事例
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2021
伝統を受け継いだ匠の技を持つプロフェッショナル集団(長崎県陶磁器技能士会)
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ろくろ・色彩・飾り
長崎県陶磁器技能士会は、波佐見焼や三川内焼で有名な東彼杵郡や佐世保エリアを中心に、県内全域の陶磁器文化の発展、職人の技能向上を図るべく、活動しています。
陶磁器製造職種の手ろくろ成形、原型製作、絵付けの技能を持つ技能士が集まることで、材料の調合、成形、施釉、着色剤の調合、着色及び絵付け等、ほとんど全ての工程で、1級技能士の技が陶磁器製造に活かされています。
陶磁器製造の秀でた技を有する個性豊かな陶磁器を手がける職人たちが活躍しています。
「ろくろ工房平尾」の平尾さんは、ろくろの名手です。茶碗や湯のみなどの小物食器を短時間で美しく仕上げる技能に長けています。波佐見焼を作る際の特徴である「牛ベラ」を使って、ろくろを回しながら、成型していきます。
「青以窯」の竹ノ下さんは、色彩豊かな焼物を作ります。磁器に透明釉を掛けて高火度焼成する「彩磁(さいじ)」、金や胴の顔料を使い発色させる「釉裏紅(ゆうりこう)」など様々な技法を用いて、紅・翠・紫などの彩りを表現します。
「平戸洸祥団右ヱ門窯」の中里さんは、飾りに特徴があります。「菊花飾」は、職人の手で菊の花の花弁を一枚ずつ切り出し、緻密で繊細な華の美しさを表現。この技法は世間でも高く評価されており、無形文化財にも指定されています。
造形・絵・染付・筆
「光雲窯」の今村さんは希少な造形技法を取り入れています。少量ずつ土を重ねて盛り上げ鶴や亀などの絵を描く「置上(おきあげ)」と呼ばれる技を用いて、リアルな質感と立体感を表現。平面の絵では成し得ない味わいを作り出します。
「陶房義窯」の速見さんは、限られた職人だけに受け継がれる「唐子(からこ)」を描く、絵師。中国・朝鮮で縁起物とされた「唐子」は、三川内焼には欠かせない絵柄であり、代々引き継ぐ数少ない職人として、焼物に描き続けています。
「菊祥陶器」の木下さんは、顔料の「呉須(ごす)」を愛する、染付師。焼き上がりが鮮やかな蒼に変化する呉須は、その鮮やかさから多彩な魅せ方が可能です。呉須は日本茶で薄めながら使用し、その濃淡のみで模様を描きます。
「千彩工房」の吉川さんは、大小様々なダミ筆を使い分けて、絵付けを行います。筆に染料をたっぷりと染み込ませ、筆先や面を操りながら色を塗る行為は、とても繊細な技であり、染料の濃淡ひとつで焼物の顔つきが変わります。
ご紹介した以外にも、当会には約30名の技能士が在籍しており、伝統や技法を守りながら、技能士としての技能を駆使して陶磁器づくりに励んでいます。私たちは本物の陶磁器を作る「ものづくり集団」として、互いに研鑽に励んでいます。
こだわりの陶磁器
長崎県の陶磁器は、工房や窯元によって様々な個性があり、それぞれの特色を大切にした伝統工芸として、発展を遂げてきました。波佐見焼・三川内焼は、かつては幕府への献上品として作られてきた歴史を有します。波佐見焼・三川内焼ともに原料に陶石が利用され、美しい白磁の色合いが特徴的。大小様々な形状を持つ磁器は、染料の呉須を使った染付が施されています。
長崎県陶磁器技能士会
〒859-3701 長崎県東彼杵郡波佐見町折敷瀬郷1439-4 山口正右衛門窯内
TEL 0956-85-4320