「地域発!いいもの」
好事例集

PROJECT 05

平成30年度

Garage Sumida “中小製造企業の新たな価値を創出~ものづくりエコシステムの構築~”

PROJECT DATA

運営組織:株式会社浜野製作所

拠点:東京都墨田区

開始:平成26年4月

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Overview

世の中を変えるアイデアを
下町の力でカタチにする。

金属加工において40年以上の実績を持つ浜野製作所が展開する、「Garage Sumida」。ものづくりの総合支援施設として、熟練技能者が製品開発や量産化に関するサポートを行うほか、ものづくりベンチャーの事業化に向けた経営支援を手がけているのが特徴です。施設内には、企業が入居できる個室や、入居する企業や施設を利用する企業が交流を図れるスペースを完備。ものづくりに携わる人々のコミュニティとしても機能し、多くのイノベーションを生み出しています。

代表者
Interview

代表者プロフィール

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代表者プロフィール

株式会社浜野製作所
代表取締役

浜野 慶一 さん

昭和37年、東京都墨田区生まれ。大学卒業後、板橋区の精密板金加工メーカーに入社。平成4年、浜野製作所の創業者である父から代表取締役を受け継ぎ、現在に至る。

背景・きっかけ

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この道40年の技術と経験に、
今後の活路を見出した。

ここ墨田区には、高度経済成長期には9,800社もの中小製造企業が集まっていました。その数は、今や2,100社に。下請け体質であれば、成長はおろか、生き残れすらしない時代です。まして東京は、土地や人件費が高く、騒音・振動問題にも厳しい。ものづくりに向いていない場所なのでは、と考えることもありました。でも、私たちには、金属加工の確かな技術がある。同業者とのつながりも、お客さまからの厚い信頼もある。これらを活かせば、起業家やクリエイターが多く集まる東京だからこそ、できることがあると考えたんです。

これまでの取組み

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技術的支援に留まらず、
ときに事業化まで伴走する。

当社の知識と経験を活かした企業サポートを、新たな収益源にするのが目的の一つ。そこには固執せず、世の中に貢献することを考えました。プロジェクト第1号は、ロボット開発ベンチャーの「オリィ研究所」。素晴らしい志とアイデアがありながら、ハードウェアづくりに苦労していた同社。そこで私たちは、ポンチ絵をもとに設計図を起こし、パーツの製造を支援しました。こういった創業期にある企業が、製品開発や事業化の際に直面する障壁。これを短期間で乗り越えるために支援することが、我々の使命です。

今後について

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世のためになるアイデアを、
これからもサポートしたい。

私たち中小製造企業が生き残っていくために、下請け体質から脱却していこうという同業者共通の想いはありますね。墨田区をはじめとする同業者のネットワークがあるわけですから、それぞれの得意分野を活かして、ものづくりを支援していきたいと考えています。現在は、人々の働き方が多様な時代になりました。個人でも、世の中をより良くするためのものづくりに挑戦する人たちがたくさんいます。たとえ小さな志でも、私たちの力を活かすことで、形にしていきたい。中小製造企業だからこそ、小回りを利かせて貢献できることがあると考えています。

PROJECT STORY

腕のある中小製造企業と志のある人々が作用し合う、
“ものづくりエコシステム”を構築する。

浜野 慶一さん

株式会社浜野製作所 代表取締役

小若 雅伸さん

株式会社浜野製作所に入社し、営業企画部に配属される。営業、国際業務、イベント企画などの業務と並行して、Garage Sumidaの運営に携わる。

「浜野さんに相談したらいいよ」。口コミで問い合わせが増えていった。

浜野さん 当初は「実験」ということで、3Dプリンターをはじめとする最新のデジタル工作機器も導入してみました。そういった最新機器に対して否定的な見方をする同業者もいましたが、まずは自分たちが試してみようという考えでした。当時、最新機器を使用できるラウンジやクリエイティブスペースは他にもありました。しかしながら、私たちの明確な強みは、設計から、加工機器の操作、製造に至るまで、熟練技能者がトータルにサポートできること。その強みが口コミとなって、アイデアの具現化に課題を持った企業からのお問い合わせが増えていきました。

小若さん 問い合わせをいただいた時点では、実現できるか分からないこともあります。しかしながら、実現可能かどうかは、お引き受けするかどうかの判断基準のすべてではありません。私たちが大切にしているのは、そのアイデアが実現したら、世の中はどう良くなるのかということ。当社の利益につながるかだけでなく、社会的な意義も大事な判断基準にしています。

もてる力を全力投入。
量産化までの道のりをサポート。

浜野さん デジタル機器が身近になった現在、試作品をつくることは容易になりました。製造のノウハウがなくても、自らトライアルアンドエラーを繰り返す企業も増えています。ただ、その課題となるのはコスト面。特に資金に余裕がなく、スピード感が重要なベンチャーにとっては大きな負担です。そこで、まずは私たちがご要望を整理し、できる限り効率よく試作することで、開発は着実に前へ進みます。私たちにとって、設計図ができれば、効率よく生産して、期限までに納品するのは当然のこと。盤石な生産体制を活かして、試作を後押ししています。

小若さん プロジェクトの一つに、設計用のソフトウェアを手がける企業の案件があります。この企業は、複雑な曲面を形にする技術を強みとしています。これまでは木材とプラスチックに対応していましたが、今回は新たに金属にも対応させるミッションに着手。そこで、金属加工のプロフェッショナルである私たちは、扱う金属の特性に合わせて、「どの位置にどの程度の圧力を加えれば、設計通りの形状に仕上げることができるか?」を、条件ごとにデータ収集。分析結果をもとに、当社の板金職人が試行錯誤を繰り返し、建築物・家具・車といったあらゆる製品への金属加工を実現するソフトウェアの開発を目指しています。私たちの経験値と技能をクライアントへ注ぎ込むことで、限られたコストの中でも、新製品の量産化を実現させられるのです。

世の中を変えるモノが
生まれるハブであり続けたい。

浜野さん なんとか試作ができたものの、量産すると大幅に予算を超えてしまうケースもよくあります。構想の段階から、材料費を調整し、試作品の精度を高める必要があります。事業化・量産化をするところまでをサポートするのが私たちの役割だと考えています。そのなかで、私たちだけで解決が難しい課題があれば、つながりのある同業者や経営支援ベンチャーとの協業も行います。ゆくゆくは、関わったものづくりベンチャーに助けてもらうこともあるかもしれません。ここ「Garage Sumida」を世の中のためになるようなアイデア、すばらしい志を応援するハブとして、発展させていきたいです。

小若さん 減り続ける中小製造業には、途絶えさせてはいけない強みや魅力がたくさんあります。それらを国内外に発信し、必要としている人につないでいくことが、私のやりがいになっています。「町工場」の持つイメージと役割を、ここ「Garage Sumida」から変えていきたいですね。

Column

プロジェクト関係者に聞いてみました。

“コンビニに行く感覚”で、研究開発が進められる。

当社では、次世代ドローンの研究開発拠点として「Garage Sumida」を利用しています。この場所を知ったのは、当社のメンバーが浜野さんと出会ったことがきっかけでした。入居を決めた一番の理由は、“コンビニに行く感覚”で職人さんたちからアドバイスを受けられ、試作品の発注ができる利便性。そのおかげで、スピード感を持って開発を進めることができています。現場の職人さんの姿勢から学ぶこともあります。「設計には、無駄な構造はあってはいけない。すべての形に理由があるべきだ」というアドバイスを、設計の際にも心がけています。

株式会社エアロネクスト 空力研究所 上席研究員
大河内 雅喜さん