「地域発!いいもの」
好事例集

PROJECT 13

平成30年度

高知のエジソン(垣内保夫)賞

PROJECT DATA

運営組織:一般社団法人 高知県工業会

拠点:高知県高知市

開始:平成16年10月

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Overview

「あったらいいな」から始まる。
21世紀のものづくり教育。

「こんな製品があれば、助かるんだけど…」なにか困りごとがあれば、発明せずにはいられない。“高知のエジソン”と呼ばれた故・垣内保夫氏は、多くのアイデアを製品化させました。同氏のものづくりにかける情熱を受け継ぐために創設されたのが「高知のエジソン(垣内保夫)賞」です。小中学生を対象とした「君たちのすばらしい夢を教えて」、高校生を対象とした「次代のエジソン」、教員を対象とした「地域のものづくり先生」の3つの顕彰制度により、未来を担うものづくり教育の啓発や普及を行っています。

代表者
Interview

代表者プロフィール

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代表者プロフィール

一般社団法人 高知県工業会 理事
(高知のエジソン賞委員会 委員長)

弘内 喜代志 さん

昭和24年生まれ。故・垣内保夫氏とは30年以上の親交。垣内さんが亡くなったあとは遺志を継ぎ、県内でものづくりを行う仲間に呼びかけ、同賞を立ち上げた。

背景・きっかけ

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垣内さんの遺志を継ぎ、
次代のエジソンを育てたい。

垣内保夫さんは本当にものづくりが大好きな人。遊び心と発想力にあふれ、それを世の中に役立てようとする発明家でした。晩年にはさまざまな社会活動に力を入れ、特に次代のエジソンを育成するため、青年たちに向けた取組みに尽力されました。子どもたちの発想力を培う「少年少女発明クラブ」、「からくり創造工房」などもその一例。平成15年に垣内さんがお亡くなりになられたことで、30年来のお付き合いをさせていただいた私が発起人として提案し、高知県工業会で「高知のエジソン賞」を創立しました。

これまでの取組み

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子どもならではの発想力と
伝える力を伸ばす。

平成16年10月から始まった、高知のエジソン賞。小中学生へのものづくりに対する意識の高揚を図ることを目的に、「君たちのすばらしい夢を教えて」というテーマで、ものづくりのアイデアを募集しました。翌17年度からは、県内工業系高校生で、勉強やものづくりに真剣に取り組んでいる生徒を、先生が発掘して顕彰する事業を開始。同時に、地道にものづくり教育に取り組んでいる県内工業系教員を対象に顕彰する事業も開始。これまでに応募作品の総数は7021点にのぼります。

今後について

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まだまだ、より多くの学校に
参加してもらいたい。

現在までに、計14回のコンテストを実施。応募件数は年々増加傾向にあります。このコンテストからたくさんの夢が生まれ、これをきっかけにものづくりの世界へ足を踏み入れてくれた学生もいます。私たちを応援してくださる先生方もたくさんいらっしゃいます。期待を背負い、今後も「高知のエジソン賞」を未来に残していくのが我々の役割。そのためにも、さらに教育委員会などとの連携を強め、高知県全土からより多くの学校に参加していただけるように努力していきたいと思います。

PROJECT STORY

純粋無垢なアイデアが、
私たちのくらしを豊かにする。

安岡 和彦さん

(写真_左)垣内保夫氏が創業した株式会社垣内の3代目代表取締役。また、高知県工業会 副会長を務める。

弘内 喜代志さん

(写真_中央)前頁でも紹介したとおり、当プロジェクトを立ち上げた発起人。高知のエジソン賞委員会 委員長。

西内 豊さん

(写真_右)高知県のエジソン賞委員会事務局担当。並びに約130社が加盟する高知県工業会の常任理事事務局長。

なぜ、垣内保夫は
エジソンと呼ばれたのか。

弘内さん プロジェクトの話を始める前に、まずは故・垣内保夫氏についてお話します。私は30年程の親交がありましたが、ほとんどは仕事を越えた個人的なお付き合いになります。とにかく豪快で、ユーモアがあり、人情に厚い方。業界問わず本当に多くの方々から慕われていました。

安岡さん エンジニア気質というよりは、気さくなアイデアマン。悩みごとを相談されると、どうすれば解決できるかとことん考え詰める人でした。我が社の代表作であり、今や世界中の建設現場で活躍している「サイレントパイラー(油圧式杭圧入引抜機)」を開発したのも、従来の工法だとあまりに騒音や振動といった建設公害がひどく、地域の人たちが困り果てていたのがきっかけだと聞いています。

西内さん 失敗にはとても寛容で、いつでもチャレンジを推奨する人でした。だからご自身も、なんでも楽しんでやってしまう。何度でも諦めずに、繰り返し挑戦を重ね、できるまでやり通す。この姿勢こそが、“高知のエジソン”と呼ばれた所以ではないでしょうか。

身近な問題に目を向ける。
気づきこそが、発明の種に。

西内さん 作品の評価基準は、「大きな夢があるか」「誰かの役に立つものか」というポイントで審査しています。これまでの受賞作品は、我々では考えつかないようなユーモアのあるアイデアばかり。やっぱり純粋無垢な発想をもつ子どもたちは、ものすごい発明家ですよ。それでいて実用性があるものも多く、作文のほうでも説明書きが具体的にされていて、思わず大人も舌を巻くような完成度です。

弘内さん 垣内さんの遺志を残すために高知のエジソン賞を始めたわけですが、応募作品を見ていると、改めてやってよかったと感動させられます。例えば、「料理をするときに、お母さんがこんなことに困っていたから」、「イノシシがおじいちゃんの畑を荒らしているから、追い払うアイデアを考えた」、「おばあちゃんが亡くなってみんな悲しんでいるから、天国と話せる電話をつくろう」とか、暮らしに身近なことがほとんど。大人が思っている以上に、子どもたちは社会のことを隅々まで見ているんですよね。

未来のエジソンたちが、
高知県を盛り上げる。

安岡さん 特に印象に残っているのは「セーフティランドセル」。ちょうど南海トラフ地震を危惧するニュースが流れていた頃で、当時小学校1年生だった重国くんの作品でした。彼が通う大湊小学校は海のすぐそば。いざというときに備え、GPS・浮き輪・電話などがすべて詰まったランドセルを考案してくれました。そして、高知新聞に掲載された記事を見た地元のアパレル企業の代表が、「ぜひ、アイデアを実現させよう」と、ランドセルを製造してくれたんです。こういった高知県でものづくりを行うみなさまの支援により、当賞を長年続けることができています。

弘内さん 重国くんも今では中学生。将来は「ものづくりの道に進みたい」と言ってくれているのは嬉しい限りです。同じく大湊小学校に通う弟さんも、前回のコンテストで入賞していましたね。彼らのような「未来のエジソン」たちには、ぜひ高知県の企業に就職し、地元で活躍してくれることに期待しています。いつか、高知が発明家を生みだす街として、日本全国に名を馳せるときが来るまで。故・垣内保夫氏の想いを胸に、高知のエジソンたちを輩出し続けていきます。

Column

プロジェクト関係者に聞いてみました。

学校生活とはまた違う、新しい顔を見ることができる。

第1回のコンテスト受賞作品に衝撃を受け、2回目から生徒を参加させました。やってみると本当にたくさんの収穫があります。一番の収穫は、生徒たちの新しい顔を見れること。どんなことに関心があるのか、普段はシャイで感情に表わさない子も、優しさや思いやりが作品になって現れてくるんです。9年前に本校へ赴任してからも「みんなでやりましょう!」と呼びかけ、今では全校をあげての取組みになりました。ぜひ、高知県すべての学校が参加してくれたら嬉しいですね。

南国市立大湊小学校(写真_中央)
教諭 高橋 可菜さん
昨年度の受賞者である、 4年生の大原さん(左)と6年生の藤本さん(右)。