事例
06
2019
“まっすぐ”が紡ぐ「着物」の美
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平成11年、「今西和裁」を創業。
平成26年度 ものづくりマイスター、平成16年「全国和裁技術コンクール」銀賞、平成17年「愛知県和裁技術競技会」優勝、平成30年度 石川県技能顕功賞知事表彰、NPO 法人和装教育国民推進会議石川県支部長
想像力を駆使して仕立てる着物
今西和裁は、長着や羽織、コート、帯、ストール、長襦袢、袴、和風小物などを製作しています。和裁では寸法通り仕上げることが大切ですが、それだけでなく心がけているのがお客様一人ひとりに合った着やすい着物をお届けすることです。
着物は一つの反物を縫い上げてつくりだすのですが、反物は、蚕のマユから糸を取り出し、それを精錬した後に糸を機織りし、さらに染色するなどと実に様々な工程があってできあがります。それを最終的に着物として仕立て、お客様にお届けする役目を担っているのが私たち和裁士です。
仕立ての際には、呉服屋さんなどから届く寸法をもとにしますが、書いてある通りにただつくることはしません。例えば、女性向けの着物の場合は、着付けの時に首の後ろにゆとりを持たせる「繰越(くりこし)」を付けます。それを男性でも首が太い方には、ゆとりを持って着てもらうためにあえて提案することもあります。また、訪問着など柄のある生地の場合は、お客様の体型を見越してどのように前後の生地にある柄をどう合わせれば美しくなるのか考えて調整します。お客様の身長や手の長さ、腰回りといった情報をもとに想像を膨らませ、一人ひとりが着ていて快適で心からご満足いただける着物をお届けするのが自分の仕事なのです。
着物の美しさを決める「地直し」
美しい着物をつくるためには、すべてを「まっすぐ」にすることが大切だと考えています。まっすぐな生地をつくり、まっすぐに印をつけて、まっすぐに縫う。どれも当たり前のように思うかもしれませんが、これが難しいのです。特にまっすぐな生地をつくるという部分は、「地直し」と呼ばれる最初の工程であり、一番気をつける部分でもあります。
反物に使われている絹は、汗をかいたり、雨で濡れたりして湿気を帯びると縮む性質があります。そこで、アイロンのスチームで着ている間に生地が縮むことがないように、蒸気の力をかけてあらかじめ縮ませておくのです。
同時に糸目がまっすぐになるよう伸ばしていきます。反物は織りたての時には生地は縦糸と横糸が直角に交わり、糸目も一直線に伸びていますが、それを染めたり、乾かしたり、様々な工程を経るうちに生地に歪みがでてきます。そうした歪みをアイロンやコテを使って整えていくのです。
後の工程には、柄の向きや組み合わせを調整したり、縫製などが続きますが、生地がまっすぐになっていなければ狂いが生じ、お客様に合った美しい着物はできあがりません。そのため、縫う前のこの工程が非常に重要になるのです。
こだわりのマント
今西さんは、和裁の伝統的な技能をものづくりマイスターなどの活動を通して広く伝える一方で、古くからある技能をもとに新しいことはできないか常に模索しているといいます。その一つの挑戦が着物用のマントです。新しいものと古いもの、和と西洋を組み合わせながら、和裁の未来を見つめています。
技能検定
和裁(和服製作作業)
和裁(和服製作作業)は、和服の仕立てに必要な技能・知識を対象としています。採寸、裁断、縫製作業、仕上げなどの製作作業に関する技能・知識に加えて、材料、服装美学一般、安全衛生などに関する知識も含まれています。
今西渉/今西和裁
〒921-8025 石川県金沢市増泉1-14-5
TEL 076-244-6494