PROJECT 06
平成30年度
運営組織:株式会社ものづくり学校
拠点:東京都世田谷区
開始:平成16年10月
Overview
かつての教室が、クリエイターのオフィスに。
地域を元気づける“ものづくり”の声が聞こえる。
IID世田谷ものづくり学校(以下、IID)は、旧池尻中学校を活用した「ものづくりに特化した学校」です。施設は都内初の廃校活用事例であり、株式会社ものづくり学校が世田谷区から定期借家契約で借り受け運営。主にものづくり事業者へのオフィス賃貸や技術提供、創業支援などに利用されています。オフィス入居には各種審査が設けられ、産業振興・地域交流・観光拠点の運営方針への賛同が必須。「しごと・まなび・あそびが交わるコミュニティ」として機能し続けられるように環境を整えています。
代表者
Interview
代表者プロフィール
代表者プロフィール
株式会社ものづくり学校
代表取締役社長
高山 勝樹 さん
昭和36年、東京都生まれ。街や建物の再開発事業に携わった経歴を持ち、創業時から、株式会社ものづくり学校の代表を務める。
背景・きっかけ
クリエイターが多く暮らす街で、
学校は生まれ変わる。
世田谷区が旧池尻中学校の再活用策を複数の団体に打診する中、私を含む再開発事業会社がIIDの構想を提案し、採用されたことから当事業は生まれました。世田谷区池尻に、映像、デザインやファッション関連のクリエイターが多く暮らしていたことから「ものづくりと学校の掛け合わせで、何かこの地に産業を興せるのでは」と考えたのがきっかけです。区内産業の育成・雇用促進・地域活性を目的に、ものづくり事業者のレジデンスとして廃校を蘇らせる。そんな挑戦から私たちの事業がはじまりました。
これまでの取組み
産業振興に貢献し、
年間9万人が訪れる施設に。
デザイン・製造・建築・映像・アパレル・飲食など、業種業態の垣根を超えて“ものづくり”に携わる個人や企業に利用されてきたIID。教室のオフィス貸し出し、区内の企業や創業期にある企業の支援、セミナーの開催など、ビジネスを育て、人と人の繋がりを強くし、産業振興に最大限の力を発揮してきました。平成30年には累計入居者数が約160社にのぼり、常に空室待ちが起こるほどに。年間700件以上の催しを開き、約9万人が来校する場となったIIDは、区からも高い評価をいただき、今後も継続した施設の運営を行っていきます。
今後について
ものづくり学校のような場所が、
日本各地に増えてほしい。
全国に私たちと同じような考えを持つ廃校再生施設などが増えることで、ネットワークが広がり、いろんな成功事例をシェアできると嬉しいですね。弊社は島根県と新潟県にも廃校を活かした施設を立ち上げており、今後もIIDで得た知見を広めていきたいと考えています。「しごと・まなび・あそび」を通して、あらゆる人が自由に情報や体験を得られる場が増えれば、もっと産業振興・地域交流が活発になるでしょう。一緒に理想を共有できる方が全国にいらっしゃれば、ともに学校をつくるのも面白いですね。
PROJECT STORY
仕事、学び、遊びの中心に、
みんなでつくり育てる“学校”がある。
大前 敬文さん
株式会社ものづくり学校 企画室 広報・施設担当。平成24年入社。主に地域交流・振興の窓口として、IIDの運営に関わる。
石塚 和人さん
株式会社ものづくり学校 企画担当。平成27年入社。主に企業のイベントや交流会など、大小問わずさまざまな場づくりに携わる。
海外からも注目される再活用。
区内産業の拠点を目指す。
大前さん IIDは現在、8名のスタッフで運営されています。私は広報担当として、よく取材や視察の応対をさせていただきますが、学校がビジネスに活用されている事実自体に話題性があることに加え、IIDのように行政が管理する建物を民間主導で活用し、かつ独立採算で事業運営する事例は珍しく、最近では国内だけでなく、海外から足を運んでいただく方も増えました。
石塚さん ひんぱんに視察の方が来校されていますよね。それだけいま、廃校の再活用が世界的に注目されているんだと思います。私たちIIDは、ものづくりの拠点として学校を利用しているわけですが、今はとりわけ産業振興としての役割が大きい。そのため、ものづくりビジネスに携わるすべての人がIIDに高い価値を感じてもらえることが理想であり、そのための企画運営を担うのが私の仕事です。例えば、創業支援セミナーなど、経営に関するノウハウを共有する場を設けたり、入居者さん同士の交流や業界業種を超えた交流イベントを開催したり、企業が自社製品を披露・告知するスペースとして利用してもらったり。IIDを通してビジネスのスケールを大きくできる、そんな場所をつくれたらと考えています。
点と点がつながる場所で、
新たな可能性は生まれゆく。
石塚さん これまでに印象に残っている取組みとしては、私が産業支援策として企画に携わった「TOKYOものづくりセッション」があります。ものづくりに注力する地域同士の交流を目的とするこのイベント、平成30年度は大田区と世田谷区の製造業を中心に50を超える企業にご参加いただきました。業種や業界が同じでも、地域が少し変わるだけで双方が関わるチャンスはグッと少なくなる。これはいかなる業種業界にも言えることで、機会損失という観点から非常にもったいないことだと感じています。またそれぞれが保有するノウハウも異なることが多いため、イベントに参加することで新たな発見を得たり、ビジネスの可能性が拡がったり。そうした拡がりが見えると非常に嬉しく感じますね。
大前さん これまで交わらなかった二つの点がつながり、シナジーが生まれる。そこにIIDの存在意義はあるのだと思います。私は広報の仕事とは別に、地域との連携や交流の役割も担っていますが、石塚さんと同様に、IIDと一般の方々との新たな繋がりをどんどん増やしたいと考えています。そのため、世田谷パン祭りのような5万人が訪れるイベントを商店街の方々と一緒に企画したり、子供たちがデザインや製造を体験できるイベントをIIDに入居する事業者さんと催したり。私たち自身も、ものづくり・ことづくりを楽しみながら、地域を振興できたらと。結局、私たち自身もつくることが好きな人の集まりなんですよね。
時代やニーズに合わせて変化を。
みんなでつくろう“ものづくり学校”。
大前さん 創業時は、エッジの利いたクリエイターが創作活動の場として利用する拠点だったIID。その頃も今と変わらず「ものづくりに熱い場所」ではありましたが、なかなか周辺地域の方に私たちの存在価値を理解してもらえませんでした。それから地域の方々に愛される場所を目指し活動してきたことで、今では大人も子供も繋がれ楽しめる場所に進化しました。こうした経験から、時代やニーズに合わせて変化していけることが私たちの強みだと思いますし、事実まだまだIIDは発展途上。この街のランドマークとしてより親しまれる存在になっていきたいですね。
石塚さん また、当社は世田谷だけでなく、島根県、新潟県にも廃校を活用したコミュニティスペースを手がけてきました。それぞれの地域でも世田谷と同様に、人や情報が集まり、新たな交流を生み出すプラットフォームを築いていきたいですね。ものづくり学校を通して、人と産業が育っていく。そんな学校であり続けることが、私たちの願いです。
Column
プロジェクト関係者に聞いてみました。
IIDにオフィスを構えたことで、やりたいことが増えました。
私は、創業3年以内の事業者が利用できる創業支援ブースに入居しています。IIDは、学校特有の開放感のある空気感と、多種多彩な人が入り混じる自由な雰囲気が気に入っています。今後、やりたいことが2つあります。1つは他の入居者さんとの交流を増やし、新たなビジネスの機会を広げること。もう1つは、地域の子供たちに自分の技能や知識を教えるワークショップを開催し、デザインを楽しんでもらうこと。ものづくりが好きな方々との交流を通して、何か世の中に貢献できたらいいなと考えています。