Vol.14 高周波誘導加熱を自在に扱い、機械の軸となる精密な部品を生み出す。

高周波・炎熱処理作業 西村 洋祐さん

金属熱処理技能士 1級
高周波・炎熱処理作業
(平成28年度取得)

西村 洋祐さん

1986年生まれ

株式会社オーネックス 所属

金属熱処理技能士とは

高周波熱処理では、高周波電流を使用し、電磁誘導作用による高周波誘導加熱を利用して、金属類の材料を部分的に熱し加工する「高周波焼入れ」 という作業を行い、車や船などに使われる細かな部品を製作します。高周波・炎熱処理作業技能士は、「高周波焼入れ」を行うための技能や知識を有する技能士です。

西村 洋祐さんのお仕事

西村さんは入社後、熱処理後の製品の検査作業を経て、現在は現場とクライアントを取り繋ぐことや、現場全体を管理するポジションを担っています。

高周波・炎熱処理のお仕事に興味を持ったきっかけを教えてください。

写真:西村 洋祐

学生時代は化学を専攻しており、もともとは金属熱処理とは違う分野ではありましたが、研究や実験が好きなタイプでした。就職活動中の会社見学で当社を訪れた際、日本の歴史深い刀鍛冶の話を聞いたことをきっかけに、熱処理に興味を持つようになりました。

熱処理で加工された部品の一つ一つが、自動車や船などの大きな機械を動かす大事なパーツとして機能しており、日本の工業社会において重要な役目を担っているという部分も魅力に感じました。そして、この業界への理解が深まるにつれて、自分も日本の工業社会を支える部品を生み出していきたいと志すようになりました。

技能士資格の取得までの経緯を教えてください。

写真:西村 洋祐

入社後、金属熱処理の仕事をしていく上では技能士の資格が重要であると会社からの奨励もあり、まずは2級の資格取得を目指しました。2級の資格取得後、自らのステップアップの思いと会社や仲間からの奨めもあり、より実務でも活きる専門性の求められる1級を目指すようになりました。
会社の制度を利用して上部団体主催の講習会に参加し、大学教授のもとで2年間勉強することができ、専門性の高い教授の講義を聞き、知識量を増やす努力も積んできました。平日は仕事、土曜日に学校という大変なスケジュールでした。

またインターシップで他の熱処理会社で働かせていただくことなどで、経験を深めていきました。

東京都の研究所に行かせていただいた時には、未知の不具合が発生した際の原因を探るという作業を体験し、どんな困難でも必ず解決策を見出すという、後の業務にも活きる貴重な経験をいたしました。その努力の甲斐もあって平成28年に高周波・炎熱処理作業技能士1級の資格を取得することができました。

1級の資格を取得して良かったと思うことを教えてください。

1級技能士の資格は、高周波・炎熱処理の仕事を続けていく長いスパンの中で一つの目標だったので、取得できたことは自信に繋がりました。1級技能士になるまでに積み重ねた知識や経験は、実際の業務に活きることも多くありますので、1級を目指して努力をしてきて良かったなと思います。

お仕事の中で、特に心がけていること・気を配っていることを教えてください。

写真:西村 洋祐

熱処理している部品は、自動車や船のエンジン部分に組み込まれたりするなど、機械が動く上で重要な部品になることがほとんどですので、お客様が要求されている規格に誤りがないかを十分注意しています。
規格をクリアできているかを検査するために、製品を切断して、熱処理性状を確認しています。

また、私が現場に指示を出して熱処理を進めてもらうことも多いのですが、その際にお客様の要望を現場の仲間に正確に理解してもらえるよう、伝え方には気を配っています。

お仕事の中で、大変なこと・苦労することがあれば教えてください。

写真:西村 洋祐

お客様からご要望いただいた部品の難易度が高い時や、初めて作る部品である時は、試作を何度も行うなどして苦労することもあります。場合によっては、その部品を作り上げるための専用の加熱コイルを作るところから始めることもあり、立ち上がりは大変に感じることもありますが、一度出来上がればその後も活用できるといったメリットもあるので、頑張り所だと思って取り組んでいます。

熱処理は基本的にはお客様のご要望に沿って進めていきますが、打ち合わせ時に私たちからどのような部品にすると良いかをご提案することもあります。提案の際には、お客様のご要望と作業の都合の両方を把握している必要があるため難しくはありますが、ここでも技能士になる上で培った知識が役立っていると思います。

西村さんがお仕事の中で「輝いている」と感じる瞬間を教えてください。

お客様からご要望頂いた中でも、特に難易度の高い部品を作り上げることができた時は達成感が溢れます。物によっては、何度も打ち合わせを重ねた上で製作していくため、完成時にはお客様にも私たちと同じように喜んでいただけることも、この仕事のやりがいだと思います。苦労した分、完成時の喜びも大きいです。難しい部品を作り上げていった経験はノウハウとして蓄積されていき、次の仕事にも繋がっています。

また、私たちが携わった部品が使用されている自動車などが、市場に出回っているのを見た時も嬉しく感じます。これからも、そういった喜びや達成感を味わえる機会を増やしていけるよう、取り組んでいきたいですね。

高周波・炎熱処理の技能向上のために大切なことを教えてください。

わからないことがあったらそのままにせず、上司に聞くなり、自分で調べるなりして必ず解決することが大事だと思います。一つわからないとその次のステップでも理解できず立ち止まってしまいますので、一つ一つをおろそかにせず、自分の中に蓄積していくことが大切です。

西村さんの今後の夢や目標を教えてください。

1級合格後からさらに5年の実務経験を積むと、特級技能士の受検資格も得られるので、これからも向上心を持って学びを続け、いずれは特級の資格取得にも挑戦したいという思いがあります。

そして、仕事をする上では机上で学んだことをいかに実務で活かすかが大事だと思いますので、自分自身が実践することはもちろんのこと、他の人への技能や知識の伝達を積極的に行っていき、身近なところから1級技能士を増やしていければ良いなと思います。

最後に、これから高周波・炎熱処理作業技能士を目指す人へのメッセージやアドバイスをお願いします。

写真:西村 洋祐

高周波・炎熱処理は、部品を作っていく上で最初は上手くいかないことを、いかに上手く実現させるか工夫して繰り返し試行していく、奥深く面白い仕事です。失敗や上手くいかないということを受け入れ、それさえも楽しんで「次は絶対成功させる!」というようなチャレンジャー精神豊富な方は、楽しみながら仕事ができると思います。

資格を目指す上で苦労することもあると思いますが、何事にも探究心を持って学んでいくことは自らの力となり、資格取得にも仕事にも活きてきますので、ぜひ頑張ってください。

プロの道具~金属熱処理技能士編

 

高周波焼入機

高周波焼入機

高周波焼入れを行い、対象の金属を加工する際に使用します。中心の円形部分のコイルと対象金属間に、高周波電流による電磁誘導が起こり、対象金属を部分的に熱することができます。

西村 洋祐さんのある日のスケジュール

8:10
出社
8:30
ミーティング
8:45
作業開始
10:00
小休憩
10:10
作業再開
12:00
昼休憩
13:00
清掃
13:10
作業再開
15:00
小休憩
15:10
作業再開
17:00
作業終了・退社

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