「地域発!いいもの」
好事例集

PROJECT 03

令和元年度

産学官一体で取組むコラボ企画高校生のアイデアを地元のパン屋さんが商品化

PROJECT DATA

実施主体:八千代商工会議所

拠点:千葉県八千代市

開始:平成29年5月

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Overview

千葉県八千代市発
やちパンプロジェクト

やちパンプロジェクトは、千葉県立八千代高等学校家政科の生徒が考案したパンを八千代市内のパン事業者の協力で商品化・販売する産学官コラボ企画。八千代商工会議所と八千代市が支援し、産学官で地元産品を使ったオリジナル商品の開発・販売を行っています。

代表者
Interview

パンのアイデアは高校生、試作品開発・販売はパン店舗、企画・運営・広報対応は市役所と商工会議所。「やちパンプロジェクト」は産学官が一体となって推進するコラボ企画です。

代表者プロフィール

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代表者プロフィール

八千代商工会議所 専務理事

田中宏行 さん

昭和28年生まれ。平成19年から八千代商工会議所専務理事。平成22年に立ち上げた八千代産学官協同ネットワークでは副会長として地域の産学官連携に取り組む

背景ときっかけ

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産学官協同でスタートした
パン開発プロジェクト

八千代産学官協同ネットワーク運営協議会のメンバーと八千代商工会議所前で

「やちパンプロジェクト」は、八千代産学官協同ネットワークが平成29年から行っています。八千代産学官協同ネットワークは、八千代商工会議所と八千代市が中心になり平成22年10月に設立した組織で、市内の中小企業や教育機関、行政がいっしょになって市の産業振興と活力ある街づくりを支援する活動を行っています。

その活動の一つが地域資源の商品化で、平成27年から取り組んできたのが、やちよ蕎麦の会と和洋女子大学の栄養学を学ぶ学生による健康メニュー開発です。市川市にある和洋女子大学とのコラボ企画は今年で4回目を迎えますが、八千代市にある学校とのコラボ企画も推進したいということで始めたのが、八千代高等学校家政科との「やちパンプロジェクト」です。

これまでの取組

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八千代市の農産物・特産品を
生徒のアイデアをもとに商品化

「やちパンプロジェクト」は、八千代市で営業しているパン屋と八千代高等学校家政科の連携で、八千代市の農産物や特産品を活用したパンを開発する取組です。パンのアイデアは生徒が出し、試作品開発・販売はパン店舗、企画・運営・広報対応は市役所、商工会議所がバックアップするという体制で行っています。

毎年5月に高校が生徒からアイデアを募り、8月に各店舗で試作会、9月末に試食会を開いて、12月前半の約2週間、各店舗で販売します。平成29年は6店舗13種類で約6,500個、平成30年は7店舗20種類で約7,500個のオリジナルパンを販売しています。

今後の展開

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参加店舗を市内全体に広げ
「パンの街」八千代をアピール

平成30年の第2回やちパンプロジェクトのチラシ

「やちパンプロジェクト」が八千代高等学校家政科を選ぶきっかけになったという生徒もいます。パン事業者は横のつながりが弱いのですが、このプロジェクトを機に市内のパン職人同士の交流も生まれています。

これまで「やちパンプロジェクト」の参加は6~7店舗でしたが、今後は参加店舗を市内全体のパン店に増やし、「パンの街」八千代をアピールしていきたいと思います。

メンバーズインタビュー

全員のアイデアが
商品化される仕組みづくり

9月に八千代高等学校で行われた試食会

玉井 富美子さん

千葉県立八千代高等学校家政科教諭

森 唯菜さん

千葉県立八千代高等学校家政科3年

林 真里奈さん

千葉県立八千代高等学校家政科3年

全員のアイデアを
商品化する

生徒から提出された「やちパン」コンセプトシート

── 商品開発に家政科の生徒が関わるのは、今回が初めてですか。

玉井 7年前にコンビニエンスストアとお弁当を一度だけ作ったことはあります。「やちパン」は産学官協同で、しかも八千代市内のパン屋さんと地元の特徴のある産品を使ってパンを作るということでしたので、積極的に協力させていただきました。八千代高等学校家政科は40人で、2年生の時に調理選択者と被服選択者にほぼ半々に分かれるのですが、「やちパン」には調理選択者の3年生が取り組んでいます。

──「やちパン」はどういうプロセスで作っているのでしょうか。

玉井 まず5月に、「商品開発」「パンづくり」「八千代市の特産物」それぞれ異なる講師を招いて、生徒たちに講義していただきます。その後、生徒それぞれがアイデアをコンセプトシートにまとめます。それをパン屋さんに分けて、試作してもらい、8月に生徒と一緒にパン屋さんを訪ね、試作会を行うという手順ですね。

今年から変えたのはグループ分けの方法です。昨年まではコンセプトシートを提出してもらってから、テイストの似たものをグループにして、パン屋さんに振り分けていました。そうすると、どうしても商品化できないアイデアが出てしまいます。それで今年は最初にパン屋さんにいくつ作れるか聞いてグループ分けし、商品化が難しい場合も、アイデアの一部を取り上げて商品化するお願いをしました。1年目、2年目と、アイデアが採用されなくてがっかりしている生徒の姿を見るのが忍びなかったんですね。

甘くないパン
写真に撮りたくなるパン

── 今回考えたパンのアイデアを教えてください。

 考えたのは「お好み焼きパン」です。私は出身が大阪で、祖父母の家が大阪にあるのでよく行きますが、お好み焼きパンは私の知る限りありません。パンにしたらどうなるかと考えたんですね。それに、これまでの「やちパン」は甘いパンが多かったので、甘くないパンを作りたかったというのもあります。

 私が考えた「やっちのベーグルサンドイッチ」は、部活の帰りに食べてもらいたいと思って、卵、チキン、野菜と栄養バランスも考えたボリューミーなサンドイッチです。「やっち」は八千代市のイメージキャラクターですが、その顔をベーグルに焼印で押してもらっています。思わず写真を撮りたくなるかわいいサンドイッチにもしたかったんですね。

「お好み焼きパン」(左)と「やっちのベーグルサンド  イッチ」(右)

FOCUS

プロジェクト関係者に聞く

新しいお客さんを呼んでくれる「やちパン」

40年前に父が船橋市でパン屋を始めて、12年前に八千代市に引っ越してきました。職人は父と2人、家族4人で経営している小さなパン屋ですが、「やちパン」には最初からできる限り協力させてもらっています。

八千代高等学校という地元に根ざした高校の生徒が考えた「やちパン」のインパクトは絶大で、販売期間中には「孫の考えたパンはどれですか」と買いに来てくれるおばあちゃんもいます。「やちパン」をきっかけに、新しくお店に来てくれるお客さんが増えたというのが、最も大きな効果だと思います。

去年、店で一番売れたのは「やち高カラーの“オレミド”メロンパン」です。オレンジとミドリは八千代高等学校のイメージカラーです。一昨年の「5種類の野菜の『彩り』焼きカレーパン」はそれ以上に売れました。乱切りにした八千代産の野菜入りカレーパンですが、未だに「また売らないの?」と言うお客さんがいます。野菜の仕込みがかなり大変で、2週間という「やちパン」の販売期間だから作れたところはありますね。

ラ・セン・デ・レーヴ ベル 店長
鈴木孝栄さん

プロジェクト関係者に聞く

高校生の自由な発想が新しいパンを生む

ピーターパンは八千代市にある「小麦の丘店」ほか、千葉県に8店舗あります。毎月、「小麦の丘店」独自の新しいパンを作るのが私の仕事の一つです。ピーターパンはお客様に喜んでいただく商品を作るために何度も試作を繰り返します。「やちパン」も例外ではありません。それで、1年目、2年目は1 種類のみの商品化だったのですが、3年目の今年はがんばって2種類を商品化しました。

パンは一次発酵した生地を分割・成形し、二次発酵させて焼きます。おいしいパンづくりには、分割・成形をいかに手早く行うかが大事です。高校生から出てくるアイデアには、そうしたパンづくりの工程にとらわれない自由な発想があり、僕らでは思いつかないパンづくりのヒントになります。

それから、「やちパン」は八千代産にこだわっていますが、お陰で近くの「グリーンハウス」という八千代産を多く扱うJAの直売所と繋がりができ、地産地消の新商品の開発にも役立っています。

小麦の丘ピーターパン 製造マイスター
荒井将志さん

プロジェクト関係者に聞く

八千代高校に最も近い「コッペ館」の盛り上がり

リヨンSUDAは八千代市と千葉市に4店舗ありますが、「やちパン」には八千代市にある「ちらすと(平成30年末移転前は旧名リヨンヴェール)」と「コッペ館」の2店舗が参加しています。私が店長をしている「コッペ館」は、実は八千代高等学校に最も近いパン屋です。ただ、高校から勝田台駅へ行く道とは少しはずれたところにあり、生徒さんに「コッペ館」に来てもらいたいというのが、「やちパン」参加の偽らざる参加理由です。

やるなら盛り上げようということで、リヨンでは作った「やちパン」を両方の店で販売しています。1年目の「やちパン」は全部で13種類でしたが、そのうち7種類はリヨンで販売しました。2年目は「ちらすと」が移転で販売には参加できませんでしたが、20種類のうち10種類を「コッペ館」で販売しました。販売期間中はレジ横の棚全部が「やちパン」で、高校生だけでなく、その親御さんも来店してくださいました。パンを撮影したり、「店長さんも」と言われ、一緒に写真を撮ったり、期間中は大にぎわいでした。

リヨンSUDAコッペ館 店長
岡本 勝さん