事例
08
2019
100 分の1 ミリの精度までこだわった組子細工の建具
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昭和36年に「舟木木工所」を創業。
平成26年度黄綬褒章、平成23年度卓越した技能者(現代の名工)、平成25年度ものづくりマイスター、平成21年度全技連マイスター、島根県技能士連合会副会長、島根県建具協同組合相談役
100分の1ミリの加工精度が求められる「組子細工」
「舟木木工所」は、組子細工を使用した衝立や屏風、スクリーン、欄間飾りなどの木製建具を手加工で製作しています。私は、小さな木片で幾何学的な文様を生み出す組子細工に、和風建築はもちろん、現代建築にも調和するデザインを生み出し、新たな価値を付け加えたいと考えています。組子細工の魅力は、木が織りなす幾何学文様の美しさにあります。時に何万という木片を組み合わせて緻密な文様を表現するため、わずかなズレも許されません。寸法や接合面の角度は、100分の1ミリの精度で加工しないと組み上がらなくなるため、私は微妙な力加減を正確に伝えられるように複数のカンナを使い分けて加工しています。
木材の選定や乾燥も重要です。組子細工には、樹齢100年以上の杉やヒノキで年輪の間隔が狭いものが最も適しています。その間隔が狭くなればなるほど、歪みや狂いが少なくなるのです。木材は乾燥する過程で変形するため、加工する前に最低でも2年かけて余分な水分を抜き、状態を安定させておくことも欠かせません。
現在、私は組小細工の小型化に力を入れています。小さくなるほど難しくなりますが、身近かつ手ごろな小物やアクセサリーをつくることができ、より幅広い世代に親しんでもらえるでしょう。何よりも、どこまで組子細工を小さくできるのか、自らの限界に挑むことを楽しんでいます。
複雑な「木を編む」技法は最初が肝心
組子細工の技法は、「木を編む」と表現されることもあります。私は、釘や接着剤は使わずに、糸で布地を編むように小さな木同士をいくつも交差させて様々な文様を表現しています。
まず木材を工作機械で、厚さ2ミリ、1ミリといった薄さに長細く切り出します。部材の加工精度は仕上げに大きく影響するので、機械任せにはできません。切り出した木片の幅をノギスという物差しを使って測り、誤差がゼロになるまで調整します。最初の精度が高いほど後の工程も楽になり、仕上がりも美しくなるのです。
次に木片に墨付けを行い、それに従ってノコギリで切り込みを入れていきます。組子細工の基本は「三つ組手(みつくで)」というものです。1本では強度のない木片を、切り込みに合わせて差し込んでいき、3本で1組にすることで強度を出しながら、文様部分やそれを入れる枠の部分「地組み」をつくります。最後に、文様部分を手や金づちなどで地組みにはめ込み、組子細工は完成します。
昔の職人は完成させて終わりでした。しかし、私はその技能を後進に伝えるため、学校での授業や若者の職業体験などを積極的に行っています。それが今を生きる技能士の務めだと考えているからです。
こだわりの文様
組子細工の文様は、伝統的なものをもとに今も様々なバリエーションが生み出されています。舟木さんが得意にしているのが、「目潰し本籠目(めつぶしほんかごめ)」という文様です。これは、3本の木片が竹で編んだ籠の目のように組み合わされたもので、複雑な形状を作り出すために高度な加工技能が要求されます。
技能検定
建具製作(木製建具手加工作業)
建具製作(木製建具手加工作業)は、建物の外部で使用される建具(出入り口など)、内部用のもの(襖、紙貼り障子、欄間など)を手加工で製作するのに必要な技能・知識を対象としています。建具製作は他に、機械を使用する木製建具機械加工作業もあります。
舟木清/舟木木工所
〒699-1122 島根県雲南市加茂町三代525
TEL 0854-49-7301