平成28年度
建設業
とび
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社会の基盤をつくる
建設業に不可欠な職人技
江戸時代には梁から梁へと飛び移り、華にもたとえられたとび職人の仕事。現代では高層建築が立ち並ぶ都会の中で、鉄骨建方(組立)や仮設・足場の工事など高所作業のプロフェッショナルとして、時代を越えて建設工事になくてはならない重要な仕事を担いつづけている。
技能者の紹介
技能者の紹介
向井建設株式会社
建築直轄施工部
直轄施工一課
布施 龍一さん
(21歳)入社3年目
あこがれ
憧れ
とび職人の映像から憧れて飛び込んだ
建設業の世界
僕は山形県出身で工業高校の建築科に学び、たくさんのものづくりを経験しました。高校時代に木材で小屋組み(建物の屋根をのせる骨組み構造)などをつくりましたが、もっとスケールの大きなものをつくりたい思いもありました。ある時授業で観たビデオにとび職人さんの仕事が映っていて、高いところも軽い足取りで動く姿がとてもかっこよかったんです。興味を持ってインターネットで調べたのですが、その時に向井建設(株)という名前を知り、学校の先生にも「とび」になりたいなら向井建設(株)がいいといわれ、採用試験を受けて入社しました。
新人社員研修は入社後の4月から1カ月間(前半)あり、その後2カ月間は、現場に配属された後に、また1カ月間(後半)の研修があります。僕の時、同期は30人で、そのうち8人が「とび」でした。この研修では実際に足場や鉄骨を使って実践的に学びます。研修の後半で鉄骨の建方を学んだとき、グループでしっかり計画したのですが、実際にはうまくいかなかったことが印象に残っています。
進化
進化
少しずつ進化する自分を感じるのも
仕事の醍醐味
現在は都内のビル工事現場で、ほかの工事業者さんが安全に作業できるように、足場の組み立てや安全設備の整備をメインで行っています。1年目の頃は資材運搬などが主な仕事でした。2年目になると、少しずつ高所での足場作業が増え、3年目の今は半分くらいが高所作業です。足場は現場ごとに、形状や状況が違い、それに合わせて組むので、毎日学びがあり作業が充実しています。今は足場を組む前に頭の中でイメージできますが、1年目はまったくイメージできませんでした。少し進歩した気がしますし、これから足場だけでなく鉄骨建方も覚えていきたいです。
僕はそれほど高いところで恐怖感などはありませんが、風が強い時に鉄骨の上を歩いていると、バランスを崩しそうになることもあります。どんな時も必ず「安全帯」をきちんと使っているのでケガをすることはありません。この仕事は朝が早いしきついこともありますが、自分にとっては仕事のやりがい、達成感を感じます。また、協力会社の人と一緒に作業した時に、「またよろしく」と言われた時はうれしくなりやる気が出ますね。
達成
達成
技能五輪で銀賞
これからも上を目指していく
現在、資格は技能検定とび(とび作業)の2級を取得。いずれは1級に挑戦して技能を身に付けていきたいですね。新人研修ではフォークリフトや高所作業車なども取得しました。
また昨年は、「第54回技能五輪全国大会」で銀賞をいただきました。僕の同僚も同じ大会で銅賞を取って、ダブルで受賞しました。僕の地元山形での開催ということで、絶対自分が優勝するという気持ちでがんばりました。もちろん優勝できる自信もあったので、少し残念でした。でも、この貴重な経験を今後のモチベーションに変えて、仕事をがんばっていきます。
先輩から後輩へ
伝統の技能を守る人材育成システム
2016年の10月に弊社では人事、育成、広報の各部署を集約し、新しく「人材開発部」が発足。まだ試行錯誤の段階ですが、社を挙げて人材の育成に取り組む組織づくりを進めています。一方で1997年から静岡県富士宮市の富士教育訓練センターで本物の鉄骨や建設機械などを使用しての実作業に近い新人研修を始め、国家資格取得の奨励や快適な独身寮など福利厚生も充実させています。また、技能五輪全国大会にも毎年チャレンジしており、これまでにも金賞や銀賞、敢闘賞など優秀な成績を収めています。歴代の受賞者は布施くんと一緒に働く職場の先輩でもあります。
とびは身の安全を守るだけでも、技能が必要です。布施くんのような優秀な技能者も含めて、仕事に一番必要なのは毎日の地道な努力。職人の仕事は下積みが長い分、途中であきらめなければ必ず努力が報われます。身につけた技能は社会に通用する宝物になるはずです。
向井建設株式会社
100年以上お付き合いがあるお取引先もいる弊社は、職人たちの安全を守り、技能を継承し、技能者を育ててきた伝統があります。「人材開発部」の発足とともに「ものづくり」「人づくり」の充実、そして会社とともに建設業界を支えていきます。
〒101-0041 東京都千代田区神田須田町2-8-1
TEL:03-3257-1301
http://mux-hp.jp/
1908年(明治41年)に大阪で創業し、関東大震災の復興のため関東に移動。関東や東北6県を中心に専門工事業の地盤を築き、業界関係者には「鳶(とび)の向井」として広く知られているほか、土木や型枠、鉄筋なども幅広く事業を展開している。740名の社員のうち400名強が職人で、さらにそのうちおよそ300人を鳶と土工関係の職人が占めている。のれん分けで巣立った同業者も多く、現代の高層化・高度化する仕事を協力会社も含めた「チーム力」で対応している。高所作業などさまざまな技術が伝統として受け継がれており、名を知られた基幹技能者も多い。会社として顧客の信頼も厚いが「信頼されるのは会社の名ではなく現場の作業」という考えを基本に、技能者育成に力を入れている。
※ 所属・役職・年齢・入社年数は取材当時のものです。