「地域発!いいもの」
好事例集

PROJECT 12

平成30年度

今治タオル工業組合社内検定

PROJECT DATA

運営組織:今治タオル工業組合

拠点:愛媛県今治市

開始:平成23年9月

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Overview

地域とタオル業界が織りなす、
今治独自の技能継承システム。

今や日本を代表する産地ブランドとなった今治タオル。その製造に関わる評価制度として立ち上げられたのが、本検定です。平成21年度から、国家技能検定の織機調整職種(平成12年度に廃止)に今治独自の技能を加える形で技能評価制度の創設に着手。平成23年度に厚生労働省に「社内検定認定制度」に認定され、本検定がスタートしました。国内タオル業界における全国初の取組みとして、また厚生労働省の認定を受けた四国初の社内検定として評価されています。

代表者
Interview

代表者プロフィール

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代表者プロフィール

今治タオル工業組合
理事長

井上 裕基 さん

昭和37年生まれ。昭和61年、慶應義塾大学商学部卒業。同年に井上タオル株式会社入社、平成13年に代表取締役社長に就任。平成29年より、今治タオル工業組合理事長を務める。

背景・きっかけ

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今治タオルブランドの復活が、
後継者育成を後押しした。

バブル崩壊後の景気の低迷によって産業が急激に衰退したことで、現場においても技能者育成の時間的、金銭的な余裕が失われていました。今治タオルの高い品質を維持するために、製織の技能を評価する仕組みをつくりたいという声を受け、今治タオル工業組合が主体となって立ち上げたのが「今治タオル工業組合社内検定」。産地の技能者集団である今治タオル技能士会、愛媛県立今治高等技術専門校(以下「専門校」)、愛媛県繊維産業技術センターなど各所の協力のもと、産地が一体となって取り組みました。

これまでの取組み

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地域一体となり、技能を評価し
継承するシステムができた。

当組合の理事会が決定機関となり、試験問題作成など検定の運営は、今治タオル技能士会と協働。専門校の先生方にもアドバイスをもらいながら、体制を整えました。平成23年度の第1回目以降は、年に1回、検定を継続。現在では検定試験実施を通じてメーカーの垣根を超えて、技能者の知識・技能レベルを示す業界内の共通認識を構築することができました。また、各メーカーにおいて、人材育成や人事考課の指標としても活用されています。平成30年度に整経職種を追加しました。

今後について

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最高位である「マイスター」
を増やし、さらなる発展を。

平成30年度までに実施した8回(製織)の検定を通して、受検者は増加し、合格者を多く輩出。国の認定を受けたことが、対外的なアピールにもなり今治タオルのブランド力向上にもつながっています。今後も、今治タオルブランドを守り抜くために、技能者の最高峰として位置づけている「タオルマイスター」を増やしていきたいですね。検定を継続することで、今治タオルブランドの根幹を支える優秀な人材の育成や技能者の社会的地位向上につなげていきたいと考えています。

PROJECT STORY

「技能継承」というタテ糸をつなぐ取組みは、
同業者のヨコのつながりを強固にした。

阿部 憲政さん

検定の運営に従事
今治タオル技能士会所属。タオル製造業を行う株式会社阿部春工場の代表取締役。タオルマイスター。

山岡 浩司さん

検定の運営に従事
今治タオル技能士会所属。タオル製造を行う田中産業株式会社の整経製織部門長。検定合格者の第1号。タオルマイスター。

戸島 佳典さん

今治タオル技能士会所属。今治タオルLABの課長。タオルソムリエの資格も保有する。

メーカーの垣根を越えた、
タオル業界初の試み。

阿部さん 検定の立ち上げに当たって、まずはじめに取り組んだのは、タオルを織る織機を用いてタオル生地をつくる製織の技能の棚卸しでした。メーカーごとに得意分野や考えが異なるため、議論をしながら、評価基準や試験範囲などを整えていきました。各メーカーに歴史やこだわりがある分、議論がまとまらないことも、しばしば。タオル業界としても初の試みとあって、形にするまでは大変でした。けれども、この検定がきっかけで、製織という職種を体系化することができました。織機の高速化が進み、より高い技能が求められるなか、今治のメーカー同士が、互いに膝を突き合わせて知恵を出し合う、非常にいい機会だったと思います。

山岡さん 私は、第1回目の検定を受検し、現在は試験官として検定運営に関わっています。両方の立場を経験したことで、受検者と試験官の視点の違いに気づくことができました。実技試験は減点法なので、織機の調整の際、受検者は細部にまで慎重になります。しかし、評価する側としては、それが過剰だと感じることもある。実務を見据えたときに何が必要とされるかという視点で、評価基準についても技能士たちで議論を重ね、常に改善を図っています。

会社単位ではなく、
産地一体の技能継承。

戸島さん 私はもともと県外で働いていましたが、地元の産業に貢献したいと思い、今治の地に戻ってきました。現在は、製織の仕事をしながら、今治タオルの体感施設「今治タオルLAB」で、来場者に向けて製造工程や製品についての案内を行っています。検定に挑戦し、2級を取得したのは平成27年。練習の場は、同世代の技能士たちとの交流の場にもなっていました。試験についてだけでなく、互いの仕事や製造現場の状況について知る機会になりました。みんなとは今でも交流があり、会社を越えた横のつながりが生まれています。

阿部さん かつては、共通の評価基準がなかったため、メーカーごとにそれぞれ独自の手法で技能継承が行われていました。会社が違えば、交流する機会も、情報交換をする機会もほとんどない。それが今では、会社という単位を越えて、今治の地域全体で、技能継承の形ができたのです。今治タオルというブランドを守るために、産地が一丸となっている。そういう意味では、技能士同士、メーカー同士、今治タオルに関わる人たちの横のつながりは強いと思います。

ヨコのつながりを大切に、
ブランドを育てていきたい。

阿部さん 第3回目の検定までは、受検者を募るために声がけを行っていましたが、今では認知度が高まり、企業の人事考課や資格手当の対象にもなっています。また、かつて製織の世界はいわゆる“男性社会”でしたが、平成29年度には2級に初めて女性2名が合格するなど、変化が見られるようになりました。

山岡さん 平成30年度からは、検定に新たな職種「整経」が追加されました。これは、タオルの製造工程において、経糸をビーム(糸まき)に巻きつけ、糸を織機にかけられる状態に加工する職種。今治タオルの一つの特徴である、柄や彩りの豊かさを生み出すための重要な工程です。今後さらに今治タオルのブランド力を高め、海外や他の産地のタオルとの差別化をはかるため、改めて各所が一致団結。整経に用いる機械はメーカーごとに異なるため、互いに機械について学んだり、新たな機器の導入を検討したりするきっかけとなりました。

阿部さん 検定は、後継者育成や技能の標準化につながっただけでなく、同業者の結びつきが強くなりました。今後も同業者や地域と協力し、今治タオルブランドを成長させていきたいと思います。

Column

タオルソムリエとは?

タオルを選ぶ目を養う、世界初の資格。

検定の他に、今治産地発の資格として注目を集めているのが、タオルソムリエ。タオル選びの専門アドバイザーを育成することを目的としています。一口にタオルといっても目的や用途によって様々な種類があり、オーガニック綿といった素材や多様な織り方を含めると、流通するタオルは何千種類に及びます。その中から、お客様にぴったりのタオルを選び、お勧めできる人をタオルソムリエに認定。世界初の試みとして平成19年からスタートし、これまでに3000名以上のタオルソムリエが全国で誕生しています。