと思いました。

受講前、ITネットワークシステム管理分野を学ぶと先生から伝えられ、Linuxに関する本が事前に渡されました。本をひと通り読んでみて、全く知らない言葉やコマンドなどの馴染みがなかったものが多く、「ネットワークシステムは難しそう」というイメージが強くなり、理解できるかが不安でした。また、自分自身が運動部に所属していることもあり、どちらかが疎かになってしまうかもしれないという心配など、理解できるかできないか以前の問題がありました。そのため、「最後までやり遂げること」、そして「知らないことを理解していくこと」を目標に受講していこうと思っていました。

受講してみて特に良かったことは、「Linuxの利用できる幅が広くなったこと」と、「自分の将来の選択肢が増えたと感じられるようになったこと」です。Linuxの操作ではコマンドでディレクトリの作成や、ディレクトリのアクセス権限を変更するなどの基本的な操作ができるようになりました。この他にも、学ぶ中でLinuxを使いながら教わっている時に、櫻井マスターが、私達のペースに合わせて丁寧に指導をしてくださったのでよく理解でき、取り組みやすく感じました。また、授業でLinuxを使う場面があった時に櫻井マスターから学んだ内容を活かして、その授業の内容をすぐに理解することができました。

将来の夢はまだはっきりと決まっていませんが、今回Linuxを学んでみて、IT関連業務でハードウェアやソフトウェアの設計・運用・メンテナンスを行う「インフラエンジニア」になるのもいいかもしれないと思いました。

ITマスターの櫻井 浩一さんに、指導して感じたことや受講した生徒たちに伝えたいことなどを伺いました。

まずは授業で「触れただけ」、「試験のための学習」のレベルから、「ぜひ使ってみたい」、「自分たちでも何とかやれそう」という感覚を与えることができたと思います。私が若い頃、どうやってUNIXやプログラムを学んできたかと考えた時、最初にインストールを山ほどしました。インストールというものが、全ての根幹にあると思うので、設備の問題もありますが、本当は「機械が壊れてもいいから、とにかくやれ」と言いたいくらいに思っています。もちろんITネットワークシステム管理は、たくさんの人に使ってもらう仕組みです。ちょっと間違えただけで、動かなくなってしまうので、実際にネットワークを組む時は、パーフェクトでないといけません。

たった2週間程度の講義でも十分に生徒たちの能力が伸びました。技能五輪全国大会の競技課題は非常にレベルが高く、今回はどこまでできるかと思っていましたが、生徒たちの資質などによるところもあるもののポテンシャルは十分にあります。もし競技大会に参加することを目指したら、十分上位に食い込めると思います。

実技指導では分散型並列計算機の構築を行いましたが、今後は、この自分たちで構築したLinuxシステムを使うことで実現できる仕組みについて深く学び、自分たちの手で構築するという「経験」を積み上げて行くことが必要です。そうすることで、技能の習得が進んでいくと考えています。

今回、指導をしてみて、こんなに優秀な高校生が石川にはいるのだと嬉しい意味でショックでした。石川県の情報産業の未来は明るいと思います。