入職促進
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建設業界に詳しい専門家に聞く

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国内外に広がる建設業の仕事
求められる高レベルの技能労働者

どんな仕事も決して手を抜かない技術大国としての土台を築き、地震国として災害に強い街づくりを目指してきた日本の建設業。プロジェクトチームにより強固な建築物や多くの構造物をつくり、またそれをリニューアルして、安全に維持・管理を行う。

毎日過ごす空間やいつもの街の風景、生活環境の隅々にある建設業の技能労働者(職人)と呼ばれる人々のさまざまな仕事には人々の生活や社会を守る、そんな精神が受け継がれています。

業界分析

世界から求められる日本の建設業と技能労働者

日本の建設業界の強みは技術力の高さと、引き受けた仕事は決して手を抜かず、たとえ赤字になっても完成させる「パッケージ方式」にあります。日本のゼネコンのようなシステムは、実は世界にはあまりなく、現在、日本のゼネコンの海外事業は1.7兆円もの規模があるといわれています。成長著しいアジアを中心にその市場はおよそ10倍もあるともいわれ、今後は大手から中堅ゼネコンの海外展開が続くとみられます。指導的立場にある建設技能労働者の需要も非常に高く、技能労働者のグローバル化も求められています。

海外工事受注の推移

専門家プロフィール

ものつくり大学 技能工芸学部 建設学科 教授 博士(工学) 三原斉(みはら ひとし)さん
ものつくり大学 技能工芸学部 建設学科 教授
博士(工学)

三原みはら ひとしさん

プロフィール
近畿大学理工学部建築学科卒業。村本建設株式会社に入社し、現場監督などを経験。その後、工学院大学大学院工学研究科建築学専攻社会人特別選抜で修士・博士課程を修了。日本工業大学付属東京工業高等学校建築科教諭、ものつくり大学助教授・准教授を経て現職。建築生産、建築施工、建築構法、建築技術技能者教育などを研究している。英レディング大学客員研究員、法政大学特任研究員を兼任。一級建築士、一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士など。

2020年以後を見据え模索が続く建設業界の仕事

日本の建設投資は2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、東京都心部とその周辺はやや上向きの感じがありますが、全国でみると横ばいか減少傾向の厳しい現状が続いています。

新築工事が減少する一方で、新しい流れとして出てきているのは、リフォーム、リニューアル産業と呼ばれる改修や改築の需要です。特に地方では「コンバージョン」という形も目立ってきています。コンバージョンとは建築物の構造躯体はそのまま残して活かし、より利用価値の高い建築物につくり変えるというものです。例えば、ボウリング場のような娯楽施設などの広い空間を上手に活かし、公共施設や別の商業施設などにつくり変えることで、効率のよい形で再利用が可能になり、地域の活性化にもつながります。

こうした動きは2025年以降に本格化するといわれています。しかし、現在はまだ新築需要の方が圧倒的に多い状況であり、新しい市場の開拓や技術開発も進んでいます。人々の暮らしがある限り、建設業の仕事が尽きることはありません。

改善が進む建設業技能労働者の労働環境の整備

これまで建設業の技能労働者について、「一人親方」と呼ばれる立場の人が多く、雇用形態や社会保険制度などが不安定なままの状態でした。しかし、現在は技能労働者がきちんとした形で働き続けられるように、建設業界や国土交通省など関係各省庁が協力してさまざまな改善を行っています。

その一つが社会保険制度の整備です。賃金とは別に、「法定福利費」を上乗せして請求し、専門工事会社に対しその支払いを義務付けることになりました。まだやっと一歩踏み出した段階ではありますが、社員と同様の給料体系や地位の確保など、技能労働者を守るための流れ、安心して入職できる環境整備の動きはこれからも続くものと思われます。

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登録基幹技能者制度

1996年に専門工事業団体による民間資格としてスタート。2008年、建設業法施行規則改正により、新たに「登録基幹技能者制度」となりました。一定年数以上の実務・職長経験及び最上級の技能者資格(1級技能士等)の保有等の要件を満たし、国土交通省の登録機関が実施する登録基幹技能者講習の修了者が登録基幹技能者として認められています。

技能だけでなく高度な判断力を持つ技能労働者の育成も

建設業に技能労働者として入職するのは、技術系の教育を受けた人だけではありません。普通科の高校、文系の大学を出て飛び込む人もたくさんいます。大切なことは興味を持って仕事に取り組めるかどうか。入職して仕事を覚える2~3年間は厳しい時期ですが、そこを高い目標を持って臨めるかが重要です。

もし高いレベルの技能労働者を目指したいなら、早い機会に技能検定の受検をお勧めします。検定職種に係る専門学校等に在学中の場合、3級から受検できます。また、建設業で技能労働者として働いていくうえで、更なる目標となるのが「登録基幹技能者制度」です。ますます高度化する建設現場において指導的な立場にあり、マネジメント業務から現場監督に技術的な提案もできる、経験豊富で熟達した能力を持つ技能労働者を認定しています。

建設業の魅力はスケールの大きな「ものづくり」

ものづくりにはさまざまな仕事がありますが、建設業が製造業と大きく違うのは、一つの大きなプロジェクトを立ち上げ、さまざまな立場の人が一つのものをつくり込んでいくという点にあります。建築主、設計者、施工者の三者がプロジェクトを構成してつくり込む。これは建物の大・小に関わらず同じ形をとり、それが完成するとプロジェクトを解散して次に進むという、ほかに類を見ない生産方式といえます。

建設業の醍醐味や喜びは工事がすべて終わり、足場を解体した後に分かります。完成した建築物を見るときに感じる達成感。新築工事でもリニューアル工事でも、技能労働者から現場監督まで、多くの人々と一緒に建物をつくり込む面白さは次の現場でも続きます。ぜひそんなプロジェクトに参加して、建設業の魅力、楽しさを実感してほしいと思います。

建設業の魅力はスケールの大きな「ものづくり」

※ 所属・役職・年齢・入社年数は取材当時のものです。