事例
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2021
個性豊かな「安田瓦」を丁寧に仕上げる
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昭和25年創業の石塚屋根工事店で代表を務める。新潟県瓦葺技能士会会長。新潟県技能検定委員。昭和56年1級技能検定かわらぶき(かわらぶき作業)に合格。昭和56年職業訓練指導員修得。平成17年全技連マイスターに認定。
一枚一枚瓦を見定めて配置を決める
石塚屋根工事店は、新潟県五泉市を中心とした県内の一般住宅や寺社の屋根瓦施工を手がけています。五泉市の近くに「安田瓦」の生産地があり、その瓦を使用したかわらぶきを多く手がけているのが、当工事店の特徴です。安田瓦は、雪が多く海に面した新潟を生き抜く先人たちの知恵が詰まった瓦であり、耐風・耐塩・耐雪・耐震など、自然環境に強い丈夫な作りを誇っています。1200℃の超高温で焼き締めることで頑丈な瓦ができますが、この製造工程のために、一つひとつに他の瓦に比べて大きな反りや縮みなど「クセ」が生じます。一種の「味」ではあるものの、かわらぶき職人にとっては施工する難度の高い瓦となっているのです。
まず大切にするのは、瓦一点一点の細かなチェックです。形の微妙な違いを見極めつつ、どの瓦同士を横に並べるときれいにふけるかを判断します。まるでパズルに取り組むような作業ですが、瓦を適切に組み合わせないと、ガタガタになり見栄えが良くありません。最悪、雨漏れの原因にもなってしまいます。ふく前の瓦の入念なチェック、そして配置を決めてから作業をはじめることが重要になります。
1級技能検定では、瓦の隙間調整の難易度が高い一文字瓦をふきますが、「安田瓦」をふくためには、さらに難易度が高い技能を要します。1級技能士の技能を駆使することにより、「クセ」の強い瓦でも耐候性がある美しい仕上がりを実現することができます。
新潟の地域特性を踏まえた屋根づくり
瓦屋根を長持ちさせる工夫として、私が手がける現場では瓦と土台の間に樹脂シートを敷いています。通常は防水のためにフェルトシートを敷くだけがほとんどだと思いますが、樹脂シートを重ねることで防水性がアップし、屋根が長持ちするんです。これも新潟のような雨や雪が多い地域だからこその工夫かもしれません。やはり施工主様のために、いかによりよい建物をつくるか、を考えるのが私たちの仕事であり、そうした工夫を行うのが大切です。その他にも、強い山風が吹き下す地域では風避けとして、屋根の両端に高さ10cmほどの「風切」を施工します。そうすることで、瓦屋根が風に強くなります。雪の重みを分散するために棟瓦を高く盛るのも、雪の多い地方ならではの工夫であり、新潟の気候風土に対応した知恵になります。
かわらぶき職人の視点でより良い施工を行う。それこそが石塚屋根工事店が、先代、先々代から受け継いできた心意気です。これからも新潟の人々のために、安心して暮らせる「かわらぶき」を手がけていきたいですね。
こだわりの古瓦
古い家屋や寺社にふかれた瓦を修繕する際は、新品の瓦ではなく昔ながらの古い瓦を使うこともあります。古瓦は釘で固定する形にはなっていないため、銅線またはステンレス線を通して一枚一枚ずつ屋根に留めていきます。1級技能の銅線による瓦の緊結を駆使しますので、この技能を高めています。この締め付けが甘いと瓦がズレるため作業は非常に難しいのですが、美しくふけたときの達成感はひとしおです。
技能検定
かわらぶき(かわらぶき作業)
かわらぶき(かわらぶき作業)は、瓦を屋根に葺く仕事である「かわらぶき」をするのに必要な技能・知識を対象にしています。瓦の選定・寸法取り・割付け、かわら合せ・ふき仕上げ・土の練合せなどのかわらぶきに関する技能・知識、屋根、施工法、材料、建築概要、製図、安全衛生などに関する知識も含まれます。
石塚 新一/石塚屋根工事店
〒959-1611 新潟県五泉市笹堀782
TEL 0250-43-2225
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