事例
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2019
沖縄のビーグと秘伝がつくりだす黄金色の畳
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平成7年、大伸たたみ店を創業。
平成30年度 卓越した技能者(現代の名工)、平成25年度 ものづくりマイスター、平成24年度 全技連マイスター、沖縄県畳工業組合理事、全技連マイスター会沖縄県支部監事
独自の方法で美しく仕上げた琉球畳
大伸たたみ店では、琉球畳(ヘリなし畳)をはじめ畳全般を製造しています。琉球畳は沖縄の伝統的な畳で、正方形(半畳)のものを方向を変えて敷くと市松模様に見えて美しく、近年は沖縄の若者にも人気があります。
琉球畳の畳表(ゴザの部分)の素材には、近年、紙製や樹脂製のものも登場していますが、昔から使われてきたのは沖縄県産のイ草「ビーグ」です。ビーグは、時とともに綺麗な黄金色になっていくのが魅力。また、本州のイ草と比べて3 倍ほどある太さも特徴です。太くて硬いビーグは無理やり曲げるとすぐに割れてしまうため、従来は水を何度も付ける必要があり手間がかかっていました。それを何とかできないかと考え、私が開発したのが、スチームを当てて畳表を曲げる技法です。これにより、短時間かつ綺麗に仕上げることが可能になりました。
畳床(畳の芯になる部分)も、時代とともに変化しています。以前は稲わらでつくられていましたが、現在、沖縄ではダニが発生しにくい建材が主流。建材は、端の方が荷重でへこんだり、ちょっとした衝撃で欠けたりすることがあります。私は建材の端に補強材を入れたり、接着剤で補強したりするなど、お客様に畳を長くご利用いただけるよう工夫をしています。
秘伝も包み隠さず後進に伝承
畳の製造で慎重に行うのが部屋の採寸です。家というのは、図面の寸法そのままではなく必ず歪みがあります。それを計算した上で畳の大きさを調整するのです。今はレーザーで簡単に採寸ができるようになりましたが、昔ながらの糸を使った方法も欠かせません。丸や三角形の部屋はレーザーでは計測できないからです。そういう現場では、私は糸や定規を使って二等辺三角形をつくりながら、部屋の歪みを割り出しています。こうした採寸方法は職人ごとに違い、昔は秘伝とされてきました。
採寸後は、それに合わせて畳床を切り、それに畳表を縫い付け、最後に琉球畳の場合はヘリを織り込み、ヘリ有り畳の場合はヘリを取り付けて完成です。畳づくりは機械化によって昔と比べて遙かに楽になりましたが、採寸と同様に、昔ながらの手を使った技能や知識という基本がなければ、高品質の畳をつくることはできないと思っています。沖縄には、手作業で畳をつくらなければならない離島もまだありますしね。
畳職人であれば、採寸をはじめ皆独自の技能を持っています。昔は、糸を使った採寸をはじめ秘伝とされてきたものが多くありましたが、今は時代が違います。私は秘伝として伝えられてきたもの、新たに開発した技能や知識も包み隠さず後進に伝え、技能伝承に努めていきたいと考えています。
こだわりの取扱説明書
畳製作の技能継承は、まずお客様がいなければ成り立ちません。益田さんは、そのためには客様に手入れの方法など正しい知識を伝え、長く愛用してもらうことが大切だと考えています。そこで、畳を販売する際には、必ず自作の取扱説明書を手渡しているそうです。取扱説明書には、手入れの方法やカビの注意喚起がまとめられています。
技能検定
畳製作(畳製作作業)
畳製作(畳製作作業)は、畳の製作、敷込み及び修理に必要な技能・知識を対象としています。内容は、畳製作の技能に加え、畳の敷込み・補修、積算・見積りなどに関する技能・知識、畳及び材料、施工法、建築概要、安全衛生などに関する知識も含まれます。
益田伸次/大伸たたみ店
〒901-2215 沖縄県宜野湾市真栄原1-11-5
TEL 098-890-1014