事例
09
2019
町の鉄工所の総合力が生んだ特厚バーベキューグリル
more
昭和59年創業の有限会社福島鉄工所の2代目。
平成13年度機械加工(フライス盤作業)1 級技能検定に合格。特殊用途向け単品生産の精密機械加工、切削機械加工を得意とする。
美味を追求した特厚のバーベキューグリル
福島鉄工所は、フライス盤や旋盤などの技能を用いた精密部品などの切削加工業、小型製缶品、機械要素の修理、補修を手掛けています。その中で、独自商品として展開しているのが、デスクにもなるユニークなガスコンロ用バーベキューグリル「グリルデスク」です。この商品は私の趣味から生まれました。
私はアウトドアが好きで、仲間や家族とキャンプを昔から楽しんでいます。仕事柄、知人から頼まれてバーベキュー用鉄板をつくるようになり、とても好評だったので、平成26年からグリルデスクとして本格的に製造を始めました。
グリルデスクの特徴は、9㎜もある特厚鉄板です。一般的なバーベキュー用鉄板の厚みは、2~3㎜程ですが、グリルデスクはその3~4倍の厚みがあるため、蓄熱量が高く、焦げにくい。料理が冷めにくいので、とてもおいしくいただけます。その分、鉄板が重くなりましたが、デスク状にして強度を確保し、足には車輪をつけ、容易に持ち運びできるようにしました。美味を追求する BBQファンが、一生使えるバーベキューグリルになっていると自負しています。
お客様の要望・用途に応える総合力
福島鉄工所は、創業した父以来、町の鉄工所として、近所の農家から持ち込まれる、鍬(くわ)などの農機具の溶接修理から、企業から依頼される精密機械の加工まで、依頼に応じて様々な業務に対応してきました。そこで培われた総合力が、グリルデスクの製造でも活かされています。
例えば、グリルデスクの鉄板はフチが直角で、コテをあてやすくしています。通常、プレス加工で鉄板をつくるため、その角度に多少のばらつきが出るのが普通です。その点、私は溶接で正確につなぎ合わせており、どのフチの部分も直角に仕上がっていて、誰でも調理しやすい鉄板となっています。鉄板の取手は握りやすいように、フライス盤で曲線加工を施すなど工夫をこらしています。
用途に合わせて、溶接や旋盤、フライス盤を使い分け、品質とコストパフォーマンスを考慮しながら製作できる。しかも、自社で一貫加工するので、お客様のご要望に応えて、1点1点オーダーメイドで対応できるのも、様々な製品作りで培った経験がある鉄工所だからこそ実現できたと考えています。
ただ、これからの時代は、職人として優れた技能があるだけでは通用しません。ITの知識、コスト感覚やコミュニケーション能力など、トータルな人間力が技能者にもあたりまえに求められていると思います。さらに研鑽を積み、特級技能士を目指すとともに、自らの実践を通して新しい職人像を次の世代に受け渡すことができればうれしいですね。
こだわりの黒皮鉄板
福島さんが、数ある鉄の中からグリルデスクの鉄板に選んだのは、「黒皮鉄板」という種類。黒い酸化膜が表面を覆う「黒皮鉄板」は、油馴染みがよく、手入れがしやすいので、調理用の鉄板としては最適なのだといいます。
技能検定
機械加工(フライス盤作業)
機械加工(フライス盤作業)は、フライスと呼ばれる切削工具を回転させながら切削加工を行うフライス盤に必要な技能・知識を対象としています。機械加工は他に、普通旋盤作業や平面研削盤作業など22の作業があります。
福島弘士/有限会社福島鉄工所
〒719-3141 岡山県真庭市上市瀬549
TEL 0867-52-0492/FAX 0867-45-0495