事例
02
2019
親子2代でつくり上げる墓石と石材製品
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吉田 朝夫(よしだ あさお)
平成16年、石の浄朝を創業。平成21年度・22年度 山形県美術展工芸の部委嘱作家、2013年度「山形エクセレントデザイン」受賞、墓地景観創造研究会代表
吉田 朝頼(よしだ ともよし)
平成18年、石の浄朝に入社。平成16年度「第42回技能五輪全国大会・(石工職種)」銀賞、毎年出品している「山形県総合美術展」では入選のほか山形放送賞を受賞
土地の景観に溶け込む墓石
吉田朝夫 私が仕事でこだわっているのは、墓石の前面にある文字は肉筆をもとに手で一文字一文字彫り上げ、一度使用した文字は絶対に使い回ししないことです。それも、お客さまに感動を与える仕事をしたいという一点にあります。地元山形産の石を使うことにもこだわっています。墓石は風景の一部。いたずらに大きさや豪奢(ごうしゃ)さを競うのではなく、その土地の景観に溶け込むようにあるべきだと考えています。そのためには、山形の風景を形づくってきた蔵王石、最上石や高畠石を使うことが大切なのです。
吉田朝頼 中学の頃から社長である父の仕事を手伝っているうちに、自然と自分も石工として働くことを考えるようになり、職業訓練校で4年間基礎を学びました。訓練校では建築関係の仕事を主に手がけており、墓石の仕事に本格的に取り組むようになったのは、帰郷してからでした。親の真似とは思われたくなくて、あえて父とは異なる作風を志向していた時期もありましたが、ようやく自分の思いをかたちにできるようになりました。今は仕事や作品製作が楽しい時期ですが、一方でまだまだ技能を向上させたいという思いもあります。
親子で仕上げる「やすらぎ石室」と「浄音塔」
吉田朝夫 石の浄朝では、墓石以外の商品開発にも力を入れています。「やすらぎ石室」もその一つ。高松塚古墳やキトラ古墳の壁画に着想を得て、20年前に開発しました。石室はあまり人の目に触れるものではありませんが、お骨を収めるお墓でもっとも大切な場所ではないかと私は思います。「やすらぎ石室」の壁画は、永遠の眠りについた故人を見守るため、何十年、何百年も鮮やかさを失わないよう、金箔や工夫を重ねた塗料をオリジナルの技法で仕上げています。当初は4面の壁画でしたが、現在は花弁が8枚ある蓮華(れんげ)にちなんで8面が標準仕様です。壁画を描いているのは長男と次男で、二人とも安心して任せられる技能を身に付けてくれました。
お墓前面の灯籠の代わりに設ける「浄音塔」は、江戸時代から続く鋳物業の会社とのコラボ商品として開発しました。青銅の梵鐘(ぼんしょう)との組合せは、独特の柔らかな風合いを持つ最上石の魅力を最大限に引き出してくれたと思います。梵鐘はたいへん美しい音色を持ち、多くのお客さまから喜ばれております。
こだわりの美術展出展
朝夫さんは18歳の時、山形県総合美術展に石材彫刻を出展し、今では数々の受賞歴があります。「技能と思いの両方を磨くため、商売を離れた作品づくりは貴重な機会」と話し、長男、次男にも勧めています。「親子でも作風が異なるのが面白い。私の現在の目標は一刀彫りの円空仏のような作品。ありったけの魂をシンプルな造形の中に閉じ込めてみたい」。
技能検定
石材施工(石材加工作業)
石材施工(石材加工作業)は、霊園、神社・仏閣、庭園、建物彫刻で使用される石材加工作業の技能・知識を対象としています。内容は、段取りや石材加工、石製品の据付け、石材の重量判定、積算などの作業と、石材施工法一般や材料などの知識が含まれています。その他に、石積み作業、石張り作業があります。