平成29年度
製造業
水産練り製品製造
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練り上げられた伝統の技で
魚本来の旨味をかまぼこに込める
かまぼこは、平安時代初期の文献にも登場するように、1000年以上もの歴史を持っています。そして、形や呼び名こそ違えど、世界中で愛されている食べものです。小田原かまぼこの特徴は「山高で、色が白く、細やかなきめ。弾力ある歯ごたえとのど越しのよさ」。伝統の製法・技を守りながらも、常に創意工夫を取り入れ、さらなる高みを目指しています。
技能者の紹介
技能者の紹介
鈴廣かまぼこ株式会社
製造チーム
製造部伝統製造課主任
須藤 隆太さん
(31歳)入社13年目
入社したきっかけ
入社した
きっかけ
「魚」と「ものづくり」。
好きなことだから、飛び込めた。
大工をしている父の影響で、子どもの頃から、ものづくりに興味がありました。大工になる道を考えた時期もあったのですが、父の背中を間近で見てきて、生半可(なまはんか)な気持ちで続けられる世界ではないと、その選択肢は次第になくなっていきました。
高校3年のとき、1つ上の先輩が鈴廣(すずひろ)かまぼこに就職していたことから、私が就職活動を始めたときにも学校へ求人案内がきていました。実は、小さい頃からよく釣りをやっていたこともあって、魚が大好物。釣ることも、食べることも好きな魚を扱っていて、かつ、ものづくりの仕事ができる鈴廣は、自分にぴったりだと思いました。また、全く知らない世界に進んでみたいという好奇心もあって、地元の青森県を飛びだしたんです。
わたしの仕事
わたしの
仕事
難しい仕事だからこそ、
やり遂げた快感が“クセ”になる。
かまぼこは、新鮮な魚の身を十分に水でさらし、石うすですり身にし、成形、蒸しあげてつくります。今では、ほとんどがオートメーション化されていますが、当社の伝統製造課では、板にすり身を少しずつ重ね土台をつくる板付けの仕事も職人の手で行っています。手づくりの板付けかまぼこの成形には3つの工程があります。鮮魚のすり身を、板の上に盛りつける「引き起こし」。次に、扇形をつくる「中がけ」。最後に、表面の紅や白を塗る「上(うわ)がけ」。後工程になるにつれて難易度が上がるため、ベテランの職人が後工程を担当します。すべての成形作業は、かまぼこ包丁一本で行います。ほんのわずかな動作の違いでも曲線が歪んでしまうため、どの工程も繊細な手さばきが必要。慣れないうちは、自分では気づかないクセが原因で、綺麗に曲線を描けませんでした。出来が悪いと、次の工程の先輩からだまって戻されてしまいます。このクセを直すのにすごく苦戦し、「もっとうまくなりたい」という想いで、毎日毎日、練習の繰り返し…。こうして、考えながら努力を続けていると、突然、壁を超える瞬間があります。簡単にはできないからこそ、コツを掴んだときの喜びが、これまた“クセ”になるんですよね。
父を見て、大工は生半可な気持ちじゃできないと思いましたが、結局、かまぼこづくりも同じ職人の世界だったんだと気がつきました。
今後の目標
今後の目標
かまぼこづくりに向き合うことで
自分の道が見えてきた。
私たちの技能が上達していくのは、お客様のおかげです。お客様が商品を買ってくださることで、かまぼこをつくる機会ができます。その分だけ私たちの技能も向上していくという好循環が生まれる。だからこそ、より一層技を磨いて、最高のかまぼこをみなさんに届けたいんです。
高品質の美味しいかまぼこの特徴は、気泡がなく、しっかりした弾力があります。新鮮な魚を使うことはもちろん、すり身をいかに少ない動作で手際よく形を整えるかがポイントです。これまでに、技能検定1級も取得し、最近では最終工程の「上がけ」を任されるようになりました。一日に何百個とつくっていますが、先輩に比べればまだまだ。もっと数をこなして、自分自身が納得のいくかまぼこづくりを目指していきます。
余談ですが、実家に帰るときは、いつも自分でつくったかまぼこをお土産にします。それを肴(さかな)に、父と職人同士、対等に語り合う。今、こんなことができるのは、地元を飛びだしてまでも、自分の選んだ道を貫いているからじゃないかと思います。
先輩からの
メッセージ
「もっといいものをつくりたい」
その想いは、いつまでも尽きない。
私の入社当時、仕事は「見ておぼえろ」というのが当たり前でしたが、現在は、大切な伝統技能を継承していくためにも、出来ていないところは丁寧に指導し社員を育成しています。製造現場においては、工程のなかで個々の動作のクセを見抜き、OJTを通して、どうしたら上達できるのかを、教えるばかりではなく本人に気づかせ、成長へとつなげていく。また、不安の多い若手社員には特に、同じ目線に立って相談に乗り、長所をほめて自信を持たせることを心がけています。
マニュアルがないのが職人の世界ですから、自分で考え答えを見つけていくことが必要です。ものづくりには限界がありません。「もっといいものをつくりたい」という想いは尽きません。
私自身、いまでは管理職の立場ですが、本当は製造現場に戻りたいくらい楽しい仕事です(笑)。
将来の進路に悩んでいる方にも、ものづくりの魅力を感じてもらい、みなさんの選択肢の一つになればいいなと思っています。
鈴廣かまぼこ株式会社
私たちの仕事は、食べ物を安心して召し上がっていただくため、安全な食を届けること。「食の仕事」とは、とても大切な仕事です。
鈴廣にとって社員一人ひとりが最大の資産であることはいうまでもありません。多彩な人材こそが、鈴廣をさらに高めていく原動力の一つになると考えています。自ら考え行動し成長していく人材の育成を目指し、業務に必要な技術だけでなく、前向きな姿勢、健全な精神を育むべく、多彩な研究カリキュラムを用意しています。
〒250-8506 神奈川県小田原市風祭245
TEL 0465-24-3141
http://www.kamaboko.com
鈴廣かまぼこは、慶応元年(1865)創業。水産練り製品の製造・販売から、かまぼこ博物館、地ビールレストラン等、食に関する事業を展開。
職人による伝統技術と最先端の製造技術を導入した2工場を基軸として、天然素材を用い、化学調味料は一切使わず、保存料無添加の安全・安心な製品を提供しています。
※ 所属・役職・年齢・入社年数は取材当時のものです。