平成28年度
建設業
築炉
! …
精巧な炉づくりで
日本の鉄鋼産業を支える
鉄やアルミ、生活に欠かせないさまざまなものが「炉」をくぐる(通る)ことでつくられる。「炉」の内部に煉瓦などの耐火物を用いて施工することを築炉という。耐火材煉瓦を積み上げてつくられるその特殊な技能は自動化がとても難しく人間の手で一つ一つ積み上げるしかない。そこには高度な職人技が求められている。
技能者の紹介
技能者の紹介
株式会社ヤマサキ
技能社員1級
白谷 和樹さん
(26歳)入社8年目
出合い
出合い
将来まで使える
技能で手に職をつけたかった
普段の生活の中で「築炉」という言葉を耳にする機会は、ほとんどないと思います。耐火、断熱、保温などのために「炉」の内部に煉瓦などの耐火物を用いて施工することが築炉です。僕もまったく知らなくて、学校の説明会で知るまでどんな仕事なのかよく分かりませんでした。僕は高校生の時にソーラーボートを製作し、その時に経験した細かい作業の楽しさや、ものをつくることに興味がありました。
(株)ヤマサキは築炉というものづくりの会社であり、そのため専門技術や技能を短期間で習得できる「山﨑高等技術専門校」を持っています。僕は手に職をつけたいという思いがあり、技能を身につけるにはぴったりだと思いました。また(株)ヤマサキは地元の歴史ある企業なので、安心感もあり入社しました。
道
道
想像を超えていた
施工精度への要求責任の重さを実感
炉といっても用途に応じてその種類はさまざまです。例えば製鉄所では、長寿命で安全に操業する炉が求められています。そのためには築炉に対しての技術と技能が重要になってきます。
築炉という作業は誰にでもできそうだと思っていました。しかし、細かい施工精度が要求されるため、思っていた以上に難しい仕事です。温度や湿度に気を配りながら、モルタルの練り・乾き具合を調節して煉瓦を積んでいきます。炉は平らなところばかりではありません。円形の部分はかなり難しく、高い技術力が必要になります。また、高温での職場環境下での作業も大変です。作業現場はそれなりに埃もあれば危険も伴いますので、マスクやメガネなどの保護具は必ず着用して取り組んでいます。一つの大きい高炉になると何百人という人たちが一緒に取り組みます。安全に作業することは非常に大切なことだと思います。
夢
夢
世界で活躍する
スーパーバイザーを目指したい
現在の主な仕事は高炉・コークス炉に代表される工業窯炉の建設工事やメンテナンスです。所属している大牟田事業部での担当業務は溶かしたアルミをフィルターを通して濾過する装置の煉瓦積みです。自分が施工した炉でつくられたアルミが世界中でいろいろな製品になり、多くの人々の役に立つのはとてもうれしく誇らしい気持ちです。やりがいとともに達成感も感じます。これからは炉の品質向上を目指して、さらに施工、技能を習得していきたいと思います。
(株)ヤマサキの技術は、海外でも高く評価されています。北欧、スペイン、ブラジル、ニュージーランド、台湾、韓国などの20カ国に技術者を派遣しています。僕も先輩たちのように、全国及び世界のスーパーバイザーになりたいです。
先輩から後輩へ
技術の習得は素直な人が伸びる人格形成が大切
私は技術職で入社し、製鉄所内で監督を十数年していました。山﨑高等技術専門校の指導員になって8年経ちます。白谷くんは築炉科第40期生で、私の最初の教え子になります。煉瓦を積み上げるためには「トロ」(煉瓦同士を接着させるもの)をコテでどのくらいつけるのか。トロに空気が入らないようにするため「もむ」(つなぎ目の空気をなくし隙間なく均一にすること)という作業があり、その力加減はどのくらいにするのか。こうした技能を教えると、白谷くんは素直な姿勢で取り組んでいましたね。卒業時には築炉科で校長賞、配管科で社長賞を受賞しました。彼の仕事はとてもていねいで何事にも緻密です。人柄を含め、現場のリーダーにふさわしいと思っています。白谷くんを含め多くの卒業生が全国の製鉄所で活躍しています。「山﨑高等技術専門校を卒業した技能者は、きれいに煉瓦を積む」と評価を受けています。それが何よりうれしいです。
株式会社ヤマサキ
築炉作業とそれに付随する金物を、製作据え付けからメンテナンスまでやっています。昭和40年代に建設されたコークス炉がメンテナンスの時期を迎えているため、国内だけでもかなりの忙しさです。業界のトップ企業として、これからも力強く歩み続けていきます。
〒837-0911 福岡県大牟田市大字橘11番地
TEL:0944-58-1366
http://yamasaki-grp.co.jp/
創業は1875年。日本の近代鉄鋼産業の創成期からともに歩み、142年という長い歴史を刻む老舗企業だ。築炉事業という特殊な世界で確かな技術を育み、製鉄所の設備をはじめ、さまざまな工業炉の建設とメンテナンスを手がけている。こうした技術を継承するために、自社内に山﨑高等技術専門学校を設立。今年で47期目を迎え、多くの優秀な技能士を輩出している。築炉は技能士も監督も一緒に作る共同作業。危険な作業もあるので、お互いに意見を言い合える環境を大切にしている。また、築炉だけでなく、プラント部門への進出。設計から施工、メンテナンスにいたるまで、一貫した工事の受注体制を整えている。そして、それは海外でも高く評価されている。
※ 所属・役職・年齢・入社年数は取材当時のものです。