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専門家に聞く製造業界の魅力

専門家に聞く

専門家に聞く製造業界の魅力

開発と製造の両方ができる技能者が
日本の製造業を支える

世界の経済情勢や科学技術の進歩などによって、日本の「ものづくり」産業に変化が起こっています。現在、日本の製造業が抱えている課題や技能者という職業の魅力について、職業訓練指導員(テクノインストラクター)の育成を行っている職業能力開発総合大学校長の圓川隆夫氏に聞きました。

業界分析

企業は若い技能者を求めている

経済産業省が企業の人材確保の状況に関してアンケート調査を行ったところ、人材確保について約8割の企業が課題と認識している。そのうち、5割超が「技能人材」の確保を課題としてをあげている(下図1段目)。
また、「現場力」の維持・強化を図るうえでの課題では、「若手技能者の技術力が低下している」という回答が47.9%、「技術継承が困難になってきている」という回答が39.8%と高い割合を示している(下図2段目)。

特に確保が困難となっている人材
『2017年版ものづくり白書』(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2017/honbun_pdf/index.html
図114-11(特に確保が課題となっている人材)を加工して作成
「現場力」の維持・強化を図るうえでの課題
『2017年版ものづくり白書』(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2017/honbun_pdf/index.html
図114-12(「現場力」の維持・強化を図る上での課題)を加工して作成

専門家プロフィール

職業能力開発総合大学校 校長(工学博士 東京工業大学名誉教授) 圓川隆夫(えんかわ たかお)さん
職業能力開発総合大学校 校長
(工学博士 東京工業大学名誉教授)

圓川えんかわ 隆夫たかおさん

プロフィール
東京工業大学大学院修了。同助教を経て、同工学部経営工学科教授に就任。現在、東京工業大学名誉教授。工学博士。専門分野は、企業や工場における生産性の向上を図るための技術を研究する経営工学。校長を務める職業能力開発大学校では、科学・技術に加えて技能も体得する少人数の実践教育を通して、日本のものづくり産業を支える人材を輩出している。職業能力開発総合大学校(PTU)編熟練技能者が持つものづくりに求められる技能に対して、その「見える化」や科学的アプローチを記した本。

技能科学入門
「技能科学入門」
職業能力開発総合大学校(PTU)編
熟練技能者が持つものづくりに求められる技能に対して、その「見える化」や科学的アプローチを記した本。

「ものづくり」から「コトづくり」への転換

20世紀の終わり頃まで、日本の製造業は、高品質・高信頼性において世界のトップを走ってきました。原料を輸入して加工し、高品質の製品を輸出することで、貿易黒字を生んできました。それを支えてきたのは、製品の不良をなくすとか、生産効率を上げるといった製造現場の技能者による改善努力です。そうした日本式の生産方法は、現在も世界各国で取り入れられています。

ところが、2000年頃から、日本の製造業に3つの変化が起こりました。1つ目は、これまで国内で生産していた製品を、市場のある海外工場で生産するようになったことです。2つ目は、技能者の高齢化です。どの企業も熟練技能者の確保が課題となっています。3つ目は、部品を生産して輸出し、最終製品は外国の企業が組み立てるという形が増えてきたことです。こうしたなかで、日本の「ものづくり」は、「コトづくり」に転換する必要性が問われています。

「コトづくり」とは、数年前から使われだした考え方で、品質や機能性といった「もの」の価値に、デザイン性や新しい付加価値などの「コト」を加えて、製品の価値を高めることを言います。日本の製造業は「もの」の部分では優秀ですので、これからは世界で勝てる「コト」づくりの力を付けていかなければなりません。

開発と製造の両方ができる職人が尊敬されている

「匠の技」という言葉があるように、日本では昔から職人が尊敬されてきました。他の先進国に比べて、職人の地位がもともと高い国なんです。匠と呼ばれる人は、優れた技術を持つとともに、お客さんの求める製品を開発することができる優秀な技能者です。高度経済成長期の日本は、そういった優秀な技能者が製造業を支えていました。「コトづくり」への転換が課題となっている今、デザイン性や新しいサービスなどの「コト」を開発し、外国との競争に勝てる若い技能者が求められています。

技能の「見える化」で伝承スピードをアップ

日本の製造業が抱える課題のひとつに、技能が標準化されていないということがありました。優秀な技能者の技能が表に出てこないで、他とつながっていなかったために、個人のものだけで終わってしまっていたのです。それぞれの技能が他とつながって初めて生産性は高くなるのです。

そこで、職業能力開発総合大学校では、日本の強みである技能を「見える化」する技能科学という取り組みを始めています。「見える化」とは、例えば、熟練技能者のカンやコツといった技能を細かく分析して、文書化したりデジタル化したりする作業です。こうすると、技能の伝承がスピードアップしますし、分析結果を知ることで技能者自身の能力もアップするのです。

さらに、見える化された技能をIoTで“繋ぎ”かつ新技術と組み合わせることで高度化することにより、新たな価値を創造することを目指しています。

AIやロボットが登場しても技能者の役割・重要性は変わらない

現在進行している、人工知能(AI)やロボットといったソフトや機械による産業の変革は「第4次産業革命」と呼ばれています。この変革によって、技能者の役割が変化するのではないかという声もあります。しかし、AIやロボットを使いこなすのは人間です。私は、どんなに科学技術が発達しても、技能者の役割・重要性は変わらないと考えています。

日本の製造業は、開発と製造の両方ができるという点で非常に魅力がある仕事です。私も若い頃は、その魅力に惹かれて工学部への進学を選びました。これから、ものづくりの業界に入ろうと考えている若者たちには、製造業が日本を支えているという気概を持ってほしいと思います。そして、単に技能だけでなく、様々な教養を身に付けることにより、デザイン力を身に付けたり、起業力を身に付けたりして、日本の将来を担ってほしいと願っています。

※ 所属・役職・年齢・入社年数は取材当時のものです。