PROJECT 03
平成30年度
運営組織:茨城県造園技能士会
拠点:茨城県水戸市
開始:平成28年11月
Overview
トラックの荷台は、
技能を育てる最高の舞台になる。
軽トラックの荷台を“ミニ庭園”として活用する軽トラガーデン。場所を選ばず展示を行うことができるユニークなアイデアとして、注目を集めています。この軽トラガーデンは、平成23年に富山県を発祥とし、日本各地に拡大。なかでも茨城県は、技能の高さを競う「全国軽トラガーデンコンテスト」で金賞に輝くなど、取組みが盛んな地域の一つです。あらゆる造園の技がつめ込まれた軽トラガーデンを、若手の技能向上、業界の認知度向上に役立てています。
代表者
Interview
代表者プロフィール
代表者プロフィール
茨城県造園技能士会
会長
大平 晶 さん
昭和25年、茨城県生まれ。高校卒業後から造園業に従事し、昭和48年に大平造園(現在の大平造園土木)を設立。平成25年には茨城県都市緑化功労者として、国土交通省、茨城県から表彰を受ける。平成26年、「茨城の名工」に認定。
背景・きっかけ
新たな挑戦をきっかけに、
造園の技能を受け継ぎたい。
年々、職人たちの高齢化が進んでおり、若手に技能を受け継ぐ機会を作りたいと考えていました。目をつけたのは、富山で行われていた軽トラガーデン。この取組みを茨城でも実施すれば、より多くの人に造園の技能の素晴らしさを伝えることができ、若い職人へ技能を教える場にもなると考えたのです。茨城県造園技能士会(以下「技能士会」)でも、50歳以下の会員が中心となる青年部主体で活動を開始。まずは技能士会の各支部で1台ずつ製作し、「いばらきものづくりフェア(以下 フェア)」への出展を目指しました。
これまでの取組み
フェアでの好評を機に、
プロジェクトは勢いに乗る。
自分の思い思いの庭を作ることができる軽トラガーデンなら、表現の幅が広がります。その結果、フェアに訪れた一般の方々や同業者までも、「こんなことができるのか!」と驚くほどの作品が生みだされました。周囲からの大きな反響によって、技能士会の若い職人たちの士気も高まり、より良い作品を製作しようと、各々が自主的に入念な準備をするように。フェアの半年程前から、作品づくりに取り組む者もいます。おかげさまで平成29年には、富山で行われた全国軽トラガーデンコンテストで金賞を獲得することができました。
今後について
技能を高める“教材”として
活用していきたい。
軽トラガーデンは、一目では分かりづらいのですが、限られたスペースにいろんな技能や工夫がつまっています。技能継承という点で、最高の教材になるんです。ベテラン技能士たちと一緒に取り組むことで、造園に関わる高い技能を受け継ぐ機会にしたい。軽トラガーデンを通して、若手技能士に造園の道を究めていってほしいですね。実際に、これまでの取組みを通して、技能士会の技能レベルが向上した実感があります。技能レベルがさらに上がれば、この仕事の魅力もさらに広まり、造園の道を志す人が増えることと信じています。
PROJECT STORY
自分が持つ技能のすべてを、軽トラの荷台につめこんだ。
古平 貞夫さん
(写真_左)昭和29年、茨城県生まれ。茨城県造園技能士会理事。プロジェクト1年目より、軽トラガーデンを手がけている。平成20年日本庭園協会 会長賞受賞。平成23年「茨城の名工」に認定された。
中﨑 隆雄さん
(写真_右)昭和28年、茨城県生まれ。茨城県造園技能士会理事。プロジェクト1年目より、軽トラガーデンを手がける。造園技能士会にあって緻密かつ繊細な作品には定評がある。庭師だけでなく、盆栽師としても活躍。
新たな取組みを、高い技能を
受け継ぐきっかけにしたい。
古平さん 技能士会の理事会で軽トラガーデンをやると決めたとき、私もその場にいました。参加者は、支部長が働きかけて募ることになりました。やろうと思っても、誰しもができるものではないんです。自分の腕にはプライドを持っていましたから、「技能士会でやるからには、私がやろう」と思って手を上げましたね。
中﨑さん 本業をやりながら、軽トラガーデンをつくるのは、大変だろうと思いました。「最初で最後」と、一回だけのつもりで気合いを入れましたが、フェアで好評だったこともあり、今後も続けていきたいと思うようになりました。造園に携わる人は高齢化が進んでいましたので、若い人が興味を持つきっかけになれば、とも思っていました。それに、せっかく造園をやるなら、高い技能を持った庭師になってほしい。そんな想いもありましたので、軽トラガーデンは若手の技能向上のいいきっかけになりそうだと思いました。
造園の可能性は、
「軽トラガーデン」で広がった。
古平さん 軽トラガーデンは、住宅の庭をつくるときとは勝手が違うんです。たとえば、会場まで移動するためには、積載量を350kg以内にしなければなりません。住宅の庭のように自然石を敷きつめると、オーバーしてしまう。そこで、もみがらや堆肥を使って軽くする工夫をしました。反対に、軽トラだからできる演出もありました。ドライアイスで霧を演出するとか、外枠をつくって室内空間にするとか。フェアまでは、試行錯誤の連続でした。これまでの造園の経験を活かして、柔軟に考えてみました。
中﨑さん 私も時間をかけて入念に準備しましたね。フェアの会期は2日間ほどですが、数ヶ月前から仕込みをしました。「早乙女」というサツキは、8月には刈り取って葉を縮ませ、山肌の木々に見えるようにしたり。他の枝葉に関しても、11月の開催日にちょうど紅葉するように、低温の部屋に入れて色の変化を調整したり…。これまでの経験で学んだことのすべてをつめ込みました。その結果、「全国軽トラガーデンコンテスト」で評価されたときには、とても嬉しかったですね。
造園の道を志す人、
究める人を、ひとりでも
増やしていきたい。
中﨑さん 振り返ると、フェアへの軽トラガーデンの出展数は当初の4台から10台に拡大して、3度目の出展も決まりました。また、平成29年の「全国軽トラガーデンコンテスト」で金賞を獲りましたし、プロジェクトが発展している実感がありますね。これまでは、ベテランたちが中心になって技能を披露していましたが、若い世代にもどんどん挑戦してほしいです。軽トラガーデンに関わることが、造園技能の奥深さを学ぶきっかけになりますしね。
古平さん 軽トラガーデンの普及活動にも力を入れています。フェアでは多くの人が足を止めて、お褒めの言葉をくれました。今後もお披露目の場として引き続き参加していきます。また、技能士会の会報に作品を載せて会員のみなさんの参加を募ったり、フェイスブックでの広報活動を行ったりしています。より多くの人に軽トラガーデンに興味を持ってもらうことで、造園の道を目指す人が増えることを願っています。
Column
プロジェクト関係者に聞いてみました。
日本伝統の技能を、世界へ発信したい。
茨城県造園技能士会さまとは、私たちが主催するいばらきものづくりフェアへの出展や技能五輪等への協力など、古くからの付き合いです。私のような素人でも、軽トラガーデンを目で見て、職人さんのこだわりに触れることで、その技能の高さ、奥深さを知ることができます。この魅力をもっと多くの方に伝えていくことが、技能振興コーナーの使命。今後も日本伝統の技能を世界へ発信していくお手伝いができればと思います。
2017年全国軽トラガーデンコンテスト
( 主催:一般社団法人日本造園組合連合会青年部)
コンテストへの参加1年目にして、茨城県が金賞を受賞!
平成29年4月28日~29日、富山県の砺波チューリップ公園において「となみチューリップフェア」開催期間中に行われ た「全国軽トラガーデンコンテスト」。全国13都府県から15台が参加し、茨城県が金賞に輝きました。