「地域発!いいもの」
好事例集

PROJECT 01

平成30年度

地域と育てる明日の技能者育成事業(景観スポットリメイク事業)

PROJECT DATA

運営組織:ものづくりでまちづくり実行委員会

拠点:青森県むつ市

開始:平成28年4月

...

Overview

まちを元気にする、
むつ市発のものづくり。

本州の最北、下北半島に位置するむつ市では、平成27年に「大湊の景観に関するルール」が作成され、市民と行政が力を合わせて大湊地区の特色を活かした魅力ある景観を作っていく取組みが動きはじめました。そこで青森県立むつ高等技術専門校で実施している職業訓練の知識・技能をまちづくりに活かすことができないか、という発想から始まったのが本プロジェクト。専門校の訓練生をはじめ、地域住民が一丸となって、地域のまちづくりに貢献しています。

代表者
Interview

代表者プロフィール

...

代表者プロフィール

ものづくりでまちづくり実行委員会
委員長

佐藤 徳衛 さん

昭和35年生まれ。平成28年より、青森県立むつ高等技術専門校の校長を務める。ものづくりでまちづくり実行委員会の発起人のひとり。

背景・きっかけ

...

湧き水巡りを、観光資源に。
まちづくりへの新たな挑戦。

大湊地域は、古くから湧き水や坂道のある土地柄。かつては、地域の特色として新聞で取り上げられていましたが、最近では未整備の状態に。そこで「大湊の景観に関するルール」の作成を受け、今一度、湧き水や坂道の景観を観光資源にしようと、景観スポットリメイク事業のアイデアが持ち上がりました。最初に地域のガイド団体「下北を知る会」など10団体が加盟し、ものづくりでまちづくり実行委員会を設立。委員と青森県立むつ高等技術専門校の訓練生が実際にまちを歩くなどして、二人三脚で事業構想を練り上げていきました。

これまでの取組み

...

訓練生によるリメイクが、
観光資源のPRに。

ものづくりでまちづくり実行委員会と訓練生が地域を実地調査し、何度も話し合うことで、地域の課題や埋もれている「宝」を明確にしていき、具体的な施策を練り上げました。初年度の平成28年には、リメイク第一弾として、大湊駅の近くにある湧き水の囲い、井戸枠やベンチを訓練生らが地元青森のヒバ材で製作。その取組みを新聞・テレビが取り上げたことで、プロジェクトが認知されました。その後もベンチや井戸枠をJR大湊駅、むつ市中央公民館、観光施設等に設置し、大湊地区の特徴ともいえる湧水や坂道を、市民や観光客へ広くPRすることができました。

今後について

...

ものづくりで、まちづくり、
まちづくりで、人づくり。

大湊地域における景観スポットリメイク事業は平成29年度に終え、今後は、同じむつ市内にある下北ジオパーク応援プロジェクトに注力します。まずは脇野沢・鯛島編として、地域の人々の憩いの場となる東屋の製作を進めています。この取組みを通じて、主体となった訓練生にも自分たちの技能が地域の役立っているという自信が生まれ、表情が目に見えて変わりました。まちづくりを通じて、実行委員や地域の皆さまとの交流が生まれ、若い世代の育成につながっています。今後も地域一体となって、まちづくり、人づくりに取り組んでいきます。

PROJECT STORY

むつ市のまちが、最高の“学び舎”。

西野 修司さん

青森県立むつ高等技術専門校主査。2年生の指導を受け持つ。自身も弘前にある高等技術専門校の修了生。

春日 貴順さん

青森県立むつ高等技術専門校主幹。西野先生同様、2年生の指導を受け持つ。

古川 貴大さん

青森県立むつ高等技術専門校木造建築科2年。1年目から本プロジェクトに携わる。

長津 柊磨さん

青森県立むつ高等技術専門校木造建築科2年。技能検定2級を目指している。

現場で問われる力は、現場で身につく。

西野さん 今回のプロジェクトのように街中のものを訓練生が実際につくるという機会は、訓練校ではまずありません。通常はすべてカリキュラム通りに訓練が行われ、施設内で訓練をして、施設内で模擬家屋を建てる。訓練生が経験できるのは、その程度だと思います。ものづくりでまちづくり実行委員会ができて、景観スポットリメイク事業に携わることができたことで、本校ではかなり実践的な訓練ができていると思います。

春日さん 本校で2年間の訓練を積んだ木造建築科の訓練生は、修了後は多くが大工として就職します。現場で問われるのは、技能もそうですが、コミュニケーション能力。施設で全て完結してしまうと、そういうコミュニケーション力を身につける機会や年の離れた年配の方々と交流する機会が、ほとんどないんですね。今回のプロジェクトに参加して、まちづくりに貢献しながら、地域の人々と触れ合あった経験は、これから現場に出ていった時にも必ず役に立つと感じています。

まちづくりから始まった実践的な学びの数々。

西野さん 平成28年度にこの取組みを新聞・テレビに取り上げられたのは、非常に大きかったですね。プロジェクト自体にも弾みがつきましたし、本校の訓練生に、実習の一環として仕事をお願いしたいと、地域の方々からも声がかかるようになっていったのです。

春日さん 訓練生にとっても、まちづくりに貢献できるのは、誇らしいことだと思います。プロジェクトを通して自分の技能に自信がつきますし、もっとやってみようと意欲も湧いてきますから。

古川さん まさかマスコミにとりあげられるとは思っていなかったので、驚きました。嬉しくもあり、ちょっと恥ずかしくもあり。やっぱり嬉しかったですね。

春日さん ちなみに、本校の訓練生がたまたま食事に行った食堂で、景観スポットリメイク事業の話をしたら、「それなら、うちもお願いしたい」と食堂の方から自宅のリフォームの依頼も舞い込みまして。和室をフローリングにするというリフォームも、実習で行ったんですよ。さすがに、ここまで実践的な実習は、普通じゃありえません。大変貴重な経験だったと思います。

長津さん リフォームの現場を実習で経験していたことで、インターンシップに行った時も、スムーズに動くことができました。

半永久的に残るものをつくる仕事。

西野さん ここまで実践の場が広がるとは、はじめは思ってもいませんでした。一つとして同じ現場はありませんから、一人前の大工になるには、現場をたくさん経験した方がいい。早いうちから現場を一棟、最初から最後まで完成させるというのをまずやってもらうと、ものづくりに対する興味が変わるんです。今、本校の訓練生たちは、プロジェクトの活動を通して、多くの現場を経験して、ものづくりに対する楽しみを覚えたと思うんですね。そうすると一つひとつ、取り組む姿勢が変わって、自分でやらなきゃいけないという意識が生まれていく。非常にいいサイクルができています。

春日さん やはり地域に貢献して、地域から認められないと、訓練校そのものも伸びていかない。今後も、こういう取組みを積極的に訓練のカリキュラムに入れていきたいと思っています。

西野さん 今、訓練生たちが作ったものは、半永久的に残るんです。永く残って、次の世代にも伝わっていくような、そういうものづくりを、訓練生たちにはたくさん経験してほしいですね。将来、訓練生たちに家族ができた時に、自分の子供に自慢ができるように。

Column

プロジェクト関係者に聞いてみました。

地域の魅力を再発見する、教育の場。

ジオパークとは、ジオとパーク(公園)を合わせた言葉で、教育・研究、保護・保全、経済活動の三本柱を中心に、ジオ(大地)資源の価値を地域の人々に伝えていくという役割があります。青森県立むつ高等技術専門校の皆さんが、東屋づくりを通して下北ジオパークに関わっていただくことで、自分たちの地域の魅力を再発見できると思うのです。まちづくりという観点だけでなく、教育の観点からも、今回のプロジェクトは非常にいい機会だと捉えています。

むつ市企画政策部 副理事 ジオパーク推進課 課長
藤島 純さん